darktableの色収差補正の留意事項

1)darktableの色収差の基本知識

 

色収差補正については、カメラ内のRAW作成時の補正できるカメラと補正しないカメラで対応が異なります。

 

これは、darktableの問題ではないのですが、最終画像に大きく影響します。

 

この点に気付いたきっかけは、yasuo_ssi氏の記事「色収差補正 Raw現像ソフト間比較 / Nikon NX Studio, darktable, RawTherapee, Luminar3」を見たからです。

 

yasuo_ssi氏はD5500を使っています。

 

yasuo_ssi氏は、darktableを次のように評価しています。

 

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darktableでもだいぶスッキリしましたが、NX Studioのようにはっきりくっきりとまでは行きません。darktableで掛けたモジュールはchoromatic aberrations (色収差補正), lens correction (レンズ補正), defringe (にじみ削除), sharpen (シャープ化)を掛けましたが、一番効果が大きかったのは、lens correctionです。レンズのプロファイルに従って補正を掛けるというのが非常に大きいようです。

 

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最初に、混乱を避けるために、darktableのモジュールを整理しておきます。

 

darktable3.6の大きな改善点に、色収差 chromatic aberrationsがあります。

 

ここでは、古い色収差モジュールの名称変更

 

色収差chromatic aberrations=>raw色収差 raw chromatic aberrations

 

と新しい色収差 chromatic aberrationsモジュールの追加が行われています。

 

つまり、darktable3.6未満の記事と3.6以降の記事では、「色収差chromatic aberrations」モジュールは、別のモジュールを指します。

 

pixls.usによれば、「実際には、TCA オーバーライド (レンズ補正) と色収差 (補正モードの調整) が最も有用であり、通常はraw色収差 モジュールを無視します。また、デモザイキング前に動作するため、マスクはできません。また、微調整が少ない」と言われています。

 

ただし、場合によっては、raw色収差が有効です。

 

2)カメラ内色収差

 

2-1)ニコン

 

D5500は、カメラ内では、歪曲収差の補正のみで、色収差補正には対応していません。

Zマウントのカメラは、カメラ内色収差補正に対応しています。

 

2-2)キャノン

 

手持ちのKiss Mの例を載せます。

 

写真1は、マウントアダプターをつけて、1987年発売の古いEFレンズを装着しています。レンズ補正データがあり、色収差は補正されています。

 

写真2は、シグマ製のレンズです。レンズ補正データがありますので、このシグマ製レンズは、キヤノンの公認の上で発売されていることがわかります。

 

初代のEOS Mマニュアルを見ても、同等の補正機能がありました。

つまり、EF-Mマウントは最初から、レンズの光学補正をカメラで行う前提で設計されていたことがわかります。

 

後発のRFマウントでも、レンズの光学補正をカメラで行う前提で設計されていると思われます。

 

RFマウントのLレンズでは、人口蛍石は使われていません。代わりにUDレンズが使われていますが、デジタルで、色収差補正をするのであれば、UDレンズの役割は小さいはずです。



写真1 EFマウントレンズ




写真2 シグマ製レンズ 





 

 

2-3)オリンパス

 

マイクロフォーサーズ(MFT)システム採用第1号機は、2008年10月31日にパナソニックから発売されたLUMIX DMC-G1です。

 

LUMIX DMC-G1は、最初に、カメラ側で色収差補正、歪曲収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲などをデジタル処理で補正しています。

 

当時は批判的な意見が多かったと言われていますが、2023年の状況を見れば、DMC-G1には、先見性があったと言えます。

 

パナソニックのMFTカメラは全機種に、自社だけでなく、オリンパスのレンズを含めたレンズ補正を搭載しています。

 

オリンパスの対応は遅れていて、オリンパスがレンズ補正を正式に発表したのは、2013年9月10日のE-M1のTruePicⅦからです。

 

 「TruePicの進化」は、「E-M1以降のレンズは、レンズ側に特性情報が登録されることになり、ボディー側からレンズ内の特性情報を参照するようになっている。個人的な使用感では、シグマ3兄弟(19mmF2.8DN、30mmF2.8DN、60mmF2.8DN)の特性情報もE-M1は持っているのではないか、とも思う」といいます。

 

つまり、キャノンのように、シグマのレンズにも公式に対応している可能性が高いと推測しています。

 

3)まとめ

 

なお、OMシステムの入門機のE-PL10とE-P7の画像処理エンジンは、最新のTruePicXの2世代前のTruePicⅧ(2016年9月20日のE-M1markⅡから)にとどまっています。

 

一方、パナソニックのヴィーナスエンジンは、カタログには、バージョン番号がついていないので、違を確認しづらいですが、最新機種では、初めて位相差オートフォーカスに対応していますので、新バージョンが出ているはずです。

 

カメラ内レンズ補正の性能が上がれば、センサー性能が向上しなくとも、カメラを買い替える価値があると思われます。

 

色収差補正などのレンズ補正をレンズではなく、カメラ内処理で行うと、レンズにコストをかける必要がなくなりますが、その負担は、カメラ内処理が担う訳で、カメラのソフトウェアと画僧処理プロセッサの性能がキーになります。つまり、入門機でも、カメラのソフトウェアと画僧処理プロセッサの性能が良ければ、古い高級レンズや高級カメラを凌駕することが可能になります。ソフトウェアと画僧処理プロセッサは量産効果で価格が下がりますので、数が出れば、入門機に搭載することは可能ですが、どこまでを、入門機に搭載するかは、メーカーの戦略次第です。

 

darktableは、レンズ情報をlens funのデータに依存していますので、対応していないレンズもあります。例えば、KIss M用のEF-M18-150mm F3.5-6.3のレンズ補正データはありません。レンス補正データを自作することは可能ですが、手間がかかります。この場合には、歪曲補正もカメラ内で行う設定にした方がよいと思われます。

 

引用文献



色収差補正 Raw現像ソフト間比較 / Nikon NX Studio, darktable, RawTherapee, Luminar3 2021/08/22 yasuo_ssi

https://yasuo-ssi.hatenablog.com/entry/2021/08/22/000000

 

D5500で撮影した写真を NX Studioを使って印象に近づける 2022/01/27 yasuo_ssi

https://yasuo-ssi.hatenablog.com/entry/2022/01/07/000000



darktable TCA correction raw vs not raw 

https://discuss.pixls.us/t/darktable-tca-correction-raw-vs-not-raw/29582

 

 TruePicの進化

http://okachan.blue.coocan.jp/digital/truepic/truepic.html

 

デジタルカメラの収差補正はオンオフができれば無問題  2012

https://hinden563.exblog.jp/19559111/

 

“攻め”の25万円切り、パナから新型フルサイズミラーレス2機種 冷却ファン・6K30p・初の像面位相差AF 2022/01/05 ITmedia 山川晶之

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2301/05/news122.html