(形而上学では、企業も、日本経済も成長しません)
1)ドキュメンタリズム
5月5日午後2時半すぎ、石川県能登地方を震源とする地震があり、石川県珠洲市で震度6強の揺れを観測しました。
政府は、会見をしましたが、最善をつくすというだけで、会見には、具体的な新しい情報はありませんでした。
地震について、検索をかけると、各省のHPにバラバラに情報が提示されています。
しかも、内容はPDFファイルです。このPDFファイルに文字情報が含まれているのか、画像データなのかはわかりませんが、WEB上の文字データでなければ、Google検索の対象になりません。データの重複や差分をとることができません。
つまり、各省庁は、他の省庁が地震について、どのような情報を得ているのか、自分のところの情報が古かったり、欠落があるのかということは把握していません。WEBを使ってはいますが、情報システムはFAX時代そのままです。
NHK等のマスコミは、地震発生から1日くらいは、地震の情報を繰り返し流していましたが、スマホがつながれば、WEBの情報を見るはずで、ラジオやテレビをつかうことはほとんどありません。
WEBの文字と静止画でわからない情報は、動画を発信すべきですし、公共性を考えれば、その番組は、登録なしで、無料で見られるべきです。
これから、NHKの地震情報の発信は、動画については、個人のユアチューバー未満であることがわかります。
デジタル庁は、地震情報の管理の改善については、機能していません。
最善をつくすという会見は、会見をしたので、責任がないとうドキュメンタリズム(免罪符の発行)になっています。
元日本地震学会会長の島崎邦彦・東大名誉教授は、「311前の東北地方の津波リスク評価は、電力会社を中心とする『原子力ムラ』の圧力でねじ曲げられており、そのため津波で多くの人が亡くなり、原発事故も引き起こした可能性がある」といっています。
石川県能登地方地震では、新潟県の柏崎原発も揺れています。操業中ではなかったという説明ですが、島崎邦彦氏の説明を読むと、都合が悪いので、「操業中ではなかった」という説明がなされたという解釈もなり立ちます。
「可能性がある」だけですので、陰謀論をとる必要はありませんが、出来れば、安心できる情報があるべきです。
いずれにしても、最善をつくすという会見は、不安を解消するための具体的なアクションを示していませんので、形而上学です。
2)野党の形而上学
政府が、問題を起こした場合、野党は不正があったか否かを国会で討議します。
しかし、この議論は、不毛な形而上学です。
不正の完全な証拠が残っていることは、通常はありません。なので、野党は、質問で追求をしていると思っているかもしれませんが、不正の完全な証拠が残っていない限り、議論は、未解決で終ります。つまり、この議論は実世界には何ら影響を与えない水掛け論(形而上学)です。
議論すべきは、疑わしい問題が再発しないような予防の方法です。与党が、こうした再発防止案に賛成しない可能性もありますが、その場合には、与党が不正をしているという印象を有権者に強く与えることになりますので、野党は、次の選挙に有利になるはずです。
3)経営者の形而上学
加谷 珪一氏によると「近年、世界の機関投資家が運用基準とするMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)指数の構成銘柄から日本株を外す動きが顕著で、多くの日本企業はグローバルな投資家の投資対象から外れています」
東証は、PBRが1以下の企業の経営を改善を求めています。
馬渕 治好氏は次のように指摘しています。(筆者の要約)
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従来から、アクティビスト、機関投資家などの海外投資家は、日本の経営者に真摯な提言を行ってきが、日本の経営者は「貴重なご意見を誠にありがとうございました」と頭を下げるだけ、何もしてこなかった。
だから、海外投資家は「日本企業が東証に言われたから経営改革できるのなら、とっくにできているだろう」と見ている。
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「真摯な提言」は、形而上学ではなく、具体的な提案です。企業の経営者は、投資家のいうことを聞く必要はありませんが、「真摯な提言」を退ける場合、より適切と思われるプランBを説明する必要があります。「貴重なご意見を誠にありがとうございました」という返答は、形而上学で経営しますという答えになりますので、その企業はグローバルな投資家の投資対象から外れてしまいます。
つまり、日本の企業経営者には、プランAは受け入れないが、プランBをつくる能力もないと判断されます。
4)日本が、経済成長しない理由
フィリピンの2022年の実質GDP(国内総生産)成長率は、前年比でプラス7.6%で、この数字は、政府の目標値を越え、過去2番目の大きさです。
2022年におけるマレーシアの成長率はプラス8.7%、ベトナムの成長率はプラス8.0%、インドネシアは5.3%になっています。
この経済成長を支えているのは、所得向上に伴う消費の強さです。
小倉 健一氏は、2023年の自民党の公約「価格高騰の緩和策、経営改善の支援を充実、整備新幹線、高規格幹線道路、出産育児金を大幅増額、子ども予算倍増」と公明党の公約「児童手当の大幅拡充、高校3年生までの医療費助成の拡大」は、全て増税を前提としていると指摘しています。
2022年の労働者の名目賃金は前年比で2%上昇しましたが、実質賃金は前年より1%減少でしており、賃金は下がりつつけています。
これは、アベノミクスの時からのトレンドです。
その結果、国民所得に占める「国民負担率」(税金と社会保険料をあわせた割合)は、2023年度で46.8%になります。
形而上学は、原則リアルワールドには影響をあたえませんが、例外があります。
それは、政府の予算です。予算書は、以下にデタラメでもお金が動きます。これは、オリンピックの開催費用の予算がデタラメであったことで実証されています。
予算書が、形而上学でなければ、税収を越える予算は組めません。ところが、財源の手当なしに、2023年の自民党と公明党の公約が出来ています。
自民党と公明党の公約を実施した場合、日本経済は、確実に停滞します。
その理由はお分かりですよね。
賃金をあげて、経済成長を起こすためには、労働生産性をあげる必要があります。
つまり、予算の利用効率をあげる必要があります。
ばら撒き予算を組めば、労働生産性はその分だけ確実に下がります。
なので、日本は、必ず貧しくなります。
労働生産性をあげるためには、予算の利用効率をあげる必要があります。
そのためには、ばら撒き予算は不要で、EBPM(Ebidence Based Policy Making)を導入すればできます。
引用文献
サラリーマンの給料を裸になるまで搾取する…!「とにかく明るい岸田首相」のまったく安心できない「オワコン大増税」の中身 2023/05/07 現代ビジネス 小倉 健一
https://gendai.media/articles/-/109950
受け入れざるを得ない悲しい現実、アジアの中でも「小国」に転落する日本 2023/04/17 JBPress 加谷 珪一
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/74801
投資初心者が絶対やってはいけない、「東証の市場再編」に潜む落とし穴 2023/04/29 ダイヤモンド 加谷 珪一
https://diamond.jp/articles/-/302312
日本の「上場企業の大半」は“経営の初歩”もできていない…東証の「要請」が意味すること 2023/04/26 現代ビジネス 加谷 珪一
https://gendai.media/articles/-/109469
これが証拠メールだ、地震本部の警告を骨抜きするよう圧力かけた内閣府の罪
2023/04/29 JBPress 添田 孝史
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/74999
「日本株の先行き」が一段と危うくなってきた 2023/04/24 東洋経済 馬渕 治好
https://toyokeizai.net/articles/-/668317?page=4