ソリューション・デザイン(20)

(20)日本のITの実力

 

(Q:ITエンジニア数の世界ランキングの日本の順位を、ご存じですか)

 

1)日本はIT大国?

 

ITランキングを並べてみます。

 

1-1)IMDの世界デジタル競争力ランキング2022

 

スイスの国際経営開発研究所(IMD)の世界デジタル競争力ランキングは、63カ国・地域を対象に、デジタル技術の利活用能力を、(1)知識(Knowledge)、(2)技術(Technology)、(3)未来への対応(Future Readiness)から評価しており、2022年で6年目を迎える。(1)~(3)を評価するため、9つのサブセクターとその下層に54の小項目が設けられており、それぞれが1~63のランキング形式で評価されています。

 

総合ランキング上位の5カ国は、デンマーク、米国、スウェーデンシンガポール、スイスです。

 

東アジアでは、韓国が8位、台湾が11位、中国が17位、日本は29位でした。

 

1-2)NRIによる各国のIT競争力スコア

 

The Networked Readiness Index(NRI)による各国のIT競争力スコアは以下です。

 

1位は米国の80.30pts、2位はシンガポールの79.35pts、3位はスウェーデンの78.91pts、4位はオランダの78.82ptsとなっています。

 

日本は、73.09ptsで13位です。

 

1-3)世界デジタル政府ランキング2022年

 

早稲田大学電子政府自治体研究所は、「第17回早稲田大学世界デジタル政府ランキング2022」を発表しいています。ICT先進国64か国・地域の国民生活に不可欠なデジタル政府の進捗度を主要10指標で多角的に評価しています。

 

2022年のランキング総合順位は、1位:デンマーク、2位:ニュージーランド、3位:カナダ、4位:シンガポール、5位:米国です。デンマークは2年連続で1位となりました。9位の台湾、10位の日本は2021年と順位が逆転しました。



1-4)世界109カ国のIT技術者数ランキング

 

人材紹介事業などを手掛けるヒューマンリソシア(東京都新宿区)は2022年12月13日、世界109カ国のIT技術者数ランキングを発表しました。

 

調査結果は、国際労働機関や経済協力開発機構、各国の最新の統計データを独自分析して推計した。調査対象の国は、アジア・太平洋の19カ国・地域、北米・中南米の15カ国、ヨーロッパの41カ国、中東の7カ国、アフリカの27カ国です。

 

各国の統計データなどを独自分析し、世界109カ国のIT技術者数を約2517万人と推計。国別で見たところ、1位は「米国」(514.0万人)、2位「中国」(281.4万人)、3位「インド」(226.7万人)、4位「日本」(132.0万人)です。

 

中国は最新のIT技術者数のデータを取得できなかったことから、情報通信業就業者を基に推計しています。

 

各国のIT技術者数は、2021年の直近のデータに比べ約113万人(4.7%)増加しています。

国別で増加数のランキングは、1位「中国」(18.4万人増)、2位「ブラジル」(14.3万人増)、3位「日本」(10.0万人増)です。

 

国別での増加率は、1位「ペルー」(55.1%増)、2位「アルゼンチン」(51.1%増)、3位「キプロス」(43.9%)で、トップ10を中南米とヨーロッパの国が占めています。

 

増加数3位の日本は増加率は、8.2%22位、IT技術者数1位の米国は1.9%増で36位です。

 

最新年のデータを取得できなかった中国はランキングに含めていません。推定増加率は7.0%です。

 

1-5)Telstra:デジタル都市ランキングTOP10(2017)

 

オーストラリアの通信会社テレストラとイギリスの経済誌エコノミスト」の調査部門であるエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が2017年に実施した調査結果です。

 

日本の都市はありません。

 

順位 国名 都市名

1 インド バンガロール

2 米国 サンフランシスコ

3 インド ムンバイ

4 インド ニューデリー

5 中国 北京

6 フィリピン マニラ

7 中国 上海

8 インドネシア ジャカルタ

9 英国 ロンドン

10 スペイン マドリード

 

Telstra:Business confidence in the digital environment

 

2)日本周辺のITエンジニア数

 

ManpowerclipのITエンジニア数も参照して見ます。

 

2-1)中国

 

中国の通信機器大手Huaweiが、2018年8月に初めてIT人材に関するレポートを発表しました。中国国内のIT人材の現状について、以下のように記述しています。

 

「現状のITエンジニアの数は約200万人、750万人のエンジニアが不足している状態」

 

今後毎年800万人の新卒IT人材が世に出てくる(現在の中国の高等教育進学率は50%程度)と試算されています。

 

約200万人を2018年のデータと仮定すると、2022年のITエンジニアの数は、3600万人になります。

 

毎年800万人は多すぎるかも知れませんが、トータルで1000万人越えはありうると思われます。

 

2-2)インド

 

インドには現在450万のIT人材がいると予想されており、さらに年間5%のペースで成長しています。

 

2018年に450万人とすると、2022年には、5%x4=20%増になります。

 

これから、2022年のITエンジニア数は、540万人になります。

 

2-3)韓国

 

現在、韓国国内のITエンジニアの数はおよそ40万人です。今後は年間約1万人、すなわち2-3%程度で成長していくと予想されています。

2018年に40万人とすると、2022年のITエンジニア数は、44万人です

 

2-4)台湾

 

台湾国内のITエンジニアの数は現在約35万人、今後は年間約2万人程度で増えていくと予想されています。

 

