(4)中国のガチョウ
ファーウェイの最新スマホには、7ナノメートルのチップが使われていました。
これをもって、中国の半導体製造技術は予想以上のレベルであると言われています。
しかし、中国は、10年以上かけて技術者の養成を進めています。
筆者が、2004年頃、中国にいった時には、既に、アメリカの流出した頭脳の呼び戻しをしていました。
中国は、社会主義なので、個人は、土地の売買ができません。
土地や住宅はリースになります。
アメリカへの流出頭脳に対して、中国の大学では、給与の外に、住宅、学校、保育園を確保し、給与は、これらを除いて、5000万円位を準備していました。
つまり、GAFAMと遜色のない労働条件と給与を支払うことで、流出頭脳の呼び戻しをしていました。
ファーウェイなどのIT企業の技術者の処遇も、GAFAMと遜色のないレベルであると思われます。
日本のIT技術者の給与は、高度人材の国際労働市場の給与水準になっていません。
これは、給与が安いだけでなく、能力を活かすジョブがないことを意味しています。
外国人の技術者へのビザの発行を緩和しても、現在の給与では、高度人材は日本に、きません。
円安が、給与をさらに下げています。
黄金のガチョウがどこにいるかを考えれば、ラピダスの半導体が成功する可能性は、ほぼゼロであることは自明です。
IT技術者に、高い給与を払うためには、能力の評価が出来なければなりません。
高等学校の「情報」を教えることの出来る人材が不足しているそうですが、「情報」には、教科書があります。
高いレベルの半導体製造の方法は、教科書にはのっていません。
日本では、能力の評価が出来る人材の確保はできなくなっています。
ラピダスは、アメリカでも、国策で、半導体を作っているという前例主義を根拠にしています。
しかし、その前例主義には、優秀な技術者には、高い給与を支払っているという部分をが抜け落ちています。
つまり、前例主義は、帰納法にすらなっておらず、都合の良い部分だけの引用に過ぎません。
半導体のような高度なものを作るのは、優秀なエンジニア(黄金のガチョウ)です。
ガチョウがどこにいるのかという議論をクリアせずに、経済発展はしません。
中国は、少なくとも、ガチョウの確保という基本をクリアした結果、経済成長をとげました。
中国では、人材募集をしたから、人材が揃うまで、10年から20年かかっています。
中国の政策は、10年以上のロングタームで構成されています。
円安で、見かけの税収が増えたので、1年だけ、減税する政治家には、ロングターム視点はありません。
結果は、始めるまえからわかっています。