レンズの価格(3)

2)富士フィルムのレンズ戦略の変更

 

前回は、バリューアングルというあてにならない指標を取り上げました。

 

あてにならないというのは次の点です。

 

(1)フランジバックは、レンズの出っ張りを考慮していないので、不正確です。

 

(2)バリューアングルは、「口径ーセンサー対角」でほぼ決まってしまいます。

 

これをみれば、バリューアングルは、お馬鹿な指標であることがわかります。

 

大きな空き箱のカメラ程性能がよいことになるからです。



図1 バリューアング(Y)と「口径ーセンサー対角」(X)




 

 

とはいえ、ASP-Cとフルサイズを販売しているカメラメーカーは、フルサイズを販売するために、ASP-C用のレンズのライナップを制限します。つまり、レンズを選べないのです。

 

例えば、新製品が出なくなって事実上廃止になったキヤノンのEFーMフォーマットのレンズで、F2.0以下の単焦点レンズは、純正が2本、シグマ製が3本しかありません。

 

ニコンは、2010年頃までは、ASP-C中心の製品戦略をとっていて、プロのカメラマンでも、APS-Cニコンのカメラを使っていた人が多くいましたが、その後、フルサイズ中心になりました。次にZマウントになってからは、いっそう、フルサイズ中心のライナップになっています。

 

もっとも、フィルムカメラの解像度はデジタルカメラの800万画素程度と言われており、2010年頃に、ニコンは、フィルム用の膨大なFマウントのレンズが解像度から使えなくなると判断して販売戦略を変更したとも考えられます。

 

ともかく、小型のミラーレスを使いたい筆者のようなユーザーには、富士のXマウントとMFTしか選択肢がありません。ここで、小型というのはレンズを含めて、出来れば、片手で撮影できるという条件です。これは、室外で、カメラを持ち歩くためには、必須の条件だと考えています。

 

MFTの先行きが怪しいので、MFTがなくなったら、Xマウントしか残されていません。

 

Xマウントのレンズは、ロイヤリティの高いユーザーが多くいます。

 

富士フイルムのカメラは、フィルムシミュレーションで売り込んでいますが、Jpegには未来はありませんので、これは全くナンセンスです。筆者は、RAWのみで撮影します。フォーカス合成など、一部の機能は、Jpegにしか対応していない場合があり、その場合は、やむをえずJpegを使いますが、早く、RAWに対応して欲しいと思っています。



筆者は、フィルムシミュレーションは、全く評価しません。デジタルカメラの色合いは、センサーの前につけるカラーフィルタ―の性能に大きく依存します。フジフィルムのカメラは、RAWでもフジフィルムらしい色になります。フジフィルムのカラーフィルタ―の設計は、優れていると思います。

 

また、フルサイズに比べ、センサーサイズが小さいデメリットは、マルチショットで補うことが可能です。フジフィルムのカメラには、ISOを変えて連射した画像を合成する機能がついていて、これは、RAWファイルを作成します。ISOを変えた連射の速度は速くないので、動いている被写体には使えませんが、ダイナミックレンジが必要とされる場面は、晴天の太陽光が当たっている風景なので、問題はありません。

 

他社のカメラでも、ISOブラケットを使って、現像時に合成すれば、同じことができます。残念ながら、ブラケット撮影画像のコンテナの標準化が全くなされていません。ここは、何とかして欲しいです。ISOブラケットを拡張して、カメラ内で可能な全てのISOで連続撮影すれば、少なくとも、理論上は、NDフィルタ―は不要になります。

 

富士フイルムのカメラは、手振れ防止と自動焦点の性能が劣ります。最近は、性能が改善されてきていますので、様子を見ています。カメラメーカーは、毎年のように性能アップをうたいます。

 

WEBのカメラの記事を書いている人は、ほとんどが、カメラメーカーか、カメラ販売店の利害関係者です。記事は提灯記事で、全くあてにできません。

 

ツイッターに、トンデモ記事を投稿すれば、アカウントを停止されます。

 

この基準でいえば、カメラとレンズの記事は、アカウント停止に近い内容を含んでいます。

 

さて、話を戻します。

 

Xマウントのレンズは、EFーMに比べると種類が多いですが、性能はよいのでしょうか。

 

富士フイルムが「X-H2」の4020万画素センサーを積んできました。

 

2022年9月9日デジカメinfoによれば、次のように、現行35本のレンズのうち、15本が解像度不足であるといっています。

 

なお、実売価格は、kakaku.comを参考に筆者がつけたものです。

 

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公式サイトに掲載されている現行の35本のXF・XCレンズのうち、4020万画素のフル対応に対応するレンズは20本で、15本のレンズがフル対応しないということになりますね。上記のリストに掲載されていない4020万画素にフル対応しない現行レンズは、次のレンズです。

 

a- XF14mmF2.8 R 10.1万円

b- XF16mmF1.4R WR 12.1万円 

c- XF18mmF2 R 7.2万円

d- XF23mmF1.4 R 10.5万円

e- XF35mmF1.4 R  6.5万円

f- XF56mmF1.2 R APD 18.1万円

(※XF56mmF1.2 R 無印はカタログ落ちしています)

g- XF60mmF2.4 R Macro 7.9万円

h- XC35mmF2 4.0万円

i- XF10-24mmF4 R OIS WR 12.0万円

j- XF16-80mmF4R OIS WR 9.4万円

k- XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS 5.7万円

l- XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR 8.5万円

m- XF55-200mmF3.5-4.8 R LM 6.5万円

n- XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ 3.3万円

o- XC50-230mmF4.5-6.7 OIS II 3.7万円

 

