科学的方法の進化論(10)

(10)花粉症とジョブ型雇用

(Q:花粉症とジョブ型雇用の関係を論じてください)

 

1)花粉症

 

2023年4月3日、岸田総理が花粉症の対策強化に意欲を示しました。関係閣僚会議を開催するといっています。



環境省のスギ調査によると、関東・北陸・近畿・中国地方などでは過去10年間の最大値を超えるという予想が出ています。関東ではヒノキも“極めて多い”予想で、これらが重なるピークに備え、対策が必要です。

 

2019年のデータでは、42%以上の人が花粉症で、スギ花粉症の方が最も多く38%になっています。

岸田総理は、「結果を出したい」として、“省庁横断”で情報を共有し、対策に取り組むといいます。



飛散を減らす取り組みに関しては、林野庁

情報に関しては、環境省気象庁農水省

防護に関しては、環境省国交省経産省

医療に関しては、厚労省文科省農水省となっています。



野村農水大臣は、「どこがイニシアチブ(主導権)をとって、関係閣僚会議をするのか、が重要になってくる」といっています。

 

しかし、対策はわかりきっています。杉の木をきればよいだけです。

 

杉の木の木材としての便益と、花粉症の外部不経済を比べれば、杉の木を植えれば、日本は貧しくなるだけです。これは、生物多様性条約に基づく判断です。

 

自然資本の経済学は、便益を計算して、便益最大かを目指しますので、杉の木を切らない現状は、生物多様性条約違反になります。杉以外によりマシな木を植えれば良いことになります。

 

2)諫早湾干拓

 

2023年3月2日に、最高裁が上告棄却して、司法判断が統一され、諫早湾干拓は、「開門せず」で決着しました。

 

これは、漁民が、農林水産省を訴えたものです。

 

干拓から、30年たっていますので、生態学が一変してしまいました。

 

有明海の環境は、海域、周囲の河川からの流入の環境効果の積分になりますので、科学的に考えれば、干拓だけを取り上げて因果関係を証明することは不可能です。干拓は、有明海の環境に影響を与えていますが、その他の要因と分離することは至難です。

 

ところで、ここで言いたいことは、干拓の影響ではなく、花粉症と有明干拓の共通点です。

 

環境省は、何故、諫早干拓について何もしなかったのでしょうか。

 

科学的に考えれば、環境省を相手に、行政の怠慢を訴えた裁判の方が、歩留まりがよいと思われます。

 

2023年4月1日に、子ども政策の司令塔「こども家庭庁」が発足しています。

 

 「異次元の少子化対策」を掲げる岸田文雄首相の下、少子化対策子育て支援、いじめなど複数省庁にまたがっていた子どもを取り巻く課題に一元的に取り組むそうです。担当相には、方針に従わない省庁に対応の是正を求める「勧告権」を付与しています。各省庁より一段高い立場から総合調整機能を発揮できる仕組みとされています。

 

しかし、これは、異常です。普通に考えれば、「勧告権」は、不要です。

 

政策が科学的に行われていれば、どこの省庁でも同じ政策に収束するはずです。

 

「複数省庁にまたがっていた子どもを取り巻く課題に一元的に取り組む」という問題設定は、政策が科学的に行われていない。科学的な議論の余地がないことを前提にしています。

 

3)河川環境のバイブル

 

1998年に出版されて、2001年に改訂された、Stream Corridor Restorationは、河川生態学のバイブルです。

 

アメリカで、この本を出版するときに、得られた協力体制は以下です。



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Stream Corridor Restoration (1998、改訂2001)

 

Federal Agencies

The following federal agencies collaborated to produce this document:

 

U.S. Department of Agriculture

  • Agricultural Research Service
  • Cooperative State Research, Education, and Extension Service
  • Forest Service
  • Natural Resources Conservation Service

 

U.S. Environmental Protection Agency

 

Tennessee Valley Authority

 

Federal Emergency Management Agency

U.S. Department of Commerce

  • National Oceanographic and Atmospheric Administration

 – National Marine Fisheries Service

 

U.S. Department of Defense

  • Army Corps of Engineers

 

U.S. Department of Housing and Urban Development

U.S. Department of the Interior

  • Bureau of Land Management
  • Bureau of Reclamation
  • Fish and Wildlife Service
  • National Park Service
  • U.S. Geological Survey

 

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これから、科学的な見地に立てば、省庁縦割り問題はないことがわかります。

 

科学的な政策を行うのであれば、協議すれば、結論は収束するはずです。

 

だから、「勧告権」は、不要です。

 

つまり、「複数省庁にまたがっていた子どもを取り巻く課題に一元的に取り組む」必要はありません。政策が科学的に行われないことが問題です。

 

Stream Corridor Restorationは、ダムと堤防を出来るだけ作らないNatural flood managementが原則です。

 

国土交通省にとっては、都合の悪い部分がありますので、この本を封印したい勢力があることは理解できます。

 

しかし、日本では、環境省も、この本を封印して、政策に反映されていません。

 

今年は、桜エビは豊漁のようですが、多くの魚種の漁獲量は減少し続けています。

 

ここ20年で、河川や海岸環境の復元の科学は劇的進歩しています。

 

しかし、日本では、生態学で明らかになった対策は無視しされています。

 

政治的な利権が、生態学に優先しています。

 

その結果、日本の生態学は、世界から取り残されています。

 

政府は、「開発協力大綱」の改定案で、ODAが減少しているので、相手国の要請を待たずに「オファー型ODA」で途上国支援する方向に、転換する計画です。

 

