5)色収差とレンズ価格
フィルムカメラでは、レンズの歪みは、そのままフィルムの上に焼きつけられました。
デジタルカメラになって、レンズの歪みは画像処理によって補正が可能になりました。
フォーサーズの場合、オリンパスは、レンズ内で補正をし、パナソニックは、カメラ本体で、補正をしたようです。
現在は、カメラ本体で補正することが基本です。
例えば、Canonのkiss M2は、次のようなレンズ光学補正ができます。
レンズ光学補正
周辺光量補正
歪曲収差補正
デジタルレンズオプティマイザ
色収差補正
回折補正
このうち、歪曲収差補正以外は、デフォルトでONになっています。
歪曲収差補正がデフォルトでOFFになっている理由は、厳密には、画角が変わることと、現像ソフトでの補正が容易なためと思われます。
なお、レンズ光学補正は、Jpegだけでなく、RAWでも有効です。
レンズ光学補正の最大の課題は、色収差補正です。
色収差が小さいレンズとしては、人工蛍石が知られており、キヤノンは、EFマウントの最高級のLレンズに人工蛍石を使っていました。
その後、蛍石に代る異常分散レンズ(特殊低分散レンズ、英:Extra-low dispersion lens 、Extraordinary low dispersion lens )が開発されます。レンズメーカーによりEDレンズ(ニコン、パナソニック)・UDレンズ(キヤノン)・LDレンズ・SDレンズなどと呼称されています。
キヤノンは、新しいRFマウントの最高級のLレンズには、もはや、人工蛍石をつかっていません。UDレンズで十分な性能が得られています。
なお、EDレンズはもはや高級レンズという訳ではなく、パナソニックのキットレンズにも使われています。
LUMIX G X VARIO PZ 14-42mm / F3.5-5.6 28千円
LUMIX G VARIO 12-32mm / F3.5-5.6 ASPH. 23千円
3万円以下のレンズも、EDレンズが使われていますので、昔のキヤノンのLレンズのように、人工蛍石を使っているから高価なレンズであるという原則は通用しません。
とはいえ、EDレンズ使用とEDレンズ未使用を比べれば、まだ、EDレンズ使用のレンズの方が高価に思えます。
さて、ここからが本題です。次の仮説が正しいか否かです。
「新しいカメラは色収差の補正も優秀なので、EDレンズがなくても 解像さえ優秀なら安物レンズで十分な性能がある」
解像の優秀さは、MTFで判断できます。
通常は絞り開放のMFTしか載っていないので、絞った場合がわかりませんが、そこに目をつぶれば、MFTで判断できます。
安物レンズのズームレンズのF値は暗くなりますが、サイズは小型になります。昔のカメラでは、暗いレンズは、光量不足でしたが、デジタルカメラでは、ISOを上げれば、対応可能です。
ズームレンズのF値は所詮暗くなりますので、その分は、単焦点レンズを使うと割り切れば、問題はありません。ボケも、単焦点に任せると割り切ります。
実は、最近、カメラやレンズの撮影事例を見て考えてしまいました。
作例とコメントがかなり怪しい場合が多いのです。
MTFにも問題がありますが、作例とコメントよりは、MTFの方がはるかにあてになる気がしています。
事実上廃止になったキャノンのEF-Mマウントのレンズを見ると、UDレンズは全く使っていませんが、安価で、MTFは悪くありません。
MTFが一番悪いレンズは、中央解像度だけが突出してよい「EF-M22mm F2 ST」です。このレンズは、絞って解像度をあげて使わないと、メリットがなさそうです。ただし、そうすると、F2の明るさが生きてこなくなります。とはいえ、EF-S24mm F2.8 STMが兄弟レンズなので、F2.8まで絞って使うのが基本と思います。
EF-Mマウントのレンズは、色収差をデジタル補正することを原則に設計されていると思われます。レンズが小型なので、単焦点を除いては、F値がとても暗くなります。一方、色収差が特に気になることはありません。
プロのカメラマンは、失敗が許されないので、20-70mmF2.8のような明るいズームレンズを使います。これで、何でも80点以上の写真が撮影できます。レンズとカメラは大きくて重いです。出来上がる写真は、平均点の高い写真になりますが、尖った写真にはなりません。
なお、筆者は、オリンパスのPL-6に、パナソニックのLUMIX G VARIO 12-32mm / F3.5-5.6 ASPHをつけて撮影することがあります。実は、OLYMPUSのミラーレスカメラでパナソニックのレンズ用の色収差補正が付いているカメラは、E-M10、E-PL7からです。
つまり、E-PL6では、12-32mmの色収差は補正されないようです。今のところ、色収差が気になったことはありませんので、12-32mmにEDレンズを使っている効果は十分出ていると思われます。
こうした複雑な組合せまでは、darktableは対応していないと思いますので、RAWのレベルで、色収差補正が可能であれば、使うべきと考えます。
引用文献