黄金のガチョウの死(1)イソップ童話

(1)イソップ童話

 

「ガチョウと黄金の卵」(The goose and the golden egg)は、イソップ寓話のひとつです。

 

ウィキペディアの説明は以下です。

ある日農夫は飼っているガチョウが黄金の卵を産んでいるのを見つけて驚く。それからもガチョウは1日に1個ずつ黄金の卵を産み、卵を売った農夫は金持ちになった。しかし農夫は1日1個しか卵を産まないガチョウに物足りなさを感じ、きっとガチョウの腹の中には金塊が詰まっているに違いないと考えるようになる。そして欲を出した農夫はガチョウの腹を切り裂いた。ところが腹の中に金塊などなく、その上ガチョウまで死なせてしまった。 



黄金の卵を生むガチョウ(黄金のガチョウ)は、富を生み出すツールでした。

 

しかし、農夫は、黄金のガチョウを、殺してしまいます。

 

1990年代に、バブルが崩壊して、日本は、輸出中心の経済から、内需中心の経済に切り替える必要が生じました。

 

内需中心というのは、働けばそれだけ収入が増える。収入が増えれは、お金が回って、経済成長を促すというメカニズムです。

 

新しい、スキルを身につければ、収入が増えるのであれば、リスキリングします。

 

明治時代に、日本は、欧米の植民地にはなりませんでした。

 

日露戦争で、欧州の外れにあるロシアと戦争をして、日本は勝ちました。

 

日本の教育には、2つのルーツがあります。

 

人文的文化と科学的文化(実学)です。

 

人文的文化は、江戸時代の藩校にルーツがあります。

 

儒学や心学が中心です。藩校は、大学になります。

 

実学の系列は、寺子屋です。

 

明治初期の日本の識字率は、当時の先進国をこえていました。

 

江戸時代の末期から、私塾は広がります。

 

これが、明治時代の指導者を生み出します。

 

明治政府は、御雇い外国人を招いて、エンジニアリングの習得を進めます。

 

実学の伝統は、戦後にも、顕在です。

 

本田 宗一郎氏は、自動車修理工場から、2輪車の製造に乗り出します。

 

エンジンのピストンリングの設計のために、浜松高等工業学校(現・静岡大学工学部)機械科の聴講生となり、3年間金属工学の研究に費やしています。

 

今流にいえば、リスキリングです。

 

1990年頃までの日本には、本田 宗一郎氏や佐々木正氏のようなエンジニアがいました。

 

しかし、令和には、名だたるエンジニアはほとんどいません。

 

ニデックの永守 重信氏は、たたき上げのエンジニア出身です。

 

優秀なエンジニアは、黄金の卵を生むガチョウのように思われます。

 

永守 重信氏も、本田 宗一郎氏も学歴にはこだわりません。

 

実学は、ものをつくってスタートなので、学歴は、能力とは関係しません。

 

日本の課題は、黄金のガチョウを潰してしまった点にあると思います。

 

ある大学の学長は、学内ベンチャーの数を目標にしていました。

 

しかし、そこにあるのは、数であって、エンジニアの質はありません。

 

経済紙やWEBをみると、企業の平均給与ランキングに人気があります。

 

給与は、課長や部長といったポストにつくのが当たり前という信念のひとが多数です。

 

こうした人は、あらたしいものや、サービスをつくることには、関心がありません。

 

黄金のガチョウがどこに居るかをみれば、日本の問題点が見えてきます。