日本への食料供給の課題~プランBの検討

(安定した食料供給のためには、解雇規制を撤廃すべきです)

 

(補足)

 

前回の最初の原稿のプランAとプランBの内容を入れ替えました。

 

以下では、プランA(日本航空型)、プランB(ツイッター型)の意味です。

 

1)中国の進出

 

今回は、日本への食料供給を考えます。

 

中国は、インドシナインドネシアに膨大な投資をしています。

アメリカは中国包囲網を作る画策をしていますが、オーストラリア、ニュージーランドは包囲網に参加すると思われますが、他の東南アジアの国が、アメリカを向くことは現時点では難しいと思われます。

 

日本と中国の競合についても、アメリカと似た側面があります。

 

最近の日本の農林水産物の主な輸入相手国には、中国とタイが含まれています。

 

2020(令和2)年の農林水産物の主な輸入相手国は、1位が米国15,579憶円(17.5%)、2位中国11,907憶円(13.4%)、3位カナダ5,195憶円(5.8%)、タイ5,193憶円(5.8%)、オーストラリア4,546憶円(5.1%)となっています。

 

中国との関係が悪化した場合には、中国とタイからの、食料輸入が難しくなる可能性があります。

 

しかし、表1のように、この2カ国からの輸入食料には、加工品が多いので、輸入がストップしても、カロリーベースのダメージは小さいと思われます。

なお、組合せとしては、日本とアメリカとの関係が悪化するシナリオもありますが、アメリカ軍が日本に駐留している限りは、そのシナリオを検討する必要はないと考えます。

 

政治的、あるいは、軍事的に、食料輸入がストップして、カロリーベースの問題、すなわち、飢餓のリスクが問題になることはなさそうです。

 

2)購買力の課題

 

次の問題は、食料を輸入するドルの調達です。

 

加谷珪一氏は、次のように指摘しています。(要約)

 

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予定されたペースで米中央銀行による資産売却が進めば、2年間で約2兆ドルものドル資金が市場から消滅し、市場はドル不足に陥る。日本でも深刻なドル不足が発生する可能性がある。

 

かつての日本は、工業製品の輸出で獲得したドルを、そのまま輸入に充当できた。

 

日本は既に経済大国ではなくなりつつあり、戦後さながらにドル確保に苦労する可能性が日増しに高まっている

 

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つまり、貿易収支の赤字が拡大し続けると食料を輸入するドルがなくなり、食料が輸入できなくなります。

 

加谷珪一氏は、戦後は、ドル確保に苦労していたと指摘しています。

 

朝鮮戦争(1950から1953年)の特需で、日本は、輸入に必要なドルの確保ができます。

 

戦後の統計データは揃っていないので、1955年以前のデータでは確認は難しいです。

 

食料自給率の時系列グラフは1960年頃をスタートにかかれているものが多いですが、自給率は1990年頃までは、一貫してさがり続け、その後は横ばいです。

 

食料自給率の変化は、貿易収支の黒字の大きさと負の相関があります。

これは、貿易収支の黒字で、食料を輸入するので当然のことです。

 

戦後のドル確保が出来なかったときの食料自給率は、調べるまでもなく100%です。

 

つまり、飢餓になるリスクは食料自給率ではなく、貿易収支の赤字です。

 

日本企業が、プランA(日本航空型)の人件費を抑制することで、企業の黒字を確保し、欧米など日本以外の企業が、プランB(ツイッター型)の労働生産性を上げることで、企業の黒字を確保した場合、中期的には、貿易収支は必ず赤字になります。

 

なぜなら、プランAによるコストダウンは、継続的に行うことが出来ないのに対して、プランBによる労働生産性の向上は継続的に出来るからです。

 

2022年に円安で、空前の黒字を出している日本企業がありますが、この黒字は継続不可能です。なぜなら、海外の競合企業は、労働生産性を継続的に上げることができますが、継続的に円安を続けることはできないからです。

 

このため、円安による黒字は、海外の競合企業が、労働生産性をあげた時点でなくなります。

 

1985年のプラザ合意以降、円は次第に円高になりました。その時に、日本企業は、円高で、つぶれるのではないかという議論がありましたが、結果は、労働生産性の向上によって、貿易黒字を続けました。

 

円安は、日本経済にプラスだという主張は、こうした過去のエビデンスを無視した詭弁です。

 

また、1990年頃までの金利は現在のように、低金利ではありませんでしたが、企業は、円高のマイナスを打ち消すために、生き残りをかけて、設備投資を増やして、労働生産性を上げています。

 

つまり、低金利であれば、設備投資が増えるというエビデンスもありません。

 

3)課題の整理

 

以上を整理すれば、日本には次の2つのシナリオプランが考えられます。

 

シナリオ1)円安、低金利にたよって、雇用を最優先するプランAを使い続けて、貿易赤字によって、ドルがなくなり、食料が輸入できなくなり、飢餓になる。

 

シナリオ2)解雇規制をなくし、プランBによって、大量解雇に伴う労働市場をつくって、労働生産性を上げて、貿易黒字を取り戻す。リスキリングも活用します。

 

ツイッター社の解雇は、日本で雇用されていた人も及び、法律違反ではないかという人もいます。

 

解雇されることは、楽しくはありませんので、解雇はない方がよいと思います。

 

しかし、解雇と飢餓とどちらを選ぶべきかと聞かれれば、解雇を選ぶ人の方が多いのではないでしょうか。

 

戦後の闇市が氾濫していたときに、違法行為をしないために、餓死した裁判官がいました。

 

解雇規制を続ければ、同じことが起こる可能性が高いです。

 

引用文献

 

日本はおもにどこの国から農林水産物を輸入(ゆにゅう)しているのですか。

https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0610/01.html

 

円安による「ドル不足」は、もはや日本が「経済大国」ではなくなった証拠だ 2022/10/12 Newsweek 加谷珪一

https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2022/10/post-206.php