1)ミラーレスカメラの価格
レンズの価格について考えてみます。
最初に、カメラの価格を振り返ります。
10年くらい前には、AS-Cの入門カメラの価格は、5から7万円くらいでした。
2022年の売れ筋のAPS-C以下のセンサーサイズのミラーレスカメラで、BSCランキングのベスト10で、10万円以下は、次の2機種だけです。
(1)VLOGCAM ZV-E10 パワーズームレンズキット ブラック 8.5万円
VLOGCAM ZV-E10 6.9万円+E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS 2.8万円
(2)OLYMPUS PEN E-PL10 EZ ダブルズームキット ホワイト 7.3万円
明らかに、カメラの価格が上がっています。
ベスト10にははいっていませんが、パナソニックの次のカメラは、もう少し安いです。
(3)LUMIX DC-GF10W ダブルレンズキット 5.8万円
(2)と(3)は製造終了で、現在売れているのは、流通在庫だけです。
2022年には、1ドル140円近くになりましたので、円安の影響かと思いましたが、この価格は2021年と大きく変わっていません。
10年くらい前の円ドルレートは120円だったこともあり、カメラの価格があがったのは、円安のためではなさそうです。
カメラの価格は、新製品が出ると、40%引きになります。
これから、原価率は、50%以下になると思われます。
交換レンズの原価は、次の3つと思われます。
設計費+組み立て加工費+原材料費
ガラスレンズの時代には、良いレンズは、大きなガラスの塊から、歪みの少ない部分を職人が磨きだすので、材料費と加工費がかかりました。
現在は、プラスチックのモールドレンズなので、この2つは安いはずです。
設計も以前は、設計者の腕がものをいいましたが、現在の光学設計ソフトは進歩しているので、初心者でも良いレンズが設計できます。
さて、以上の仮説が正しいとすると、センサーサイズやレンズの大きさによって生じるレンズの原価の差は、あまりないと思われます。
キャノンのKiss Mのように、カメラとレンズが大量に売れる場合には、設計費はほぼ、ゼロになっていると思われます。予定販売本数が少なければ、高めの価格設定になるのはやむをえません。
MFT曲線をみれば、10年以上まえのレンズの特性は劣っていて、過去に高価で発売されたレンズも、最近の安価なレンズに比べて、負けている面があります。
一部のメーカーは、日本製のレンズを、海外での組み立てに移行しています。そのことは、問題はありませんが、原価が下がっても、同じ価格で売るのは、問題があります。
西陣の和服は、日本製のときは、100万円以上しました。これをベトナムなど海外製にうつした結果、原価は非常に小さくなりました。けれども、利益率を優先して、価格を据え置いたため、誰も買わなくなりました。
スーツなどは、海外製品が増えて、価格破壊が起こりましたので、価格を変えなければ売れなくなります。
家電製品も、安価で良い製品に背を向けて、高付加価値路線に走った結果、世界市場では、日本の家電は売れなくなり、家電メーカーは消滅しました。
現在、日本の工業製品で、輸出競争力のあるのは、カメラと自動車くらいしかありません。
カメラと交換レンズの価格は上がりつづけています。
筆者には、カメラとレンズは、家電製品の誤りを繰りかえしているように見えます。
こうした視点で、交換レンズの本当の原価について、考えてみたいと思います。