レジームシフトとシステム思考法

1)鉄のトライアングルと日本型社会主義

 

鉄のトライアングルは、日本型社会主義の一部とも言われ、古くは、2002年の北沢栄氏の批判のような指摘が多数あります。

 

鉄のトライアングルの特殊性は、日本だけにある年功型雇用とリンクしていることです。

 

その結果、日本の政治家や企業幹部は、高齢者ばかりになっています。

 

人間を年齢で差別すべきではありませんので、高齢者は、全てだめだということはできません。

 

しかし、DXなどの新しい技術は、日進月歩です。通常のビジネスに必要はノウハウですら半減期は2年だという調査結果もあります。高齢者のノウハウに価値があるというモデルは、エビデンスで否定されています。

 

データサイエンスのリテラシーでは、個別の高齢者は排除されるべきでは、ありませんが、能力主義で、人材が登用されていれば、政治家や企業幹部の年齢分布の中央は若く、年齢のバラツキも大きくなっているはずです。

 

つまり、人材登用が実力主義ではないことは、エビデンスが明確に示しています。

 

日本型社会主義に反対する批判は数多くあります。

 

逆に、一部には、日本型社会主義を礼賛する人もいます。たとえば、「日本は過去に日本型社会主義を大成功させているから、今後も頑張れば日本型社会主義で経済の活性化が実現できるはず」といった論理です。

 

ジームシフトがおこれば、過去の成功(最適な生存方法)は、変わってしまいますので、「過去に成功しているから、今後も成功できる」という主張は、論理的には破綻しています。

 

これは、帰納法の基本的なあやまりです。仮説作成には、帰納法ではなく、アブダクション(abduction)を使えというのが、プラグマティストのパースの主張です。

 

とはいえ、「おもてなし」に見られるような、日本製は無条件に優れているといった主張や、科学的なエビデンスに基づかない経営哲学で経営が改善するといった、根拠のない主張が好きな人も多くいます。日本型社会主義はよいという記事を好む読者数は多く、かなり大きなマーケットを形成しています。

 

つまり、科学的なリテラシー教育を受けていない人は、非科学的なバイアスの大きなデータに基づく主張が好きなので、その人に向けて、売れる記事を書くことはビジネスとしては合理的な選択です。

 

科学的な記事が売れる訳ではありませんし、どの記事を選んで読むかという選択の権利は読者にあります。

 

自分の主張にあった記事を読んで、安心する読者は、客観的、あるいは、科学的な記事を求めている訳ではありません。

 

とはいえ、これが行き過ぎるとネットに広まっている陰謀論のようなトンデモナイ主張になります。

 

日本製は無条件によいという発想と、トンデモナイ主張は、心理学的には、同じ連続したスペクトルを形成していて、線引きは困難です。

 

冷静にみれば、日本経済だけが30年間停滞していますので、日本型社会主義が成功しているというエビデンスはありません。

 

貧富の差が小さいなど、特定の変数だけをピックアップして、日本型社会主義が優れているという人もいます。しかし、経済の基本は生産性なので、貧富の差を取りあげることは、サンプリングバイアスになります。また、20歳未満の貧困層をみれば、貧富の差が小さいとはいえません。こうした場合、発言者の収入をみれば、日本型社会主義で、得をしている人が多いので、利害関係者が、都合のよいデータだけを引用していると判断できます。

 

2)システム思考法

 

2002年の北沢栄氏の批判は、官僚は利権をつかって収入を得ているのでけしからんという批判と思われます。

 

それから20年経っていますが、国交省会計検査院でも、鉄のトライアングルが問題になっています。

 

つまり、北沢栄氏の批判には、問題を解決する力がなかったことになります。

 

日本型社会主義に、システム思考法を適用すれば、問題は、懲戒処分になった官僚にあるのではなく、人事システムにあることになります。

 

つまり、問題を解決するには、特定の個人を批判するのではなく、システムを変更する必要があります。

 

戒告の懲戒処分にしても、年功型で、退職後の天下りがあるのであれば、システムは変わりません。懲戒処分をくだす主体も内部処理で、独立性は高くありません。

 

官僚の給与体系は年功型で、ポストに属していて、仕事の成果に関係がありません。

 

2023年の人事院の総裁は、民間出身の人ですが、公務員の給与体系は、依然として成果には無関係になっています。DXを促進しても、給与は1円も増えません。

 

システム工学の基礎知識では、フィードバックが働かないシステムは、機能不全になります。経済学の市場システムは、フィードバックシステムの一部になります。

 

年功型雇用で、まともな成果がでないのは、システム設計が間違っているからです。



3)レジームシフトとシステム思考

 

システム思考は、デジタル社会への対応のようなレジームシフトに対応するには、変化に対応できる柔軟な雇用システムでなければ無理だと考えます。

 

年功型雇用では、転職すれば、給与は減ってしまいます。

 

これは、リスキリングすれば、給与は減ること意味します。

 

この状態で、DXの補助金をつけることは、無駄と判断できます。

 

システム思考をすれば、現在の政府の政策は理解不能です。

 

財務省は26日、最近の為替相場の動きは「急速で一方的だ」とコメントして、「高い緊張感を持って注視するとともに、行き過ぎた動きに対しては適切に対応したい」「行き過ぎた動きには、どのようなオプションも排除しない」と述べています。

 

しかし、日銀は、依然として、金融緩和しています。

 

円とドルのレートは、上がるか、下がるかの2者択一です。

 

ある専門家は次の様に説明しています。

 

