科学の方法とは何か

(ブリーフの固定化法は、エビデンス革命によって、復活しています)

 

パースが、ブリーフの固定化法(The Fixation of Belief 1877)で、科学の方法と言ったときに、イメージしていた科学とは、進化論でした。

 

パースは、1914年に亡くなっています。

 

アインシュタインは、特殊相対性理論を1905年に発表しました。その後、20世紀の前半に、物理学が驚異的な進歩をとげます。

 

科学哲学者のポパーは、物理学の発展を身近に見て、物理学に科学のモデルを見出します。

 

「観察して、仮説を立てて、実験して仮説を検証する」というステップが物理学では、成功します。

 

これは、帰納法演繹法が有効であるという信念に繋がります。

 

1979年にノーベル物理学賞を受賞したスティーヴン・ワインバーグは、科学の発見(To Explain the World: The Discovery of Modern Science 2015)の中で、物理学は、1流の学問であるが、2流の学問も多いといいます。

 

ポパーは、進化論は科学ではないと批判していました。

 

1959年に、スノーは、「二つの文化と科学革命」の中で、人文的文化と科学的文化の間には、越えられないギャップがあると主張しました。

 

この時に、スノーが例であげた科学的文化とば物理学でした。

 

近代経済学が、物理学の微分法方程式のアナロジーで、経済現象を説明することに成功します。

 

近代経済学の成功を見て、他の学問分野でも、物理学の微分方程式をモデルにした学問構築がここみられます。

 

ジョン・ホーガン(John Horgan)は、1996年に、「科学の終焉」で大きなインパクトを持つ発見の終焉を主張しました。

 

確かに、物理学を科学のモデルとみなせば、ホーガンがいうように大きなインパクトを持つ発見は見られなくなっています。

 

しかし、1990年代には、データサイエンスの研究がスタートし、今世紀に入って、成果が明らかになってきます。

 

そこで、わかったことは、「物理学のような単純な因果モデルは、因果モデルの中では例外である」ということです。

 

原因が複数あることが普通です。

 

複数の原因は、独立していないことが普通です。

 

仮説を検証する実験ができないことが普通です。

 

因果モデルは、時間とともに変化して、賞味期限のある生ものであることが普通です。

 

因果モデルは、確定論ではなく、確率論で記述されるのが普通です。

 

確定的な因果モデル(大きなインパクトを持つ発見)は、ないのが普通です。

 

こうして、今世紀にはいって、物理学は科学のモデルにはならないことが明確になりました。

 

ビッグデータも、生成AIも背後にある理論はデータサイエンスです。

 

物理学では、まったく歯が立ちません。

 

1970年頃の日本の義務教育の数学のカリキュラムは、アメリカの義務教育の数学のカリキュラムより2年ほど進んでいました。

 

今世紀に入って、アメリカの義務教育では、データサイエンスが取り入れられています。

 

それ以前の世代のアダム・グラントは、「THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す 」の中で、(物理学に必須の)三角関数を学ぶよりは、統計学を学んでいたかったと言っています。

 

日本では、データサイエンスは、理解されていません。アダム・グラント(1981年生まれ)が、苦労しているように、数学とコンピュータサイエンス以外の専門家のデータサイエンスのリテラシーは大きく欠如しています。

 

今世紀の科学はエビデンス革命によってあらゆる分野に浸透しています。

エビデンス革命については、別途説明します。

 

標準的な科学の方法が、物理学から、データサイエンスに入れ替わったことで、パースのブリーフの固定化法は、復活しています。

 

なぜなら、進化論をベースの漸近的な改善の科学とデータサイエンスは、共通の概念を使っているからです。進化論とベイス更新は相性が良いです。

 

デジタル社会へのレジームシフトの理論の背景は、データサイエンスであり、それによって引き起こされたエビデンス革命です。

 

この問題点を整理して理解するときに、ブリーフの固定化法は、大変役に立ちます。