しかし、ODAをするには、科学的に裏づけされた技術が必要です。

 

中国は、インドシナ半島を流れるメコン川の上流に十数カ所のダムを建設しました。

 

中国は、1995年以降メコン川に、10数基のダムを建設し、うち5つは、100メートル以上の高さがあります。中国はメコン川に流れ込む支流にも、少なくとも95基の水力発電用ダムを建設済みで、今後も数十基の建設を予定しています。

 

メコン川委員会(MRC)」の推定では、水力発電ダムで得られる電力は、年間約40億ドル(約5327億円)相当に上ります。

 

MRCは、ダムが魚の回遊を止めたり水流を変えたりすることで生じる漁獲量低下の損失額は、2040年までに230億ドルと見込んでいます。さらに、森林や湿地、マングローブの破壊による損害は1450億ドルに上ると推定しています。

 

現在の河川環境は一変して、河川環境に依存して生計をたてた人は失業しています。

 

MRCは、水力発電事業によるリスクを管理して悪影響を軽減すべく、「ダムの設計、建設、運営に関する科学的かつ技術的な指標」を策定しているようです。

 

これは、「生物多様性の経済学:ダスグプタ・レビュー」に沿った作業になっています。

 

花粉症問題と少子化問題は、30年間殆ど進んでいません。しかし、河川生態学に見られるように、世界の科学は進んで、日本だけがとりのこされています。

 

日本に、「オファー型ODA」を提案するだけの技術力がない可能性もあります。

 

すくなくとも、河川環境学については、「オファー型ODA」を提案する力はありません。

 

4)A:花粉症とジョブ型雇用の関係

 

自民党の「AIの進化と実装に関するプロジェクトチーム」は2023年3月30日、「AI新時代における日本の国家戦略(AIホワイトペーパー(案))」を公開しました。国内におけるAI開発基盤、行政でのAI利活用、民間でのAI利活用、AI規制について、提言をまとめています。

 

しかし、政府は、既に、AI戦略と人口知能戦略を作っています。

つまり、戦略には、全くご利益がありません。



AWSは2023年4月4日、生成AI領域のスタートアップ支援に特化したアクセラレータープログラム「AWS Generative AI Accelerator」を開始すると明らかにしました。世界中からの応募を受け付け、10社を厳選し、各社に最大で30万ドル(約3945万円)分のAWS利用枠を与えます。

 

AWS Generative AI Acceleratorは10週間のプログラムです。参加スタートアップはAIモデルや開発に必要なツール、事業立ち上げに必要な助言・支援などを得られます。またAWSの開発者や外部の投資家、生成AI領域の専門家といった人脈と繋がることもできます。プログラムは5月24日に開始し、参加したスタートアップ各社は7月のデモデイで成果を発表します。

 

つまり、「AWS Generative AI Accelerator」の10週間で、応募して、選ばれて、ヒットすれば、開発チームの所得は倍増以上に増える思われます。

 

10週間は極端ですが、ジョブ型雇用では、最長でも10年程度で成果がでます。成果が出せない場合には、リスキリングして、再度チャレンジするチャンスがあります。

 

「AIの進化と実装に関するプロジェクトチーム(PT座長・平将明衆院議員)」の第1回は、2月3日で、AIホワイトペーパーが出た第8回が3月30日です。

 

2月3日から10週間は、4月7日です。つまり、AWS Generative AI Acceleratoは、この原稿の投稿日には、成果を発表しているスケジュールになります。

 

外国時の高度人材が出稼ぎする場合には、最長でも、2,3年で成果が出て、給与が上がることが原則です。

 

ITMediaには、次のような記事が出ています。

 

・「外国人が働きたい国」で日本が33カ国中32位

 

・日本人は「転職にも今の勤務先にも期待していない」

 

・日本人の出世意欲、アジア太平洋地域で「断トツの最下位」

 

世界のジョブ型雇用では、10週間で、成果がでれば、給与が増えるのが当たり前です。

 

花粉症は、科学的な政策が行われるジョブ型雇用ではありえません。

 

財政赤字も(赤字の計算方法には問題がありますが)、ジョブ型雇用であれば、赤字を拡大させれば、解雇されますので、ここまでひどくなることは、ありえません。



引用文献

 

岸田総理、花粉症は「もはや我が国の社会問題」“花粉症対策”なぜ進まなかった?背景に“縦割りの壁”【解説】 2023/04/05 TBS

https://news.yahoo.co.jp/articles/ea014a7465c5e48e50a3953e5b877c42683e21ab

 

「オファー型ODA」で途上国支援、相手国の要請待たずに提案…指針を8年ぶり改定  2023/04/04 読売新聞

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20230403-OYT1T50213/




アングル:メコン川上流に中国ダム、追いつめられるタイの漁村 2023/04/01 Reuter Rina Chandran 

https://jp.reuters.com/article/us-thailand-hydro-dams-idJPKBN2VU09R




「外国人が働きたい国」で日本が33カ国中32位――この国の“真に深刻な問題”とは 2019/09/27 ITMedia

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1909/27/news026_3.html

 

日本人は「転職にも今の勤務先にも期待していない」――世界的にも“異質な仕事観”判明 2019/09/19 ITMedia

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1909/20/news021.html

 

日本人の出世意欲、アジア太平洋地域で「断トツの最下位」 国際調査で判明 2019/08/27 ITMedia

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1908/27/news111.html



AWSが生成AI領域のスタートアップを支援──アクセラレーターを開始 2023/04/05 Newsweek 冨田龍一

https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2023/04/awsai.php