(入門ミラーレスカメラというジャンルがなくなりそうです)
1)世界の一眼カメラ市場
2022年8月の四季報によれば以下の通りです。
表1 2021年のミラーレス世界シェア(生産台数)
ミラーレス
ソニー 140万台
キヤノン 117万台
富士フイルム 40万台
ニコン 29万台
OM 20万台
パナソニック 18万台
一眼レフ
キヤノン 157万台
ニコン 44万台
リコー(ペンタックス) 1万台
キヤノンは、一眼レフを生産していますが、ニコンは、一眼レフの生産を縮小しました。
海外の特に報道関係では、カメラの信頼性を重視するので、いまだに、一眼レフの人気があります。
2)カメラの国内市場
2-1)コンパクトデジタルカメラ
2021年に、コンパクトデジタルカメラは新製品の数が極端に減っており、ニコン、キヤノン、ソニーといったメーカーから一般的なモデルが登場しなかった。2021年に発売になったのは10モデルを切るという状況になっている。
2022年は中途なので、集計はありませんが、kakaku.comのコンパクトデジタルカメラのランキング(1万円未満のトイカメラを除く)から、2022年の新製品を見ると、次の5機種しかありませんでした。
パナソニック DC-TX2D(1インチセンサーの高倍率ズーム)
SONY VLOGCAM ZV-1F(動画用)
FUJIFILM X100V(単焦点の高価なクラシックカメラ)
RICOH WG-80(防水耐圧)
RICOH THETA X(360度)
この中で、一般的なモデルは、パナソニック DC-TX2Dだけです。
コンパクトデジタルカメラの市場はなくなってしまったように見えます。
2ー2)レンズ交換式カメラ
既に、2020年時点のミラーレス市場で、販売台数構成では10万円以上の商品が約36%を占め、高価格品が主力となり、6万円台までのゾーンは「高機能になったスマホのカメラ」に侵食された傾向が見られています。
カメラが趣味の人は、kakaku.comなどの売れ筋ランキングをチェックしていると思いますが、一般的な市場を見るには、BCNランキングの方がよいと思います。
表2は、BCNランキングの2022年10月分のミラーレス一眼の実売台数です。
フルサイズセンサーのカメラは、7位のEOS RPだけで、あとは、APS-Cかm4/3です。
表3は、11月の第1週分です。
ちなみに、2022年のカメラは、IC不足で、入荷待ちの機種が多く、予約受付を停止した機種もあります。そのバイアスの影響は大きいです。
表2 「BCNランキング」2022年10月1日から10月31日の日次集計データ(ミラーレス一眼の実売台数)
1位 VLOGCAM ZV-E10 パワーズームレンズキット ブラック(ソニー)8.9万円
2位 EOS R10・RF-S18-150 F3.5-6.3 IS STM レンズキット(キヤノン)18万 (APS-C)
3位 EOS Kiss M2 ダブルズームキット ホワイト(キヤノン)12.7万
4位 α6400 ダブルズームレンズキット ブラック ILCE-6400Y(B)(ソニー)14.3万円
5位 OLYMPUS PEN E-PL10 EZ ダブルズームキット ホワイト (OMデジタルソリューションズ)7.7万円
6位 EOS Kiss M2 ダブルズームキット ブラック(キヤノン) 12.7万円
7位 EOS RP・RF24-105 F4-7.1 IS STM レンズキット(キヤノン)17.6万円
8位 α6400 ダブルズームレンズキット シルバー ILCE-6400Y(S)(ソニー)14.3万円
9位 EOS M6 MarkII EF-M18-150IS STM レンズキット シルバー 16.5万円
(キヤノン)
10位 VLOGCAM ZV-E10 パワーズームレンズキット ホワイト(ソニー)8.9万円
表3 「BCNランキング」2022年10月31日から11月6日の日次集計データ(ミラーレス一眼の実売台数)
1位 VLOGCAM ZV-E10 パワーズームレンズキット ブラック(ソニー)
2位 EOS R10・RF-S18-150 IS STM レンズキット(キヤノン)
3位 α6400 ダブルズームレンズキット ブラック
ILCE-6400Y(B)(ソニー)
4位 OLYMPUS PEN E-PL10 EZ ダブルズームキット ホワイト
(OMデジタルソリューションズ)
5位 EOS Kiss M2 ダブルズームキット ブラック(キヤノン)
6位 EOS Kiss M2 ダブルズームキット ホワイト(キヤノン)
7位 VLOGCAM ZV-E10 パワーズームレンズキット ホワイト(ソニー)
8位 Z 50 ダブルズームキット(ニコン)14.8万円
