レジームシフトとABテスト

(レジームシフト対策には、ABテストが有効です)

 

1)レジームシフト

 

前回、「課題を並べて、課題ごとに、大盤振る舞いで、補正予算をつけ」ても、成果が出ているとは思われないと書きました。

 

これを、ヒストリー(過去に起こった事実)と事実から求めた法則で整理すれば、以下になります。



(1a)ヒストリー:課題を並べて、課題ごとに予算をつければ成果がでる。

 

(1b)ヒストリー:課題を並べて、課題ごとに予算をつけても成果がでない。

 

(2a)法則:公共事業と補助金には産業振興(経済成長)の効果がある。

 

(2b)法則:公共事業と補助金には産業振興(経済成功)の効果はない。



(1a)と(2a)は、1990年までの日本です。

 

(1b)と(2b)は、1990年以降の日本です。

 

1990年までの日本では、国家予算が産業振興に結びついて、経済成長を達成していました。

 

新幹線と高速道路は、産業振興に役立ちました。

 

特定の産業に、資金を集中する傾斜配分方式は、ある程度は効果があったと見られています。

 

以上では、期間を1990年前後で2分しています。

 

経済政策としては、バブルの負債の補填に、10年程度かかっていますので、2分法は、あまりに乱暴と思われます。

 

しかし、経済成長したか否かという結果に注目すれば、2分法が成り立ちます。

 

公共事業と補助金をA1、経済成長をBとすれば、法則は、次のようになります。

 

If A1 then B

 

Bの経済成長は、1990年までは、プラスでしたが、1990年以降は、ほぼゼロになっています。

 

A1の公共事業と補助金の予算額には年変動がありますが、中期的にみれば、より小さな政府やより大きな政府をめざすことはなく、大きく変化していません。



Bの値で分ければ、法則が2つ求まったことになります。

 

(B>0)の法則と(B=0)の法則です。

 

どちらの場合も、A1の値には大きな違いはありません。

 

次に、メタ問題を考えて、2つの法則を1本化します。

 

この問題のメタ問題は、次になります。

 

If (A1 and A2) then B

 

ここに、A2はレジームシフトの内容が入ります。

 

その内容は、インターネットの普及、中国の世界市場への参入、ソ連の崩壊と東欧の市場経済への参入などです。

 

メタ問題で考えれば、A2のレジームシフトに対応して、A1を変化させないと、(B>0)が実現できないことになります。

 

ジームシフトが、インターネットの普及程度であれば、A2を分析して、A1を変化させることで(B>0)が期待できます。

 

しかし、クラウド、AI等、最近のレジームの変化は急速です。

 

デジタル社会へのレジームシフトに対応するのは、容易ではありません。

 

2)ABテスト

 

ABテストは、統計学では、厳密さより、簡便さと実用性を優先した手法であり、バイアスがあります。そのことは、前提として、理解しておく必要があります。

 

ABテストは、A2の分析をしないで、A1を変化させる手法です。

 

 SHEIN(シーイン)は、売れ筋のデザインを決めるために、常に膨大な数のABテストをおこなっていることが知られています。

 

ツイッターイーロン・マスク氏は、ネット投票の結果から、永久停止となっていたトランプ前大統領のアカウントを復活させています。

 

これも、ABテストの一種です。

 

ジームが急速に変化する場合には、どの対策(デザイン)が有効かを事前に判断することは困難です。

 

 SHEINの場合には、色、形、素材、価格の異なる2種類のデザインの試験サンプルを販売して、その結果を集約して販売するデザインを決めます。ABテストはサンプルの試験販売の結果を集約しています。

 

筆者は、イーロン・マスク氏は将来のツイッターについて同様のことを考えていると予測しています。

 

日本の政治が、科学的文化に基づくのであれば、ツイッターは政治を変える可能性があります。

 

サンプルの試験販売は、世論調査とは違います。政策で言えば、実際に、試験的に行った結果をフィードバックして、本体の政策を決める方法です。

 

世論調査や、国会での討議をみていると、あまりのギャップに気が遠くなります。

 

スノーのいった科学的文化と人文的文化の間のギャップを前提にすべきだと思います。

 

科学的文化であれば、政策についてもABテストを行えばよいことになります。国会では、ABテストに何を入れるかを検討すれば良い訳です。

 

ABテストの比較ケースは、絞り込む必要はありませんので、与党の提案だけでなく、野党の提案もテストケースに入れればよいことになります。

 

ここで注意しなければならないことは、データの回収と評価を迅速に行えるシステムがないと、ABテストは有効に行なえないということです。

 

日本のメーカーでも、全国販売するまえに、特定の市町村で試験販売をすることがありますが、そのレベルのABテストでは、情報量が少なく、速度がおそ過ぎて使いものになりません。

 

CACAOでも、マイナンバーカードでも、ABテストを行わないで、直ぐに本番に入りますので、実施前から失敗がわかっているとも言えます。

 

なお、日本の政治システムが中央集権で、地方自治体に裁量権がないことが、ABテストを困難にしています。現状では、ABテスト特区をつくるしか、対策が思い浮かびません。