人生観の課題

(新しいモデルとなる人生観が必要です)

 

1)システム障害

 

日本の大学は、卒業するのが容易ですから、「18歳の大学入試まで勉強して、偏差値の高い大学に入って、勉強して、大企業に勤めて、社長や部長になって、65歳で定年退職する」ことが、典型的な望ましいライフスタイルで、人生観でした。

 

しかし、この人生観は、破綻しています。

 

(1)65歳で定年すると定年後に必要な費用が非常に大きくなります。特に、90歳以上まで生きて、要介護になると膨大な費用が必要になります。90歳以上まで生きる人の割合が低ければ、受給者が少ない保険方式で、担保できますが、それは、無理です。65歳以上でも貯蓄が減らない程度の収入を得られる働き口が必要と思われますが、2022年時点では、その働き口は少なく、スキルアップの方法も確立していません。

 

実際、30年前の退職は、55歳でした。定年を延長すれば、社内失業の数が増えるだけです。今の定年延長の方法は、合理性に欠けています。

 

(2)政府は、中小企業の企業年金の拡充を考えていますが、企業年金は、企業が継続しなければ成り立ちませんが、その大前提は無理です。日本経済活性化のために、今後、1980年代のレーガノミクスと同じような荒療治が必要になりますが、その場合、残る企業は半分以下だと思われます。

 

(3)デジタル社会では、他の人と同じことをして収益を得ることは難しくなります。前例主義で過去と同じことをするのであれば、人間は、AIに勝てません。つまり、人間は、クリエイターにならないと収入を得ることは難しくなります。そのためには、年齢に関係なく、成果に対して報酬を支払う必要があります。

 

以上のように考えると、次の2点が必要です。

 

2)変革の要件

 

(1)新しいモデルとなる人生観をつくる必要があります。

 

(2)現在の社会経済システムを新しい人生観に合わせた社会経済システムに切り替える必要があります。これは、猫の首に鈴をつけるような役割かもしれませんが、誰が、何時、行うのかを決めないと、永久に変化が起こらず、デジタル社会から取り残されます。

 

現在の議論は、今の社会システムが延長できるか否かに止まっています。

 

この範囲では、問題の先延ばし以外の方法は出てこないでしょう。

 

3)一般化

 

以上は、人の人生についての言及です。

 

同じことは、企業組織や、学問分野についても言えます。

 

40年前には、デジタルデータも、クラウドもありませんでしたので、ある分野について物知りの専門家の存在価値がありました。

 

現在は、ネットワーク上の知識や、AIによって、ある分野について物知りの専門家の存在価値は、恐ろしい速度で、失われています。

 

つまり、ここには、新しい専門家観が必要になっていると思われます。

 

人文科学系の専門家の方が、問題の原因はこれであるといった主張をされることがあります。しかし、データサイエンティストからすれば、何を根拠に、原因を選択したのか理解できないことが多々あります。つまり、データサイエンティストの専門家観と人文科学系の専門家観は、合致しないのです。データサイエンティストも、原因を完全に理解している訳ではありません。なので、普通は、仮説を立てたら、介入と検証に進みます。こうした手順が余りに違うので、専門家観が違うのだと思います。