エラーリカバリ―の話

1)リスクマネジメントの基本

 

リスクマネジメントの基本は、許容されるエラー率を設定して、エラーがあった場合の対処を事前に決めておくことです。

 

これは、科学的なプロジェクトマネジメントの基本です。

 

エラーが起こらない前提のプランAを立てます。エラーが起こった場合のプランBも立てます。

 

日本経済新聞によると、官僚の無謬主義とは、エラーが起こった場合のプランBの検討を封印して禁ずることです。

 

これは、リスクマネジメントの放棄になります。

 

教育をした場合、カリキュラムを習得できること(プランA)が前提です。しかし、リスクマエンジメントをすれば、カリキュラムを習得できない人が発生した(エラーが起こった)場合のプランBが必要です。これは、官僚の無謬主義とは、相容れません。その結果、文部科学省は、習得主義を放棄して、履修主義に走っています。これは、官僚の無謬主義を実現する方法ですが、評価の対象をエビデンスから、形式的なチェックリストにすり替えるドキュメンタリズムが蔓延することになります。ドキュメンタリズムの典型は、霞が関文学の官僚答弁です。ここでは、プランBがありませんので、分数のできない大学生は放置されています。

 

霞が関文学の官僚答弁を繰り返せは、リスクは放置されますので、少子化は止まりませんでした。少子化がここまでひどくなった原因は、行政の怠慢(あるいは非科学的な運営)にあります。しかし、無謬主義の結果、エラーは放置され続けています。

 

エビデンスベースで考えれば、ふるさと納税は、税収は、ゼロサムでコストがかかるだけですから、実現不可能になります。マイナスの効果しか期待できない政策ができるために、科学的でないロジックが蔓延しています。

 

福島原発事故が起こるまで、原発は絶対安全でした。リスクマネジメントは放棄されていました。

 

2)日本のリスク問題



経済アナリストのジョセフ・クラフト氏が7月4日、ニッポン放送飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。相次ぐマイナンバーカードのトラブルと政府の対応について解説しました。このなかで、クラフト氏は次のように言っています。

 

 

アメリカ人として言わせていただくと、トラブルは相次いでいますが、何千万個のマイナカードがあるなかで13万件、あるいは(無関係な別人との口座登録が)約700件など、0.001%くらいの数字です。欧米の感覚からすると、このようなことで大きく騒ぐのはいかがなものかと思うのです。

 

アメリカでは当然、間違いは起こるので、「間違いが起きた」という問題よりも「間違いをいかに早く直すか」というところに焦点を当てます。トラブルが起きたことが大きくニュースになると、トラブルを公表しなくなったり、隠そうとするようになるなど、いつまでも制度が積極的に進みません。

 

 

しかし、クラフト氏は、日本のリスクマネジメント問題を理解していないと思います。

 

クラフト氏は次の様にも言っています。

 

 

アメリカでは(中略)「間違いをいかに早く直すか」というところに焦点を当てます。

 

ということは、アメリカでは、リスクマネジメントが出来ている、プラグマティズムエビデンスベースの組織マネジメントが出来ていることを指します。

 

クラフト氏は、「『ノーミス社会』では、イノベーションが進まなくなってしまう」ともいっています。これは、アメリカでは、官僚の無謬主義ではなく、科学的な政策決定が出来ていることを示しています。

 

クラフト氏は、「0.001%くらいの数字で、(中略)大きく騒ぐのはいかが」ともいっています。しかし、この0.001%は、ランダムサンプリングで得られた数字ではありません。

 

日本は、無謬主義なので、エラーの体系的な計測をしていません。

 

数字はいくつでもかまいませんが、事前に、システム点検をする閾値を公開しておく必要があります。

 

つまり、問題は、マイナンバーカードではなく、科学的なリテラシーの欠如に基づく、リスクマネジメントの喪失にあります。

 

引用文献

 

マイナンバーカード「このくらいのトラブルで騒ぐことは欧米では考えられない」 日本の「ノーミス社会」の弱点をアメリカ人経済アナリストが指摘 2023/07/04 ニッポン放送

https://news.yahoo.co.jp/articles/239b90cbe1e46c3f74cbf1eed8e7dd35f5a69ed4