無駄な人材を省く

(所得向上の基本はレイオフです)

 

1)高度人材募集

 

政府は、高度人材の就職活動期間を90日から、2年に延長するようです。

 

しかし、政府のこの政策は、効果がないと思われます。

 

その理由は次の2点です。

 

(1)海外との比較

 

香港、シンガポールなどと比べて、競争優位な条件になっているのかという説明がありません。後追いで、同じレベルに揃えているだけのように見えます。

 

(2)因果モデルが無い

 

「高度人材募集」だけでなく、政府の政策の多くには、政策の根拠となる因果モデルがありません。科学的な論理に基づく政策になっていません。

 

2)高度人材が求められない理由

 

いままで、並みの人材10人に、100単位ずつ賃金を支払っていた仕事を、1人でこなす高度人材が現れたとします。この高度人材に、1000単位の賃金を支払ってもトントンです。800単位の賃金に止めれば、200単位だけ利益が増えます。しかし、そうなるのは、並みの人材10人をレイオフした場合だけです。

 

並みの人材10人を雇い続ければ、800単位の賃金を払って高度人材を雇えません。無理をして雇えば、赤字が拡大するだけです。



失業した場合に、職安に行くことがあります。

 

海外であれば、年収4000万円以上は稼げる行動人材が、日本の職安に行けばどうなるでしょうか。

 

日本の職安で聞かれることは、資格をもっていますかという話であって、これでは、非正規の仕事しか見つけることができません。

 

高度人材の就職活動は、主に、ネットを使って行われます。

 

高度人材が集まるネットの活動グループに参加して、実力が認められれば、そこから、話が始まります。

 

「就職活動期間を90日から、2年に延長する」意味は不明です。

 

問題は、高収入のポストがないこと、雇用する側が、高度人材の能力評価が出来ないことです。

 

「就職活動期間を90日から、2年に延長する」ことに意味がある場合は、

 

「日本に高度人材が寄り付かない原因は、就職活動期間が短いことに原因がある」、あるいは、「就職活動期間が長ければ、日本に高度人材が寄り付く」という仮説が正しい場合だけです。

この仮説が正しいと考えるエビデンスを明示する必要があります。

 

科学的な根拠に基づかない間違った政策は、効果をあげることはできません。

 

当たり前ですが、高度人材は、科学教育を受けています。科学的文化で物事を考えます。

 

日本では、科学的文化に基づいた意思決定がなされていないと判断すれば、それだけで、高度人材は、日本には寄り付かなくなります。なぜなら、科学的文化に基づく、まともな給与交渉が出来ないのあれば、危なくて、転職できないことになるからです。

 

3)中国と日本

 

3-1)給与格差

 

2023年1月23日のNewsweekで、周 来友氏は次のようにいっています。(筆者要約)

 

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1987年頃、日本で3日働けば、中国の1カ月分の収入が稼げると言われていた。35年がたち、両国の経済規模は逆転した。

 

大手企業の給与に限って言えば、中国のほうが高いケースさえある。

 

日本の低賃金は日本人にとって切実な問題だが、それだけではない。専門職など「高度人材」の外国人もいなくなり、外国から日本に来るのは観光客と投資家だけになるかもしれない。

 

==>

 

周 来友氏の話は、給与格差です。

 

3-2)製品価格格差

 

次のステップの問題は、製品価格の逆転だと思います。

 

今までは、給与格差と同じように、次の図式がなりたっていました。

 

中国製 安価 性能はほどほど

日本製 高価 性能が良い

 

「大手企業の給与に限って言えば、中国のほうが高い」と同様に、次の図式に変化しつつあります。

 

日本製 安価 性能はほどほど

中国製 高価 性能が良い

 

これは、既に、スマホについては、完全に成立しています。

 

筆者は、ブログに写真をのせていますので、カメラを趣味にしています。

1年半ほど前に、カメラのストロボを購入しました。

 

その時、中国製のストロボの中型が9千円、大型が16千円でした。

 

そのときは、大は小を兼ねると考えて、大型のストロボを購入しました。

 

しかし、大型ストロボは、重くてかさばるので、あまり使っていません。

 

その結果、夜景の写真に失敗が増えたので、最近、今度は、中型の9千円のストロボを購入しうと考えました。

 

円安にもなったので、9千円よりは、値上がりしていると思いました。

 

読者は、9千円がいくらになったと思いますか。

 

東電は電気代を3割上げます。3割程度は、覚悟していました。

 

実際には、価格は27千円で、3倍になっていました。

 

1年半で3倍ですから、ムーアの法則より、大きな加速度です。

 

今後は、スマホと同じように、中国製(高価で高性能)、日本製(安価で低性能)になる製品が続出すると思われます。

 

中国は、香港と同じレベルトと考えると、高度人材には、4000万円以上の給与をはらっています。

 

それが、「大手企業の給与に限って言えば、中国のほうが高い」という話です。

 

もちろん、高度人材に高い給与を支払えるのは、並みの人材をレイオフをするからです。

 

「ロボット指数」では、2021年時点では、まだ、日本の方が中国より高いですが、ロボットの絶対数は、日本の10倍以上あります。

 

ロボット指数や、「高価で、性能が良い」製品の割合を考える場合には、絶対するよりも、増加率(時間微分)の方がはるかに重要です。

 

時間微分で見る限り、日本は、中国の高所得グループにかないません。

 

2022年には、日本の1人あたり、GDPは、台湾、韓国と並びました。

 

時間微分でみれば、2023年には逆転します。(注1)

 

スノーの言い方を踏襲すれば、人文的文化は、雨ごいと同じレベルで、検証がなされません。人文的文化の仮説の半分以上(恐らく8割以上)は、科学的文化の検証をへれば、誤りです。

 

マスコミに出てくる人文的文化の有識者の発言は、次の特徴をもっています。

 

(1)エビデンスを示さない。検証しない。

 

(2)99%はあり得ない1原因1結果モデルを主張している。

 

つまり、人文的文化の有識者の発言は、有識者のポストの権威にのっているだけで、科学的文化からみれば、概ね間違いです。

 

政府の高度人材募集は、検証された、因果モデルはなく、雨ごいと同じレベルの論理です。

 

筆者の「売り上げが減少する状態では、レイオフしないで、労働生産性を上げられない」という主張は、仮説です。エビデンスに基づいて検証されていません。

 

しかし、仮説はレイオフできる特区などを設けて、ABテスト(比較試験)をすれば、検証可能です。

 

同様に、政府の政策は、実施前にABテストをすれば、誤りの確率を劇的に減らすことができます。

 

科学的文化に基づかない、雨ごい政策を繰り返せば、発展途上国からもとに戻れる可能性はありません。

 

注1:

 

数学の理解できない人に数学の有益性を説明することはできません。

 

微分積分の概念なしに、時間変動する量を認識することは不可能です。

 

これが、スノーの二つの文化のギャップの意味です。

 

引用文献

 

賃上げできない日本からは、外国人も減っていく 2023/01/23 Newsweek 周 来友

https://www.newsweekjapan.jp/tokyoeye/2023/01/post-142.php