ドキュメンタリズムの崩壊の仕方~ドキュメンタリズムの研究

(ドキュメンタリズムは張り子のトラです)

 

1)ノイズモデル

 

データサイエンスでは、実現した(観測された)値は、真の値に、ノイズが乗ったものであると考えます。

 

一番簡単なノイズはホワイトノイズです。

 

GoToトラベルのような旅行補助金がつくと需要が一時的に増加します。

 

しかし、この需要増は、需要の先食いをしている可能性があります。

 

旅行代金の売り上げが伸びますが、これが、ネットの実需だとは誰も考えません。

 

補助金がなくなれば、需要が減少することは目に見えています。

 

したがって、旅行代金の売り上げが伸びたからといって、旅館を建て増す経営者はいません。

 

経営者の頭の中には、旅行補助金の影響を取り除いたネットの旅行需要があります。

 

旅行補助金の影響は、経営者にとっては、ノイズで、これを取り除いて経営戦略をたてられなければ、失敗します。

 

日銀は、10年間金融緩和を続けました。

 

金融緩和をすれば、資金調達は容易になります。

日本国内は、少子化、高齢化で、今後の需要増が見込めないので、国内市場向けに、新たに設備投資はしません。

 

外市場で、日本で作った製品は、現地生産に比べコスト高になるので、工場の海外移転を進めてきました。したがって、海外市場向けに、国内に設備投資をする理由もありません。

 

日本に、無人のロボット工場をつくることで、現地生産に比べコスト安にできるというシナリオもありましたが、実現できている企業はわずかで例外です。

 

そもそもロボット工場でよければ、地代とエネルギーコストの安く、治安のよい場所であれば、日本国内に限る必要はありません。

 

2022年には、極端な円安になり、日本の製品の製造コストが、現地生産に比べコスト安になっていますが、これが定着するかは不明です。

 

すくなくとも、2021年までは、国内に設備投資をする積極的な理由はありませんでした。

 

物流センターは数少ない例外ですが、これば、実店舗とのトレードオフになっています。

 

2022年は、極端な円安になり、史上空前の黒字を出している企業もあります。

 

しかし、この黒字も、旅行補助金と同じように、円安がなくなると消えてしまいます。

 

つまり、企業経営にとっては、取り除いて考えるべきノイズと思われます。

 

実は、金融緩和政策自体が、ノイズを生み出している可能性があります。

 

企業経営にとって、金融緩和や円安の影響(ノイズ)を取り除いたネットの利益をださないと経営判断ができません。

 

ノイズを取り除いても、金融緩和の効果があったのか、検討されているように思えません。

 

実は、ノイズを取り除いたネットの経済指標の推定は、データサイエンスのスタートです。

 

この問題は、金融政策だけでなく、財政赤字など多くの指標に問題があることが知られています。

 

その原因は、ドキュメンタリズムにあります。

 

2)ドキュメンタリズムが崩壊するとき

 

ドキュメンタリムは、問題を解決せず、労働生産性をあげないので、どこかで崩壊します。

 

崩壊の引き金は、経済的な競争相手に負けるときです。

 

ドキュメンタリズムは、日本国内に蔓延していますので、経済的な競争相手は、海外から現れます。

 

一般論としては、経済的な競争が指標になります。

 

しかし、ここで考えなければならない点は。デジタル社会へのレジームシフトです。

 

工業社会とデジタル社会の違いを考える上では、農業社会と工業社会の違いを振り返ってみることが有効だと考えます。

 

農業社会では、識字率は、致命的な問題ではありませんでした。

それが、工業社会になると、必須のリテラシーになります。

 

デジタル社では、プログラミングが必要と言われています。

 

しかし、これにはリマークが必要と考えます。

 

文字では、読むことと書くことの間には、大きな難易度の差があります。

 

同じように、プログラムを読むことは必須ですが、かけるようになる人は少ないと思われます。

 

筆者は、デジタル社会では、プログラミングより、データサイエンスに基づく、科学的な考え方の方法論の方が重要だと考えます。

 

これは、ドキュメンタリズムとは相いれません。

 

ドキュメンタリズムが崩壊した場合のショックを和らげる方法があれば良いのですが、これは、科学的な世界観にかかわる問題なので、難しいと思います。