グーグルの日本進出

(グーグルの日本進出の意味を考えます)

 

2022年10月8日の日本経済新聞のピチャイCEOへのインタビューによると、Googleは、2021から2024年の間に、日本に1000億円の投資をして、データセンター、海底ケーブル、人材育成に当てるそうです。

 

この話をどのように分析するかは、予想含みになりますが、筆者は、次のように、考えています。

 

(1)千葉県内に建設予定のデータセンターは、電力供給面では、条件が良いとは思われません。ただし、テスラのように、データセンターの電力の一部を自社の太陽光発電でまかなう計画も考えられます

 

Googleは中国から撤退していますので、対中国という地政学から見れば、日本にメリットがあります。台湾、韓国に比べれば、有事のリスクは、日本の方が低いと思われます。




(2)人材面では、円安もあり、日本人の技術者には、お買い得感があります。今後も、円安傾向は続くと推定しているものと思われます。日本のITベンダーは、労働生産性が低く、Googleとは勝負になりません。同じ能力の技術者であれば、労働生産性の高いGoogleの方が、より高い給与を提示できます。そうなると、労働市場は、Googleのような外資系企業の一人勝ちになります。

 

ITベンダーとGoogleの今後の関係はわかりませんが、金融、製造業は、自社でのDXに失敗すれば、Googleの有望な顧客になる可能性があります。

 

Googleは、韓国のサムスンとは、相互乗り入れに近い関係にあります。サムスンは、国際競争力の強い企業ですから、Googleと対等に、ビジネスが出来ています。

一方、国際競争力の弱い日本企業の中には、Googleに呑みこまれるところも出て来ると思われます。

 

(3)Googleは、人材育成にも投資するといっています。Googleは、SNSをつかったネット教育カリキュラムを整備してくると思われます。あるいは、Googleがネット上に非正規の学校をつくる可能性もあります。現在でも英語であれば、色々な学習チャンスがありますが、日本では、人材育成にも投資するということは、英語があまり得意ではないが、ITが好きであるような人材を育成できる可能性があります。Googleは、インターンのように、SNSやネットスクールで優秀な人材の囲い込みを進めると思われます。簡単に言えば、学歴よりも実力のような世界で出てくると思われます。こうした動きが本格化すれば、ラベリング効果を期待して日本の大学にいくことはなくなります。日本の大学は経営方針を大きく変える必要に迫られるでしょう。

 

(4)クラウド事業の拡充

2021年の世界クラウド事業のシェアは、アマゾン38.9%、マイクロソフト21.1%、アリババ9.5%、Google7.1%、ファーウェイ4.6%です。

 

2022年3月に調査会社の米Synergy Research Groupが発表したアジア太平洋地域におけるIaaS+PaaS+ホステッドプライベートクラウドの市場シェアで、日本国内は次の順になっています。

 

1位アマゾン、2位マイクロソフト、3位富士通、4位NTT、5位Gooogle、6位ソフトバンクです。

 

世界のクラウド市場は、アメリカ企業と中国企業の寡占にあり、それ以外のITベンダーが食い込んでいるのは、日本だけです。Googleクラウドは、日本国内では、KDDIも扱っていますが、今後、日本のオフィスを拡充して、直営で取り扱う割合が増えると思われます。

 

Googleクラウドビジネスに乗り出すのが、アマゾンとマイクロソフトより遅れました。最近やっと、テコ入れの効果が出て、シェアが拡大しています。富士通、NTT、ソフトバンククラウドは、日本国外には、データセンターがないため、利用は国内に限定されます。また、末端ユーザー向けのクラウドストレージサービスではなく、特定のアプリに組み込まれたクラウドサービスが主体です。その点で、日本のITベンダーのシェアは取りに行けると思われます。

 

実は、筆者は、この記事を書くまで、富士通とNTTのクラウドサービスが国内でシェアがあることを知りませんでした。

 

同じ、米Synergy Research Groupの調査結果では、日経Xテックの記事は、日本国内のクラウドサービスのシェアは、1位がアマゾン32~33%、2位がマイクロソフト21%、3位がGoogle10%弱になっています。つまり、富士通とNTTは出てきません。

 

この違いの原因は不明です。

 

なお、データセンターの数は、最大手のアマゾンでも、世界に26か所のようです。アジアのクラウドは最近成長が著しいので、日本にデータセンターをおくメリットがあると思われます。

 

引用文献



アジア太平洋地域における2021年第4四半期のクラウドインフラ市場、1位AWS、2位アリババ。日本は1位AWS、3位に富士通Synergy Research Group 2022/0/4/04 publickey

https://www.publickey1.jp/blog/22/202141aws21aws3synergy_research_group.html

 

3分で分かるクラウド進化の現在地、DXで欠かせぬ基盤に 2022/03/15 日経Xテック

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01984/031100001/