ソリューション・デザイン(24)

(24)第3の文化

 

(Q:第3の文化をご存じですか)



1)文化のギャップの問題

 

スノーは、「二つの文化と科学革命」の中で、人文的文化と科学的文化の間にギャップがあり、このギャップは埋められないと主張しました。

 

日本では、人文的文化と科学的文化の間のギャップを埋める重要性を指摘した、科学的文化は、人文的文化で理解できると解釈されています。

 

1959年の「二つの文化と科学革命」では、スノーはギャップは埋められない、技術教育を拡充すべきというモノです。

 

「科学的文化は、人文的文化で理解できる」という偏見はすさまじいものです。

 

日本では、リベラルアーツがあれば、技術が理解できなくとも、科学技術立国ができると考えられています。

 

ある経済新聞では、プラトン哲学やアートが出来れば、よい経営ができるといった記事が書かれています。一般紙ならまだ、理解できますが、経済新聞が、GDP労働生産性に関係しないプラトン哲学やアートを記事にするのは、信じられません。生成AIの性能比較や将来展望を書いてもらった方が、よいと思いますが、経済新聞には、こうした技術の記事がかける科学的文化の人が少ないか、読者に科学的文化の人が少ないので、販売数を減らさないために、人文的文化の記事ばかりかいているように見えます。

 

プラトン哲学を学んでも、生成AIは理解できません。

 

今後の企業の生きのこりに、プラトン哲学と生成AIのアルゴリズムのどちらの理解が必要かは言うまでもありません。

 

これは、スノーが、1959年に「二つの文化と科学革命」で、ギリシア古典を中心とした人文的文化では、科学的文化に置いて行かれるといった論点そのものです。

 

2)A:第3の文化



KEVIN KELLY氏が、1998年に、「The Third Culture」というタイトルで、サイエンスに投稿した論文を引用して、第3の文化を説明します。(筆者要約)

 

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「第3の文化」は、 CP スノーによって最初に造語されました。スノーは、「二つの文化と科学革命」で文化の対決という概念を生み出しました。しかし、1964 年に出版された第 2 版で、彼は「第3の文化」の概念を紹介しました。スノーは、文学的な知識人が科学者と直接会話する「第3の文化」を想像しました。しかし、これは実際には起こりませんでした。

 

ジョン・ブロックマン氏は、「The Third Culture: Beyond the Scientific Revolution(1995)」で、科学者の著作代理人として、スノーの用語を復活させ、修正しました。ブロックマンの第 3 の文化とは、科学者が一般の人々と直接コミュニケーションを取り、一般の人々が彼らに反論する、ストリートワイズな科学文化を意味していました。これは貴族(peerage )文化であり、ネットワーク テクノロジーが促進した貴族です。

しかし、この新しい文化の最も際立った側面は、その即時性でした。

 

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ジョン・ブロックマン氏は、科学者や思想家が自らの著作物を通じて一般の人々に直接語りかけるようになったことを「第3の文化」と呼んで、彼らの活動を随時更新する場としてオンラインサロン「エッジ」を主宰していました。

 

1998年に、KEVIN KELLY氏は、第3の文化はオタク文化(nerdism)であると主張します。

 

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第 3 の文化では、新しい理論よりも早く新しいツールが作成されます。これは、ツールが理論よりも早く新しい発見につながるためです。第三の文化は、科学的資格をほとんど尊重しません。なぜなら、資格はより深い理解を意味するかもしれませんが、より大きなイノベーションを意味するわけではないからです。第三の文化は、新しい経験が合理的な証拠に勝るので、それがオプションと可能性をもたらすならば、不合理なものを支持します。

 

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つまり、科学的なツールを使いこなすオタク文化が、人文的文化と科学的文化の間のギャップを埋めていると主張します。



You Tuberなどのクリエータは、科学者ではありませんが、人文的文化以上に、社会におおきな影響を与えています。

 

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引用文献

 

The Third Culture KEVIN KELLY SCIENCE 13 Feb 1998

https://www.science.org/doi/full/10.1126/science.279.5353.992