(帰納は仮説を作らないことを説明します)
1)帰納
インスタンス(C1)(原因)=>インスタンス(R1)(結果)
インスタンス(C2)(原因)=>インスタンス(R2)(結果)
等があった場合、帰納はオブジェクトを作ります。
オブジェクト(C1)(原因)=>オブジェクト(R1)(結果)(仮説)
具体的に書きます。
カブトムシには、足が6本ある。
バッタには、足が6本ある。
オブジェクト
従って
昆虫には、足が6本ある。(仮説)
一見すると、帰納を使って仮説が作られてように見えます。
しかし、インスタンスの因果関係は、帰納で推論されたものではありません。
例えば、どうして、「カブトムシには、羽根がある」という命題が選ばれなかったのでしょうか。
2)演繹
演繹は、オブジェクトから、インスタンスを作る推論です。
オブジェクト(C1)(原因)=>オブジェクト(R1)(結果)(仮説)
仮説から、インスタンスを作成します。
インスタンス(C1)(原因)=>インスタンス(R1)(結果)
インスタンス(C2)(原因)=>インスタンス(R2)(結果)
具体的に書きます。
オブジェクト
昆虫には、足が6本ある。(仮説)
カブトムシは、昆虫である
。
従って
カブトムシには、足が6本ある。
バッタは昆虫である。
しがって
バッタには、足が6本ある。
3)演繹の間違い
論理学のテキストには、帰納は間違えることがあるが、演繹は間違えない推論であると書かれています。しかし、これは、眉唾に思われます。
「風が吹けは、桶屋が儲かる」は演繹推論です。
しかし、この推論は、一般には怪しい推論の例と考えられえています。
例えば、帰納によって作られた仮説の「昆虫には、足が6本ある。(仮説)」は、「小さな虫には、足が6本ある。(仮説)」であった場合を考えます。
ここで、小さな虫は、昆虫より範囲が広いと仮定します。
インスタンスから、オブジェクトの仮説を作る場合、Casual Universeを大きくとっても、帰納の推論には、問題は見つかりません。これは、俗に、帰納の推論は間違えることがあるという現象です。この間違いは、帰納の推論では見つかりません。
例を続けます。
演繹の推論を行います。
クモは小さな虫である。
したがって、クモには、足が6本ある。
クモの足の数は8本なので、この推論は間違いです。
この推論の間違いの原因は、帰納にあり、演繹にはないと一般には、説明されます。
しかし、演繹の推論が間違えたので、Casual Universeを、「小さな虫」からより範囲の狭い「昆虫」に切り替えます。つまり、帰納によれば、Casual Universeは大きくとるられ、演繹によれば、Casual Universeは小さくとることが可能になります。
そう考えると、仮説のオブジェクトの作成には、帰納と演繹の双方が必要であると考えるべきです。
4)インスタンスの因果モデル
帰納で、オブジェクトの因果モデルを作成するためには。インスタンスの因果モデルが必要です。帰納は、インスタンスの因果モデルを作ることができません。
そう考えると、インスタンスの因果モデルを作る推論は、何かが課題になります。
パースは、インスタンスの因果モデルを作る推論は、アブダクションであるといいます。
これは、インズタンスの結果に、対応するインスタンスの原因を推定する推論です。
オブジェクトの仮説は、インスタンスの因果モデルなしにはつくることができません。
そこで、パースは、アブダクションが、仮説をつくる唯一の推論であると言います。
5)Casual Universeと因果モデルの関係
「昆虫には、足が6本ある。(仮説)」は、「If X=昆虫 then Xの足は6本」と書けます。
昆虫は、仮説の前提(原因)であると同時に、Casual Universeにもなっています。
「昆虫が羽根を動かせは、空を飛ぶ」という仮説の場合、原因は、「羽根を動かす」であり、結果は、「空を飛ぶ」です。
「昆虫が」は、第1には、Casual Universeを表わすと解釈できます。
第2の別の解釈は、「昆虫が羽根を動かせは、空を飛ぶ」は、「If (X=昆虫 AND Xが羽根を動かす then Xは空を飛ぶ」と解釈する方法です。
この例から、Casual Universeを、原因と解釈できることがわかります。
Casual Universeをつかう理由は、(a)反事実モデルでは、Casual Universeが必須であること、(b) 原因にANDをつかうよりも、Casual Universeを使った方が、見通しが良くなる点にあります。
この問題は、次回に考えます。