1)帰納法の限界
ある新聞に、スペースXに比べて、日本の宇宙開発は出遅れていると書かれていました。
しかし、スペースXは、3年以上前から、千単位の衛星を打ち上げる計画でした。
最近になって、計画が機動にのってきたにすぎません。
スぺ―スXの計画が、大まかに公開されているにもかかわらず、日本は、政府主導で、1年に10個未満の衛星を打ち上げる計画です。なおかつ、失敗続きですので、今までの方法を続けでも、競争はできません。
生成AIについても、画像認識でブレークスルーがあったのは、2013年で、10年前です。GAFAMは、その後、AIに膨大な研究投資を行い、研究組織を充実させてきました。
ジョブ型雇用であっても、研究組織の人材を揃えるには2,3年はかかります。
2023年は、GAFAMは、研究者の数を減らしていますが、その中でも、AI関係の人材は、増やしています。
一方、年功型雇用では、恐らく、同じレベルのAI研究組織は、永久にできないと思われます。
政府は、日本の生成A技術を促進するといっていますが、そこにある論理は、IT先進国の前例主義をコピーするという帰納法の論理だけです。
日本のITベンダーは、これから生成AIを開発するといっていますが、研究開発チームの規模と能力、資金力ともに、GAFAMと競争できるレベルにありませんので、ITベンダーの9割は勝てないと思います。
これは、草野球チームが、大リーグに勝てるというようなものです。
真に受けている人はいないと思います。
日本語のAIであれば、競争優位になるという人もいますが、根拠がありません。
言語処理については、チョムスキー理論が検証されつつあります。
今のところ、最終結果まで到達していませんが、チョムスキー理論が正しければ、共通言語モジュールで、日本語にも対応可能になります。
2)演繹法の否定
日本経済新聞によれば、官僚の無謬主義とは、政策が失敗した場合の議論を封印することだそうです。
政策は、前例主義の帰納法で立てられます。
スペースXが、多数のロケット打ち上げを計画していても、国産ロケット政策が失敗する場合の議論は封印されます。
そして、実際に、スペースXが、5000個の衛星を打ち上げた時になって、日本の宇宙開発は出遅れているといいます。
GAFAMが、AIに投資し、研究組織を充実させていても、それを無視したIT振興政策が失敗した場合の議論は、封印されます。
生成AIの製品が出てきた時点で、日本のAI技術は遅れているので、補助金をつけるべきだといいます。
婚姻率がさがり、出生人口が減っても、政府の人口政策が失敗した場合の議論は封印されてきました。
人口不足が明確になって、DXをすすめるとか、外国人労働者に門戸をあけろと言います。
年金は、インフレによって、減少するように、設計されています。
実際には、年金だけは、生活できない制度設計をして、老後の資金をためろ、株式運用をしろといいます。
消費の4割は、60歳以上の高齢者です。地方に行けば、地方税の税収の3分は、高齢者が払っています。
演繹法で考えれば、経済成長は、お金が回転することで生まれます。
高齢人口が増えて、年金が減額になるのであれば、その部分は、消費税の増税を行って財源を確保することが原則です。
なぜなら、収入がない高齢者の年金を減額すれば、消費が極端に落ち込むからです。
政府は、インフレになれば、経済成長すると言いますが、インフレは、高齢者を直撃するので、消費が落ち込みます。
霞が関の論理は、各省庁が、予算と定員を増やすことを目的として、それに都合のよい前例を引いてくるだけです。総合的で科学的な論理は、考えていません。これが表に出ないように、無謬主義で、政策が失敗した場合の議論を封印しています。
政策が失敗した場合の議論をすれば、空気が読めないということになって、その人は、左遷されます。
政治家や霞が関の幹部は、人事権をもっているので、空気が読めない(忖度しない)人を左遷することはできます。
皆が、空気を読んだ結果、政策課題は、何1つ解決されないで先送りされていきます。
こうして、高度人材は、海外移民します。若年労働者は、組織の欺瞞に気付いて、会社は、いつつぶれても不思議でないと感じています。
3)まとめ
政策課題が解決されずに、日本の一人当たりGDPが下がり続ける原因は、科学的に論理が破綻した政策運営に原因があります。
引用文献
「生成系AI」でも世界から遅れている日本の末路 2023/08/06 東洋経済 野口 悠紀雄
https://toyokeizai.net/articles/-/691542