政権与党の空中分解

 

1)政権与党の衰退

 

島田 裕巳氏は、現在の政党を次のように整理して説明しています。(筆者要約)

 

 

戦後政治では、どの政党でも圧力団体が支持母体になってきた。自民党なら農協、遺族会、医師会など、野党なら労働組合で、公明党なら、巨大教団の創価学会である。

 

こうした圧力団体は、どこも力を失っている。

 

自民党の党員の数は、一時500万人を数えたのが、100万人にまで減少している。

 

4年ごとに行われる地方選挙で、公明党の候補者は、選挙ごとに10パーセント票を減らしている。

 

野党も(共産党を含めて)同じである。

 

これに対して、勢力を拡大している政党は、維新の会に見られるように、圧力団体とかかわりをもたない政党である。

 

 

与党は、予想される議席数が激減するので、解散総選挙を延期しました。

 

しかし、議席数の減少の原因が、支持母体の弱体化にあるのであれば、延期しても、問題解決にはなりません。

 

2)鉄のトライアングルの理解

 

与党は、支持母体に補助金をばら撒きます。支持母体は、献金をします。官僚は、支持母体のある業界に天下りします。これが、鉄のトライアングルの構造です。

 

東京オリンピックの時にも、このトライアングルが機能しました。その結果、東京オリンピックは、開発途上国のオリンピックになりました。

 

モントリオールのオリンピックの赤字の返済に30年かかってから、先進国では、オリンピックができなくなりました。その解決策は、民営オリンピックのロサンジェルスオリンピックでした。これ以降、先進国では、オリンピックに税金を投入することはなくなりました。

 

東京オリンピックでは、膨大な税金が投入され、そのことが問題にはなりませんでした。これば、日本のガバナンスが発展途上国であることを示しています。

 

スイスに拠点を置くビジネススクール国際経営開発研究所(以下、IMD) が「世界競争力ランキング2023」を6月20日に、発表しました。日本は過去最低の35位という結果となりました。

 

アジア太平洋地域では、14位中11位です。

アジア太平洋地域の順位は以下です。

 

1位 シンガポール(総合4位)

2位、台湾(総合6位)

3位 香港(総合7位)

4位 ,中国(総合17位)

5位 オーストラリア(総合19位)

6位 マレーシア(総合27位)

7位 韓国(総合28位)

8位 タイ(総合30位)

9位 ニュージーランド(総合31位)

10位 インドネシア(総合34位)

11位 日本(総合35位)

12位 インド(総合40位)

13位 フィリピン(総合52位)

14位 モンゴル(総合62位)

 

世界競争力ランキングでは、日本は、発展途上国になっています。

 

世界経済フォーラム(WEF)は6月21日、男女格差の現状を各国のデータをもとに評価した「Global Gender Gap Report」(世界男女格差報告書)の2023年版を発表した。日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位で、前年(146カ国中116位)から9ランクダウン。順位は2006年の公表開始以来、最低でした。

 

ジェンダーギャップ指数がさがれば、人材活用が出来ていないので、労働生産性が下がります。

 

つまり、世界競争力ランキングが下がります。

 

企業が労働生産性をあげれば、競争力が大きくなりますので、利益をあげられる可能性が高くなります。つまり、株主の利益に繋がります。労働生産性が上がれば、所得が向上します。これは、労働者の利益に繋がります。

 

日本以外の先進国では、株主(資本家)も、労働者のWin&Winの関係にあるので、労働生産性を向上させることに、反対する勢力はありません。これは、DXが、株主と労働者双方の利益になることとほぼ同じ内容です。

 

日本は、DXが進みませんので、労働生産性をあげると困る政治勢力が活動しています。

 

鉄のトライアングルは、島田 裕巳氏が指摘するように、政治家の利益誘導と結びついています。官僚は、天下りポストが得られば、それを通じて利益をあげられますので、同調する理由があります。問題は、民間企業です。民家企業



図1は、政策と社会変化の関係を示しています。

 

オレンジ色が鉄のトライアングルの政策です。

 

青色が社会変化です。

 

1985年くらいまでは、日本の社会変化は、工業化を進めることでした。

 

この時の状況は、図1のAで示せます。2つの矢印は、完全には一致しませんが、概ね重なっています。

 

1990年頃には、工業化の中心は、日本から中国に移動します。日本の工業は生産量を減らしていますので、補助金は設備投資には回せません。



この時の状況は、図1のBで示せます。2つの矢印は、向きが大きくずれています。



2000年以降デジタル社会へのでレジームシフトが始まります。

 

この時の状況は、図1のCで示せます。2つの矢印は、向きが反対になっています。

 

青色の社会の変化は、産業の組み換えが必須なことを示しています。既存の企業を解体して、新しい企業をつくる必要があります。

 

一方、鉄のトライアングルの向いている方向は変わりません。

 

与党は、支援団体に、補助金を配って、選挙の票の確保に走ります。

 

官僚は、天下り先の業界がなくならないように、配慮します。

 

しかし、これは、デジタル社会へのレジームシフトとは逆向きです。

 

デジタル社会にあった個人認証は、スマホのアプリで十分です。まともクラウドサービスをしているIT企業であれば、既存のアプリの1つを書き換えれば、それで対応できます。

 

しかし、その場合には、選挙の支援団体に補助金をながすことができません。

 

それができないと、官僚は天下り先を失います。

 

なので、政策の目標は、支持団体であるITベンダーに補助金や、事業を通じてお金を流すことです。

 

本当にDXを進めるのであれば、クラウド上のスマホアプリで十分なのですが、日本のITベンダーは、まともなクラウドシステムをもっていませんし、まともなスマホアプリをつくれません。なので、それでは、都合が悪くなります。

 

こうして、ITベンダーが、受注できるマイナンバーカードが出来があります。

 

本当に進めたいのは、支援団体にお金を流すことで、DXではありません。

 

DXは、予算獲得のための便宜的なキーワードにすぎません。

 

こう考えれば、マイナンバーカードは失敗ではなくなります。予定通り、古いソフトしか作れないローテクのITベンダーに予算を流すとができたので、失敗ではなく、大成功です。

 

政府は、ITベンダーが今後も、食べていけるように、アップルストアに、クレームをつけています。

 

 

図1 政策と社会変化





3)今後の変化

 

政府は、リスキリングに補助金をばらまきます。



自民党は、女性議員比率10年で30%目指すといっていますが、これも、本来の目的は、補助金を還流させることなので、今後、関連予算が増えると思われます。

 

リスキリングをまともにしたり、女性議員比率をまともにあげれば、現役の政治家の大半は失職します。しかし、その覚悟はなさそうです。

 

本当に必要なことは、図1のDを実現することです。



しかし、当面は、それは実現することはなさそうです。



もちろん、デジタル社会へのレジームシフトを遅らせれば、更に、深く、発展途上国に落ちこみます。これは、持続可能ではありません。

 

なので、どこかで、図1のDが実現するとおもいますが、その時には、与党が入れ替っていると思われます。

 

引用文献



World Competitiveness Ranking

https://www.imd.org/centers/wcc/world-competitiveness-center/rankings/world-competitiveness-ranking/2023/




早期解散騒動の影の主役・公明党に「連立放棄」まで思い込ませた結党以来の危機の中身 2023/06/18 現代ビジネス 島田 裕巳

https://gendai.media/articles/-/111955

 

自公が壊れても、維新は新たな連立の軸になることはできないといえるこれだけの理由

2023/06/18 現代ビジネス 島田 裕巳

https://gendai.media/articles/-/111956