9位 FUJIFILM X-S10 ダブルズームレンズキット F X-S10LK-1545/50230(富士フイルム)16.5万円
10位 EOS RP・RF24-105 IS STM レンズキット(キヤノン)
2-3)入門カメラの生産終了
表2と表3に見るように、キャノンの売り上げにはKIssMの数が大きく含まれてます
キヤノンは、2022年6月に、EOS R7、2022年7月に、EOS R10を発売しています。
この2機種は、フルサイズ規格のRFマウントの初めてのAPS-Cセンサーのカメラです。
2機種の発売に合わせて、次の2種類のRFマウント用のAPS-C用のレンズを発売しています。
RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM 4.2万円
RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM 6.1万円
MTFを見ると、RF-S18-45mmは、EF-M15-45mm (F3.5-6.3 IS STM 2.7万円)より、性能は少し良さそうです。たぶん、価格の差程度だと思われます。
単品では4万円弱と高価ですが、EOS R10のキットレンズとして購入すると1.5万円程度で購入することが出来ます。
4万円だすなら、シグマの18-50mm F2.8 DC DNのRFマウントの発売をまった方が良さそうです。
MTFを見ると、RF-S18-150mmは、EF-M18-150mm(F3.5-6.3 IS STM 6.7万円)と同じ形をしています。また、レンズ構成も同じと思われます。手ブレ補正効果は、EF-Mの4.0段分 が、RF-Sでは、7.0段分に改善されています。
RFマウントのフランジバックが20mmで、EF-Mマウントのフランジバックが18mmなので、EF-MマウントのレンズをRF-Sマウントにつけることはできません。
APS-CのRFマウントカメラとレンズが出ましたので、EF-Mマウントを継続する理由はなくなっています。
2022年11月時点で、RF-Sマウントのレンズは2本しか出ていませんが、RF-S18-150mmのように、EF-Mマウントのレンズを手直しして、RF-Sマウントにするのであれば、近い将来に、EF-Mマウントと同じレベルのRF-Sマウントレンズがそろうはずです。
しかし、現時点では、そろっていません。
表2を見るとEF-Mマウントのカメラが3位、6位、9位にはいっています。
キヤノンのHPをみると、一眼レフのkissとEF-Mのkisss Mは入門用機材に、EOS R7とEOS R10は中級機材に分類されています。
2022年10月末に、キヤノンEOS Kiss M2は「EOS Kiss M2 ダブルズームキット」以外のボディもキットも販売終了になっています。
EOS M6 Mark IIとEOS M200はその前に販売終了となっています。
キヤノンショップで現在販売しているエントリーモデルは、一眼レフのEOS Kiss X10i、EOS Kiss X10、EOS Kiss X90の3機種のみで、EF-Mマウントはなくなっています。
EFーMマウントは、在庫一掃の様相です。
これは、かってのNikon1マウントを思い出させます。
2022年11月には、オリンパス「PEN E-PL10」の各種キットが、ホワイトのダブルズームキットを除いて完了商品となり販売を終了しています。
ここで、表2を再度みてください。
10万円以下のカメラは、次の通りです。
1位と10位 VLOGCAM ZV-E10
5位 OLYMPUS PEN E-PL10 EZ ダブルズームキット ホワイト
VLOGCAM ZV-E10 は動画用のカメラですから、静止画の撮影には向きません。
そうすると、10万円以下の静止画用のカメラはなくなります。
15万円以下のカメラは、次の通りです。
3位と6位 EOS Kiss M2 ダブルズームキット
4位と8位 α6400 ダブルズームレンズキット
Kiss M2がなくなると、α6400 ダブルズームレンズキット(14.3万円)が唯一の選択になります。
CANON EOS R10 RF-S18-45 IS STM レンズキットであれば、14.9万円ですが、ダブルズームではありません。将来、ダブルズームが出た場合には、EOS R10・RF-S18-150 F3.5-6.3 IS STM レンズキット(18万)に近い価格になりますので、キヤノンの言うように、中級機になります。
3)まとめ
EF-Mマウントがなくなり、RFマウントに統一されるのは時代の流れと思われます。
EF-Mマウントのkiss Mは大量に売れましたので、販売終了になっても、故障等の場合でも、中古市場で対応可能でしょう。