フル対応しないレンズは古いレンズが中心ですが、標準ズームのXF16-80mmF4は2019年登場なので比較的新しいレンズですね。また、XF10-24mmF4はマイナーチェンジとは言え2020年にモデルチェンジしたまだ新しいレンズなので、対応しないのは少々残念なところかもしれません。

 

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これから、次のことがわかります。

 

2-1)レンズの性能

 

フジフィルムは、レンズに、分かり易いグレードをつけていませんが、Xマウントのズームレンズに、価格からクレードをつければ次になります。

 

梅レンズ

n- XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ 3.3万円

o- XC50-230mmF4.5-6.7 OIS II 3.7万円

 

竹レンズ

i- XF10-24mmF4 R OIS WR 12.0万円

j- XF16-80mmF4R OIS WR 9.4万円

k- XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS 5.7万円

l- XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR 8.5万円

m- XF55-200mmF3.5-4.8 R LM 6.5万円

 

松レンズ

p-XF16-55mmF2.8 R LM WR 14.7万円

q-XF8-16mmF2.8 R LM WR 24万円

r-XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR  19.2万円



これから、4000万画素対応は、松レンズはOKだが、梅レンズと竹レンズは、解像度不足ということです。

 

他社と比較します。

 

(1)便利ズーム

 

l- XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR 8.5万円

 

キヤノンでは、EOS M6 Mark II 約3250万画素に対して、次がありますが、解像度に問題はありません。

 

EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM 8.1万円

 

筆者は、このレンズをKiss M(約2410万画素)につけて使っていますが、標準ズーム15-45㎜よりはるかによく写るので、15-45㎜は使わなくなりました。

キヤノンであれば、竹レンズで対応しています。

 

(2)標準ズーム

 

梅レンズ

n- XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ 3.3万円

竹レンズ

i- XF10-24mmF4 R OIS WR 12.0万円

j- XF16-80mmF4R OIS WR 9.4万円

k- XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS 5.7万円

 

MFTのキットレンズでは、入門用は、オリンパスより、パナソニックの方が性能が良いです。パナソニックの標準ズームのキットレンズは次です。

 

Lumix G Vario 12-32mm f/3.5-5.6 ASPH MEGA O.I.S. 2.2万円

LUMIX G VARIO 12-60mm / F3.5-5.6 ASPH. / POWER O.I.S. 4.3万円

LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S 8.6万円

 

MFTの上級機は、2000画素です。センサーサイズを考えれば、ASP-Cの3000万画素に相当すると思われますが、解像度の不足はありません。

 

Lumix G Vario 12-32mmは、とても安価ですが、ズームレンジが狭いだけで、G VARIO 12-60mm / F3.5-5.6 ASPHに比べて、解像度が劣っているとは思えません。

 

(3)単焦点レンズ

 

フジフィルムは、個性的な単焦点レンズで、ロイヤリティのある顧客をつかんできました。

しかし、a-gの単焦点レンズをみると、高価な単焦点レンズでも解像度は不足していることがわかります。

 

フジフィルムは、ブランドイメージを作ることに成功しましたが、価格程は解像度性能は高くありません。

 

以上の比較では、APS-Cの3000万画素相当とフジフィルムのAPS-Cの4000万画素の比較ですので、厳密には差があります。

 

とはいえ、フジフィルムは、レンズを解像度ではなく、色のりで差別化してきました。

 

いくら入門用といっても、梅レンズの解像度には、耐えがたいものがあります。

 

Lumix G Vario 12-32mm f/3.5-5.6 ASPH MEGA O.I.S.2.2万円」と比べれば、差は歴然としています。

 

つまり、梅レンズと竹レンズについては、松レンズとの差別化のために解像度をあげなかったと思われます。

 

そう考えると基本的な分析には、問題はないと考えます。

 

2-2)まとめ

 

フジフィルムは、現行35本のレンズのうち、15本が解像度不足であるといいました。この中には、かなり高価なレンズも含まれています。15本のレンズの所有者は、心安らかでなくなります。

 

15本のレンズの所有者のロイヤリティがなくなり、他社の製品に、鞍替えする可能性もあります。

 

例えば、次のレンズの買取価格は、3万円を切っています。

 

j- XF16-80mmF4R OIS WR 9.4万円

 

その理由は、表面的には、XF18-120mmF4 LM PZ WRとシグマ18-50mm F2.8 DC DNが発売されたことです。

 

XF18-120mmF4 LM PZ WR(11.3万円)は解像度不足の、l- XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR(8.5万円)の差し替えと思われます。

 

シグマ18-50mm F2.8 DC DNは、富士フイルムからXマウントの仕様を公開してもらって作っていますので、完全互換です。

 

つまり、フジフィルムは、15本のレンズの所有者のロイヤリティを失うリスクを承知の上で、Xマウントの仕様を公開するようにレンズ戦略を変更したことになります。

 

フジフィルムのカメラ部門は、instax"チェキ" カメラ で黒字ですが、ミラーレスカメラ部門単独では、赤字の可能性が高いです。ミラーレスカメラ部門の黒字化のために、経営戦略を見直した可能性があります。

 

解像度不足の15本のレンズの買取価格は、これから急激に下がります。

 

解像度があっても、シグマ18-50mm F2.8 DC DNのように、競合するレンズが安ければ、買取価格は下がります。

 

 円安の影響か、XF16-55mmF2.8 R LM WRの価格は上がっていますが、今後、買取価格は下がってくる可能性があります。

 

マウント戦略が変われば、レンズの価格は変化します。

 

次回はマウント戦略の変更について考えてみます。