4)レンズのラインアップ
MFTのカメラは、2008年に発売されます。
この時点で、カメラとレンズの設計思想(MFTの設計思想)と、基本的なレンズのラインナップはそろっていたはずです。
4-1)ズームレンズ
ズームレンズは、以下のように、2010年中には、5本がそろっています。
MFTの特性を生かして、300㎜の望遠ズームが入っています。これは、必要にして十分な性能があると言えます。
しかし、2010年 9月 2日に、NIKONが、出した同じスペックのAF-S DX NIKKOR 55-300mm f/4.5-5.6G ED VR(530g、メーカー希望小売価格(税別):¥50,000)に比べると、価格が高いです。
NIKONは、キットの望遠ズームとして、低い価格設定にしていますので、割高に見えるのは、やむを得ない面もあります。
標準ズーム(200g)、望遠ズーム(400g)、便利ズーム’(500g)、広角ズーム(300g)、超望遠ズーム(500g)で、換算16-600㎜をカバーしています。
6本の中で、後継レンズのスペックが、安定しなかったのは、標準ズーム(200g)です。小型化と大型化に分裂しています。最終的には、小型(12-32mm)が、第1推薦、大型(12-60mm)が、第2推薦になっています。
オリンパスは、2019年に、 DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6(112g)でスタートします。現在の標準は、2014年発売のED 14-42mm F3.5-5.6 EZ (93g)です。オリンパスは、2012年に、ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ (211g)を、キットレンズに採用しますが、長続きしませんでした。
パナソニックが、考えた、標準ズーム(200g)は、定着しなかったことがわかります。
(1)標準ズーム
2009/4/24
LUMIX G VARIO 14-45mm/F3.5-5.6 ASPH./MEGA O.I.S
60mm×60mm、195g
メーカー希望小売価格(税別):¥35,000
(2)望遠ズーム
2008/9/12
LUMIX G VARIO 45-200mm/F4.0-5.6/MEGA O.I.S
70mm×100mm 380g
メーカー希望小売価格(税別):¥47,000
(3)便利ズーム
2009/3/25
LUMIX G VARIO HD 14-140mm / F4.0-5.8 ASPH. / MEGA O.I.S.
70mmx84mm 460g
メーカー希望小売価格(税別):¥101,000
(4)広角ズーム
2010/6/ 4
LUMIX G VARIO 7-14mm / F4.0 ASPH
70mmx83.1mm 重量:300g
メーカー希望小売価格(税別):¥119,000
(5)超望遠ズーム
2010/9/21
LUMIX G VARIO 45-300mm/F4.0-5.6/MEGA O.I.S
73.6x126mm 520g
メーカー希望小売価格(税別):¥77,000
4-2)単焦点レンズ
以下に、年毎の単焦点レンズの発売の度数分布を示します。
数字は、希望価格で、単位は万円です。10万円以上は、+で示し、()に価格を万円で入れています。=の後に、重量を入れてあります。
改良型は除いています。
ズームレンズのラインアップは、2010年に完成しています。
単焦点レンズは、2011年でいったん途切れていますので、2011年までで、一応の完成とみることが出来ます。
2011年までは、10万円超えのレンズはありませんので、MFTの設計思想が生きていたと思われます。
表1 単焦点レンズのラインアップ
年 レンズ 価格 = 重量g
2009 59 =100,225
2010 49 = 165,55
2011 7 = 200
2012
2013
2014 7+(20) =115.425
2015 355 =125,130,180
2016 +(18) =339
2017 +(42) = 1245
2018
2019
2020
2021
2022 5 = 130
2011年までのラインアップは以下の5本です
20mm/F1.7
45mm/F2.8 MACRO
8mm/F3.5 FISHEYE
14mm/F2.5
25mm/F1.4
画角を整理すれば、以下になります。
8mm、14mm、20mm、25mm、45mm。
2014年以降に、追懐された画角は、以下です。
42.5mm、9mm、30mm MACRO、15mm、12mm、200mm。
このうち12㎜と200㎜は、価格が、20万円以上に価格設定されていますので、特殊です。
15㎜は、14㎜で代替できます。9㎜は、風景であれば、広域ズームでカバーできます。