2018年に35万人とすれば、2022年は、43万人になります。

 

3)ヒューマンリソシアとManpowerclipの比較


表1 ヒューマンリソシアとManpowerclipの比較

順位  国   ヒューマンリソシア Manpowerclip

1位  米国   514.0万人

2位  中国   281.4万人        3600万人

3位  インド  226.7万人       540万人

4位  日本   132.0万人

9位 韓国  77.4万人        44万人

   台湾               43万人

 

これから、人口の多い中国とインドの推定値のバラツキが大きいことがわかります。

また、台湾の人口は2300万人ですから、人口比で言えば、エンジニアの数が突出しています。

 

4)A:ITエンジニア数の世界ランキングの日本の順位

 

要点を整理します。

 

IMDの世界デジタル競争力ランキング2022 29位

NRIによる各国のIT競争力スコア 13位

世界デジタル政府ランキング2022年 10位

世界109カ国のIT技術者数ランキング   4位

 

順位はひどくばらついています。

 

中国とインドのT技術者数の推定値が変化しても、アメリカ、中国、インドが、ITエンジニア数のトップ3です。

 

日本のITエンジニア数は世界第4位で、決して少なくはありません。

 

今後は、人口の多いベトナム、マレーシア、インドネシアバングラデシュ、ネパールが、IT新興国として、インドの後を追いかけています。

 

日本のITエンジニア数は給与が安く生産性の低い仕事をしています。

 

たとえば、建築の場合には、設計費は建設費用の5から10%です。

 

これは、平均的なレベルの設計です。

 

クラウドシステムのような新しいITシステムを作る場合には、良い設計図が必要です。

 

設計図が良ければ、建築を参考にすれば、売り上げの10から20%がエンジニアの給与に支払われても当然です。

 

給与が高ければ、優秀な学生が、コンピュータサイエンスに進学します。

 

現状は、高度人材が流出していますので、まったく、逆になっています。

 

現在、GAFAのトップエンジニアの年俸は高いですが、計算根拠は、恐らく、建築と同じようなものと推測できます。

 

日本のITエンジニアは、生産性の高い強形式の問題解決を担当していません。

 

そのことが、「NRIによる各国のIT競争力スコア」や、「IMDの世界デジタル競争力ランキング2022」に出ています。

 

日本のITエンジニアは、生産性の低い弱形式の問題解決しか担当していません。

 

たとえば、デジタル庁は、非技術者向け、専門用語は少なめにした初心者向け「Webアクセシビリティー」導入ガイドを無償公開しています。

 

これは、明らかに、生産性の低い弱形式の問題解決です。時間稼ぎにすぎません。

 

やらないよりやった方がましな仕事では、これでは、先行国とのIT競争力スコア等の差は拡がるだけです。

 

これは、最初から、IT競争力スコア等の差を詰めるつもりがないことを示しています。

 

デジタル庁のするべき仕事は、先行国とのIT競争力スコア等の差を縮める方策です。

 

あるいは、デジタル庁のするべき仕事は、効率的なデジタル政府の設計図だけです。

 

弱形式の問題解決に、手を付けるべきではありません。

 

デジタル庁の問題は、設計図なしに、スタートしたこと、設計者に、適性な技術料を支払わなかった点にあると考えます。

 

これは、人文的文化があれば、科学的文化(設計図)は不要であるという偏見に由来しています。

 

引用文献

 

World Digital Competitiveness Ranking 2022

https://www.imd.org/centers/world-competitiveness-center/rankings/world-digital-competitiveness/

 

世界デジタル政府ランキング2022年度版公開

https://www.waseda.jp/top/news/85579

 

IT競争力 国際ランキング・推移 2022/12/26 Global Note

https://www.globalnote.jp/post-1523.html

 

世界109カ国のIT技術者数ランキング 1位は米国、2位は中国 日本は何位? 人材紹介会社が調査 2022/12/13 ITMedia 松浦立樹

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2212/13/news106.html

 

世界109カ国のIT技術者数は約2,517万人、年4.7%増 台頭する中南米、拡大が続くヨーロッパ各国、日本はIT技術者数で世界4位、一方増加率は22位に留まる 2022/12/13 ヒューマンリソシア

https://corporate.resocia.jp/info/news/2022/20221213_itreport05

 

海外エンジニア事情_④台湾編 2019/02/01 Linkedin  Aki Peng

https://jp.linkedin.com/pulse/%E6%B5%B7%E5%A4%96%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%8B%E3%82%A2%E4%BA%8B%E6%83%85%E5%8F%B0%E6%B9%BE%E7%B7%A8-jen-hui-aki-peng

 

海外こそエンジニアの宝庫 中国編 2019/02/27 Manpowerclip

https://www.manpowergroup.jp/client/manpowerclip/employ/engrchn.html

 

海外こそエンジニアの宝庫 インド編 2019/03/13 Manpowerclip

https://www.manpowergroup.jp/client/manpowerclip/employ/engrind.html

 

海外こそエンジニアの宝庫 韓国編 2019/03/27 Manpowerclip

https://www.manpowergroup.jp/client/manpowerclip/employ/engrkor.html

 

海外こそエンジニアの宝庫 台湾編 2019/04/10 Manpowerclip

https://www.manpowergroup.jp/client/manpowerclip/employ/engrtwn.html



デジタル庁、初心者向け「Webアクセシビリティー」導入ガイド無償公開 非技術者向け、専門用語は少なめに 2022/12/06 ITMedea

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2212/06/news144.html