奴隷経済とDXの終わり~2030年のヒストリアンとビジョナリスト

(2022年は、日本のDXが終わった年として歴史に残るかも知れません)



2022/06/19の日経新聞に、NTTでは、技術者の米国IT企業への流出がとまらないと書かれていました。

 

2か月前の2022/04/22の現代ITメディアに、円安について、岡村 聡氏がかいた記事には、次のように書かれていました。

 

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実際に私が資産運用のアドバイスをしているお客様で、ベトナムにプログラミング部隊を持っている人が、プログラマーの給与についてベトナムの主要都市と比較しても日本の地方都市の人材のほうが安価になったとのこと。彼はベトナムの拠点を閉鎖したと話していました。

 

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これを裏返せば、日本の地方都市のプログラマーは、ベトナムに出稼ぎした方が給与が良いということです。

 

 河東哲夫は、日本経済は、欧米の「奴隷経済」とは違うといいますが、実態は、真逆で、日本の企業は、能力のない高齢者に高い給与を支払う一方で、若年のプログラマーを、奴隷のように、安く働かせようとしています。

 

これは、簡単に言えば、DXを進めたり、なまじDXができると給与が下がる状況を意味します。

 

労働市場があれば、こんな摩訶不思議なことは起こりません。終身雇用で、労働市場を潰してしまったツケがきています。

 

「新しい資本主義を巡って(2022/06/09)」に、筆者は、「IT技術者は不足していない。年収2000万円を払えば、人材は確保できる。問題は、2000万円の人材を活用できる能力のある経営者がいないことだ」と書きました。

 

現実は、日本人プログラマーを、ベトナム人プログラマーより安い賃金で、雇っています。

 

経済合理性から考えれば、倒産リスクの高い企業に、年功型賃金で働き続けることは、トンデモないハイリスクです。DXで、もはや価値のなくなった知識や社内ルールをOJTで身に着けても、自分の価値は上がりません。ジョブ型雇用であれば、専門的な技能がなければ、就職できませんし、高い所得も期待できません。専門家に関係なく、転勤させるような企業は、極め付きのハイリスクです。

 

弱年層は、年功型雇用が終わって、ジョブ型雇用になったときに、不利にならないように、スキルを身に着けるはずです。

 

さて、地方都市のプログラマーは、地方で働き続けるか、ベトナムに出稼ぎにいくか、選択する場合を考えます。もしも、地方の企業が年功型雇用であれば、国内にいることはハイリスクです。

 

2022/06/21の日経新聞には、開業医のDXが遅れていると指摘されています。これは、行政や医師会の責任ですが、プログラマーにとっては、DXが遅れていれば、DXが進んでいる場合に比べて、得られる所得が小さくなります。この違いは、プログラマーが埋められるものではありません。「年収2000万円のIT人材を活用できる能力のある経営者がいない」という問題と同じです。ここでは、能力があっても、給与は増えません。

 

2022/06/21の日経新聞には、東南アジアのEV市場に、日本企業が出遅れたと伝えています。ジョブ型雇用であれば、EVで先行するタイの企業で働いても問題はありません。日本企業が出遅れたということは、タイの企業の経営者の方が、日本企業の経営者より優秀だったということです。恐らく、技術者の流出組もいるでしょう。



政府は、2022年の春闘は、例年にない賃上げであったと成果を宣伝していますが、円安になったので、基軸通貨のドルベースでは、春闘は明らかに賃下げです。

 

2019年5月に、経団連会長が記者会見で「終身雇用を前提に企業運営、事業活動を考えることに限界がきている。外部環境の変化にともない、就職した時点と同じ事業がずっと継続するとは考えにくい」と発言しています。

 

経団連会長が、理解していたかは、不明ですが、これは、ジョブ型雇用を前提としますので、「転職、流出はどうぞご自由に」といっていることになります。少なくとも、転職による差別はしないという発言です。

 

NTTが、米国のIT企業への技術者流出が止まらないというのは、年収2000万円クラスと思われます。

その下の600万から1000万円の中堅クラスの技術者流出は今まで、話題になりませんでした。

 

しかし、状況からみれば、600万から1000万円クラスの中堅技術者も流出が増加しているはずです。

 

ちなみに、4月22日の円ドルレートは、sell131.45円ですが、6月21日は135円です。

 

円安が続けば、技術者流出の確率は上がります。



次に、「仮に、中堅クラスの技術者の流出が起れば、1、2年後に、統計にでるだろう」と、書くつもりでした。

 

しかし、関連する、データは、海外在留邦人数調査統計で、これでは、技術者の人数は不明と思われます。

 

また、過去の技術者流出の調査は、「人材を通じた技術流出」に主眼があって、国際労働市場を調べたデータはありません。

 

つまり、技術者流出は、今までも起こっていた可能性もあります。また、今後、技術者流出が増えても、それがわかるような統計はなさそうです。



統計データがないので、真相は闇の中ですが、仮に、自分が、プログラマーであったと仮定すれば、40代前半までなら、流出にかけると思います。なぜなら、DXが進んで、プログラマーが、所得のよい職業になると言われ続けて20年間、何も変わらなかったからです。DXと騒いで、随分待たされたが、結局、本当にやる気はないと考えざるをえないからです。DXが普及して、DXで企業が稼げれば、プログラマーは、高い給与が得られます。これは、米国のIT企業を見れば自明です。DX落ちこぼれの企業は、稼ぐ力がないので、力のあるプログラマーは、近づきません。政府が、DXの補助金をつければつけるほど、それは、ダメ企業の勲章にしかすぎません。

 

DX人材が流出してしまえば、DXは絵にかいた餅になり、2022年は、日本のDXが終わった年として記録されることになります。

 

引用文献

 

「日本がどんどん『貧乏』になって、本当に困ってます!」…海外在住日本人を襲う「円安地獄」のヤバすぎる現実 2022/04/22 現代ITメディア 岡村 聡

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/94409?imp=0

 

欧米の「奴隷経済」とは違う。日本の会社は(そんなに)悪くない!2022/06/15 Newsweek 河東哲夫

https://www.newsweekjapan.jp/kawato/2022/06/post-100.php