つまり、単焦点レンズのラインアップが、ポートレートの42.5㎜を除いて、2011年は完成しています。
42.5mmは、画角としては、 45mm/F2.8 MACROでカバーできますので、優先順位が低かったのかも知れません。
パナソニックの単焦点レンズは。LEICAブランド以外は値崩れして半額近い価格になっていますので、基本の6本は、高くても、5万円台以下で買えます。
4-3)25mm(換算50mm)
5本のレンズのラインアップの最後は、25㎜(換算50mm)でした。
フイルム時代のカメラでは、ズームのレンズの性能が良くなるまでは、50mmの単焦点レンズをつけてカメラを売っていました。簡単に言えば、50mmは、標準のキットレンズでした。
そのころの意識からすると、換算50mmのレンズが一番最後にでてくるのは、意外な気もしますが、ズームレンズの性能が良くなったので、換算50mmの単焦点レンズには、人気がありません。
むしろ、単焦点レンズでは、より広角のレンズに人気があります。
5本のラインアップの最後は、2011年発売のLEICA DG SUMMILUX 25mm/F1.4でした。
これは、意外に、思われました。
LEICAブランドではない25㎜の発売は、2015年のLUMIX G 25mmF1.7です。
オリンパスについても、2014年の DIGITAL 25mm F1.8まで、MFTの25mmはありません。
ちなみに、前身のフォ―サーズの25mmは、2008年4月のズイコーデジタル 25mm F2.8というパンケーキレンズです。2008年10月には、MFTのDMC-G1 が発売されていますので、フォ―サーズの最後の時期に相当します。
25㎜は換算50mmですが、5本の画角(8mm、14mm、20mm、25mm、45mm)中では、マクロの45mmについで、望遠側です。
望遠の単焦点レンズは、初心者には売れない気もします。望遠単焦点では、広角の単焦点とちがって、対象が画角におさまらないことがあります。
カメラ2台体制であれば問題はありませんが、カメラ1台で、望遠の単焦点は、かなりのリスクを抱えます。
換算50mmであれば、風景写真も撮影できますが、それには、割り切りとトレーニングが必要です。
4-4)まとめ
MFTは小型なので、望遠レンズが小さくなります。
被写界深度が深いので、マクロ撮影には向いています。
カメラが小型なので、パンケーキレンズをつけて、コンデジ代りに使うことができます。
広角側は不利になるので、余り、無理は効きません。
問題は、換算50mm前後の標準画角で、訴求する点が見えないことです。
単焦点レンズのように、ズーム域を狭めれば、レンズは小型化できます。
フルサイズセンサーの標準ズームは、24-70㎜です。これは、レンズサイズの制約によっています。
同じレンズをMFTにつければ、換算48-140㎜になります。広域端に問題がありますが、ほぼ、便利ズームのレンジです。
換算24-70mmの画角をMFTで実現するためには、12-35㎜で十分です。
ただし、フルサイズセンサーのカメラのようなサイズの制約はありません。
この余裕をどのように活かすのかという、MFTの設計思想が混乱している気がします。
ズームレンズである以上、単焦点レンズのようにF値を明るくすることはできません。
MFTでは、パナソニックは、F1.7通しのズームレンズを、フォーサーズでは、オリンパスは、F2.0通しのズームレンズを作りましたが、レンズはとても大きく、重くなり、MFTとフォーサーズの小型化のメリットはなくなります。
LEICAブランドの12-60㎜F2.8-4.0や、オリンパスの12-40mmF2.のレンズの性能は、フルサイズのレンズの性能を超えていると思われます。これは、レンズの設計の自由度を考えれば、当然のことです。とはいえ、12-60㎜F2.8-4.0は大きいです。12-40mmF2.8は、望遠端が不足します。レンズがよくとも、センサーの制約があるので、ダイナミックレンジでは勝てません。バランスがよくない気がします。
というわけで、正解はわかりませんが、こうした場合のMFTの設計思想は何か、説明を受けてもよいと感じます。
12-60㎜F2.8-4.0は、重いなと思いながら使っていますが、12-32㎜に至っては、設計理念が理解できません。単焦点のようには、写らないので、このレンズをつかうメリットはないと思います。
性能を追求したF1.7通しのズームレンズや、小型化を追求した12-32㎜のレンズは、試作品としては、理解できますが、マーケットは小さいのではないでしょうか。12-32㎜は、キットなので、抱き合わせで購入されていますが、単品で購入する人は、想像できません。キットレンズは、コスト優先だといわれれば、その通りではあります。しかし、12-32㎜を使う人は、初心者なので、サイズが大きく、価格が高くならない限り、ズームレンジを広げるのが親切に感じます。