(トップが部下の話を聞く価値があるのは、話が科学的文化の文法にあっているときだけです)
1)科学的文化の文法と部下の話
科学的文化の中心をなすツールは数学です。
人文的文化にはなくて科学的文化にある特徴は数学に支えられた客観性です。
岸田首相は、ご自分で、自分は人の話を良く聞くといっています。
企業で、首相のようなCEOが経営方針をだして、部下が意見をいうことがあります。
例えば、アップルのCEOだったジョブズは、当初、スマホの販売に反対でしたが、部下の意見を受け入れて、スマホの販売に方針転換します。
岸田文雄首相は12月26日、公職選挙法違反(選挙運動員買収)の疑惑がくすぶる秋葉賢也復興相を交代させる可能性を発言しています。
これは、部下の話を聞いた例かもしれません。
しかし、一方では、2023年度予算について、部下の話を聞いて、アップルのスマホのように、計画を変更したという話は聞きません。
なぜ、アップルにできたことが、日本政府ではできないのでしょうか。
筆者は、それは、人文的文化と科学的文化の違いにあると考えます。
アップルは、エンジニアの会社です。経営方針は、科学的文化の文法で書かれます。
スマホを販売するか、販売しないかは、数学の問題をとくようなものです。
CEOが解いた経営問題の答えは、スマホを販売しないというものです。
部下が解いた経営問題の答えは、スマホを販売するというものです。
この2つの解法を比べて、どちらが妥当かという検討をします、
不確実性は、ありますが、正解は、期待される利益の大きな方です。
つまり、数字の大きさの議論になります。
部下が、CEOとが、別の解法を示したからと言って、上司のいうことを聞かないといってとがめられることはありません。
部下が、とがめられる場合は、文法間違いをしたり、計算間違いをした場合です。
こうして、CEOは部下の話を聞くことができます。
2)人文的文化の文法と部下の話
安倍前首相は、忖度に関わったという疑惑がありました。これは、意思決定が、人文的文化で行われたことを示しています。
トップが部下の話を聞くことが忖度であれば、部下の話を聞く価値は減少してしまいます。
話をよく説明することは、科学的文化の文法では、エビデンスを示したのち、意思決定にいたるロジックを説明することになります。
首相が、自らテレビに出演すれば、説明したことになると考えるのは、人文的文化です。
これは、リモートワークはけしからん、会社に出てこいというのと同じです。
こういうと、イーロン・マスク氏が、リモートワークはだめだ、出社しろといった話を思い出すかもしれません。
しかし、マスク氏は、非常に合理的な経営者です。
マスク氏は、ツイッター社の中でも、非常に優秀なコアになる社員は、最初に把握しています。エンジニアは、買収前に、サンプルコードをマスク氏に提出して、テスラのエンジニアがコードを元にエンジニアを評価しています。こうしたコアな社員は、レイオフの対象にはなりませんし、リモートワーク排除の対象にもなっていません。
このコアは社員を除いた写真に対して、レイオフや、リモートワーク排除をちらつかせています。この層は、エンジニアというより、テクニシャンに近いグループです。つまり、科学的文化の文法で話が通じない人には、出社させるべきという発言です。
科学的文化を習得した本当に優秀なエンジニアは、失業しても、直ぐに、再就職できます。獲得するのが、非常に困難な人材です。場合によっては、年収が1億円を越える人もいます。マスク氏は、優秀なエンジニアを手放す気は最初からありません。これは、マスク氏だけでなく、アメリカのIT企業では、一般常識です。
マスク氏は、非常に、身振りの大きな役者ですが、行動の基本的な部分は非常に合理的です。
マスク氏の活動は、科学的文化の文法でみれば、各段不思議な部分は少ないですが、日本のマスコミは人文的文化で、マスク氏の行動を報道するので、マスク氏は誰かと忖度しているような、とんでもない役者になっています。
科学的文化の文法で話が聞けるとよいのですが、誰でも、エンジニアになれないように、科学的文化の文法では、話が通じない人もいます。
11月24日に、米ツイッターを買収した実業家イーロン・マスク氏は、規約違反で停止していたアカウントについて、法律違反や悪質なスパム(迷惑行為)の記録がない限り復活させる「大赦」を来週から行うと表明しています。
日本のマスコミは、問題のある発言にフィルタ―をかければよいと書きますが、この問題は、観点ではありません。科学的文化の文法であれば、信頼スコアなどで、線引きは可能ですが、ユーザーの多くは科学的文化ではなく、人文的文化に属しています。この場合には、利用者に、どうして、自分のアカウントが停止されたのかを納得してもらうことは不可能です。
法律違反や悪質なスパムは、利用者の納得なくとも、アカウントを停止すべきですが、こうした強制をグレーゾーンに持ち込むことには、問題があります。それは、忖度すれば、OKで、反対すれば、NO Goodになってしまう可能性があるからです。