為替相場の特定の水準を守る「水準介入」は、自国製品の輸出競争力を高めるための通貨切り下げなので許容されないが、「経済・金融の安定を阻害する過度な変動や無秩序な動きを落ち着かせるための介入である「スムージングオペ」は許容される。

 

財務省は、この原理原則をしっかり頭に置いた上でのものになっている。

 

しかし、「水準介入」と「スムージングオペ」を分離できるデジタルフィルタ―は存在しません。これは、実現不可能なアルゴリズムです。システム思考は、アルゴリズムの実現性を考えるので、こうなります。

 

2つを分離できるデジタルフィルタ―が実現可能であれば、為替市場はそれだけで安定化するはずです。

 

為替市場が不安定になるのは、分離可能なデジタルフィルタ―ができないことを意味しています。



4)ソフトウェア技術者の欠如

 

ブログでは、darktableというRAW現像ソフトを扱っています。

 

パソコンでは、アドビの製品がデファクトスタンダートになっています。

 

一方、スマホの写真加工・編集アプリは、さながら戦国時代になっています。

 

しかし、日本製のソフトは皆無です。

 

統計ソフトのRのライブラリーは、CRANで提供されています。

 

このライブラリーの提供者に、日本人はほとんどいません。

 

つまり、この2つの分野を見る限り、世界に打って出ている日本人のプログラマは、皆無です。

 

Rubyまつもとゆきひろ氏のような例外はありますが、やはり、例外と思います。

 

TIOBEの「TIOBE Programming Community index」は、次の順になっています。



2022/12順位

2021/11順位

プログラミング言語

全体に占める割合

1

1

Python

16.66%

2

2

C

16.56%

3

4

C++

11.94%

4

3

Java

11.82%

5

5

C#

4.92%

6

6

Visual Basic

3.94%

7

7

JavaScript

3.19%

8

9

SQL

2.22%

9

8

Assembly lamguage

1.87%

10

12

PHP

1.62%

11

11

R

1.25%

12

19

Go

1.15%

13

13

Classic Visual Basic

1.15%

14

20

MATLAB

0.95%

15

10

Swift

0.91%

16

16

Delphi/Object Pascal

0.85%

17

15

Ruby

0.81%

18

18

Perl

0.78%

19

29

Objective-C

0.71%

20

27

Rust

0.68%

上の表から、1位がPython、2位がC、3位がC++、4位がJavaであることがわかります。それら4つの言語の合計人気シェアは56.98%であり、過半数以上のシェアを誇っていることがわかります。

コーディングが簡単なPython、メモリー効率と実行速度で、C、C++、WEB用には、Javaがあれば、だいたい足りてしまいます。

その他に、アルゴリズムのチェックには、Rは便利ですが、大規模システムは作れないので、教育用言語だと思います。それでも、EXCELが抜け出すのには、効果があります。

他のマイナーが言語も、同様に、特化した環境では、効率が高くなるので、使えますが、汎用性は低くなります。

さて、気になったのは、日本人のプログラマーの少なさです。

マイナンバーカードやCOCOAを見ていると、日本人のプログラマーのレベルは考えられないほど低いです。

 

これをシステム思考法で考えると、教育システムの問題と思われます。

 

思い当たる原因は、世界で日本だけでしか採用していない履修主義です。

 

キーワードを暗記して、試験で答案用紙に書き込むのであれば、内容が理解できていない履修主義でもごまかせます。

 

しかし、プログラミングは、アバウトでは動きません。官僚の人と話をしていると、どうして、そこまで細かく記載するのかと聞かれることがあります。プログラムは正確にアルゴリズムを反映する必要があります。初期値などのデータも指定する必要があります。仕様書にアルゴリズムとデータセットが書かれていなければ、コーディングはできません。

 

そう考えると、マイナンバーカードやCOCOAでは、発注者側がアルゴリズムとデータセットを記載できていない、受注者側のプログラマアルゴリズムとデータセットを正確にコーディングできるまで、ソフトウェア工学が理解できていないと推測できます。

 

つまり、履修主義は、科学的理解を破壊していると推測されます。





引用文献

 

【2023年版】プログラミング言語ランキング|順位の推移とトレンド 2023/01/13 CMC JAPAN

https://cmc-japan.co.jp/blog/%E9%96%8B%E7%99%BA%E8%A8%80%E8%AA%9E%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0/

 

国交省航空局長が戒告の懲戒処分に 利害関係者との会食で割り勘にせず 国交省OB人事介入問題 2023/06/26 TBS NEWS

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/563796?display=1

 

会計検査院も未公表人事提供 国交省OB介入で調査―河野担当相 2023/06/27 JIJI.COM 

https://www.jiji.com/jc/article?k=2023062700643&g=pol

 

官僚社会主義 : 日本を食い物にする自己増殖システム 北沢栄著 朝日新聞社  2002



日本型社会主義 ウィキペディア



「日本人はみんな貧乏になる」岸田政権の"新しい社会主義"ではだれも幸せになれないワケ  2022/01/20 PRESIDENT 藤巻 健史

https://president.jp/articles/-/53944?page=1

 

日本病(Japan Disease)エコプロテック

https://www.eco-pro.org/page477350.html

 

結局「日本型システム」が世界の答えになる~共産主義も、資本主義も、制度疲労の中で 2023/02/23 大原 浩

https://gendai.media/articles/-/106315?imp=0



失敗し始めた社会主義国・日本 2022/07/25 東洋経済 佐々木 融

https://toyokeizai.net/articles/-/576915