問題は、入門ミラーレスカメラ市場がどうなるかです。
コンパクトデジタルカメラの市場がなくなったように、入門ミラーレスカメラ市場がなくなっていると見るべきかも知れません。
ニコンは、シェアをとることはやめて、利益優先に切り替えています。その結果、国内のミラーレスカメラのシェアは、パナソニック以下に落ちています。
シェア自体には、ブランドイメージ以上に大きな意味はありませんが、出荷台数は、量産効果をだして、コストパフォーマンスを上げるためには、必須の条件です。富士フィルムとニコンは、このメリットをねらっていないように見えます。
2010年頃までは、毎年、センサーの性能が大きく上がっていて、買い替え需要がありました。
筆者は、現在も、2010年頃に制作されたレンズ交換式カメラを使っています。
自動焦点の性能は、悪いですが、フィルム時代には、マニュアルでピントを合わせていましたので、動くものを撮影しなければ、大きな障害にはなりません。
一方で、レンズ性能の向上には目を見張るものがあります。フィルムカメラ時代には、銘玉と呼ばれるレンズがありましたが、古いレンズが新しいレンズに勝ることは少なくなっています。
マウントを変えて、古いマウントのカメラとレンズを製造終了にすれば、ユーザーは、カメラとレンズを買い替えるしかありません。キヤノンのEFーMマウントの場合、マウントの乗り換えの時に、ユーザーが他のメーカーに流れるリスクは少ないと判断していると思われます。
一見すると、15万円以下の入門ミラーレスをソニーは出しているように見えますが、ソニーの場合、APS-C用のレンズのラインアップは少ないので、参考にはなりません。
オリンパスが、カメラ部門を切り離したときには、オリンパスのカメラがなくなっても、m4/3には、パナソニックがあるから、当分は使い続けられるといった人がいました。
オリンパスの売り上げが、V字回復しているとはいえませんが、カメラとレンズの新製品をみれば、それなりに、活発な企業活動を続けていて、パナソニックの方が元気がないように見えます。
製造終了になったオリンパスの入門機PEN E-PL10 は、2019年11月発売の製品で、3年間同じモデルを販売したことになります。
パナソニックの入門機DC-GF10/GF90は、2019年 6月発売の製品で、2022年10月に販売終了しています。
小型軽量なマイクロフォーサーズはPEN E-P7のみになりました。
PEN E-P7(8,8万円、ダブルズームキット10.6万円)は2ダイアルで、仕様としては、中級機です。E-PL10 (ダブルズームキット6.6万円)DC-GF10/GF90(LUMIX DC-GF10W ダブルレンズキット6.2万円)よりは、少し高くなります。
100g重いOM-D E-M10 Mark IV EZダブルズームキットの方が、PEN E-P7ダブルズームキットより安いので、小型のデザインにこだわらなければ、PEN E-P7を選ぶ理由はありません。
各イベントは、バラバラに起こっているので、時間がたたないと、全体像は見えませんが、コンパクトデジタルカメラ市場がなくなった延長で、ミラーレス市場にも大きな変化が起こっていると思われます。
引用文献
ニコン ミラーレスシェア パナソニックに続く5位に転落の衝撃 2022.07/31
https://mirrorless-camera.info/market/18890.html
パナソニック、カメラ事業正念場 動画配信に活路 2022/01/11 日経新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC064YI0W2A100C2000000/
カメラ業界の動向や現状、ランキングなど 2022/08/23 業界新聞
https://gyokai-search.com/3-camera.html
今売れてるミラーレス一眼TOP10、富士フイルム「FUJIFILM X-S10」が4週ぶりTOP10入り 2022/11/16 BCN+R
https://www.bcnretail.com/research/detail/20221116_304279.html
10月に売れたミラーレス一眼TOP10、ソニー「VLOGCAM ZV-E10」が4か月連続首位 2022/11/10 BCN+R
https://www.bcnretail.com/research/detail/20221110_303525.html
RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビュー完全版 2002/10/30
https://asobinet.com/full-review-rf-s18-45mm-f4-5-6-3-is-stm/