ボケ(ぼかし)とは、対象が、被写界深度の外にある状態です。
つまり、その部分は、ピントがあっていない状態です。
通常は、絞り優先で、撮影して、望遠側かつ明るいF値にすれば、ボケ量は大きくなります。
クロップセンサーの場合には、クロップしているだけですので、ボケ量は変わりません。換算画角で、ボケ量を比較することはできません。ボケ量を換算画角で考えてはいけません。50mmF1.8は、フルサイズでも、クロップセンサーでも同じボケ量になります。
実は、ボケ(ぼかし)の用語は混乱しています。
1)iPhone
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iPhone XS以降の機種では、「被写界深度コントロールスライダ」を使用して、ポートレート写真のぼかし効果を調整することができます。
撮影済み写真のぼかし効果を編集する
ポートレートで撮影した写真は、撮影後でも、ぼかし効果を編集することができます。
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「被写界深度コントロールスライダ」だけ見ると、絞りのことのように見えますが、「撮影後でも、ぼかし効果を編集することができます」とありますので、マルチショットで、前景と背景を分離していることがわかります。
2)パナソニック
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背景をぼかすには、ズームをできるだけT(望遠)側にした状態で、被写体にグッと迫って撮影してください。
タッチぼかしコントロールで一眼ならではの美しいボケ味をかんたんに得ることができます。スライドバーのカーソルにタッチして左右になぞるだけで、背景のボケ効果を調節できます。
アドバイス2 シーンモードの「 (背景ボケ)」で撮影する
人物をより引き立てる設定で撮影できます。
アドバイス3 絞り値を小さくして撮影する
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アドバイス2は、マニュアルではよくわかりません。
手元にあるパナソニックのカメラには、シーンモードの「 (背景ボケ)」はありませんでした。
DC-TZ95★/TZ95Dの機能説明には、次の様に書かれています。
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背景コントロールで「ぼかし」を選べば、周囲にぼかしを入れて際立たせた魅力的なポートレートにすることも可能。
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シーンモードの「 (背景ボケ)」の進化したものが、「背景コントロールの(ぼかし)」のようです。
現在のパナソニックにカメラのDC-DF10には、「背景コントロールの(ぼかし)」機能がついていますが、その上のDC-G99には、この機能はありません。
3)フジフィルム
フジフィルムのコンデジには、「ぼかしコントロール」が付いていました。
「ぼかしコントロール」は、1回の撮影につきピント位置を変えながら複数回(2回または3回)シャッターを切り、ピントの合った主要被写体とボケた背景を合成して1枚の写真を作ります。
iPhoneの場合には、後からボケ量を調整できます。これは、マルチショットが残っているか、類似の情報が保存されているためと推測しています。
「ぼかしコントロール」は、Jpegで、保存され、後で、ボケ量は調整できません。
4)まとめ
現在、フジフィルムは、コンデジをつくっていませんので、「ぼかしコントロール」を搭載したカメラはありません。
パナソニックも、一番の入門機以外には、「背景コントロールの(ぼかし)」は搭載しえいません。
状況証拠をみると、シーンモードについては、日本のカメラメーカーはアップルのiPhoneに完敗して、改良を放棄してしまったように見えます。
5)雪柳
写真1は、50mmF2.8で撮影しています。手前の雪柳の一部がボケてしまっています。
目標は、主題はくっきり、背景はボケることです。
写真2は、60㎜F4で撮影しています。ぎりぎり、目標を達成できています。
写真3も、60㎜F4で撮影しています。ここでは、主題の一部がボケています。
写真4から写真5は、フジフィルムのコンデジXQ2で撮影しています。
画角は望遠端です。
写真4は、「ぼかしコントロール」なしです。
写真5と写真6は、「ぼかしコントロール」をかけています。
「主題はくっきり、背景はボケる」には、「ぼかしコントロール」は、使える可能性があります。
クロップセンサーのミラーレスカメラでも、雪柳の場合には、「主題はくっきり、背景はボケる」写真は難しいです。
残念ながら、画像のJpegです。また、「ぼかしコントロール」は、APS-Cには、搭載されなかったようです。
「ぼかしコントロール」を、APS-Cで使ってみたくなります。
XQ2は、X-TransCMOSの2/3型(1200万画素)センサー、位相差方式のAF、400%の拡張ダイナミックレンジを搭載しています。
コンデジとしては、ほぼ、完成形ですが、ソフトウェアで、iPhoneに勝てなかったのだろうと思われます。
実際に使ってみると、発売当時、「世界最速0.06秒のAF」がセールスポイントでしたが、AFは迷いますし、精度が高くありません。
フジフィルムのXQ2の発売当時のミラーレスカメラのオートフォーカス精度はあまり高くありません。
最近は改良されていると思いますが。
ちょっとがっかりしたのは、マウントアダプターを付けて、マニュアルフォーカスで使った場合でも、ピーキングの精度が低いので、ピンボケがかなり出ます。
日本のカメラメーカーが、フルサイズセンサーにばかりこだわるのは、「ソフトウェアで、iPhoneに勝てなかった」ことを認めたくないからかもしれません。
それが、「ぼかしコントロール」のようなマルチショット処理の放棄になっているのであれば、残念に思います。
ソフトウェアの性能が良ければ、iPhoneで、フルサイズセンサーのカメラでは、撮影できないようなきれいなボケの写真を撮ることができます。
その理由は簡単で、ソフトウェアが、上手に画像認識すれば、主題と背景、近景、中景、遠景と言うように、画像の部分ごとの意味に対応した処理が可能だからです。
人が犬と並んでいる写真で、人の肌を綺麗にして、犬の毛並みをよくした写真も作れます。
実は、筆者が、darktableでRAW現像している理由は、主題と背景、近景、中景、遠景と言うように、画像の部分ごとの意味に対応した処理が可能だからです。
効率性を優先するプロのカメラマンは、Jpegしか使いません。RAWは、あくまでJpegに問題があった場合のバックアップでしかありません。
ここのところ「ETTRとHDR 」を調べていますが、本当のところRAWだけを使っている人は少ないと思いました。
今から考えれば、レンズの性能改善の代わりに、デジタル画像処理を使ったパナソニックのLUMIX DMC-G1(2008年)が、変曲点だったと思います。