欧州のマスコミと裸の王様
(裸の王様現象は、欧州のマスコミで確認することができます)
裸の王様の話を書いても、筆者の妄想と思われるのもいやなので、実例を挙げておきます。
1)裸の王様とwalk on eggshells
2022/07/30のNewsweek_World_Voiceに、RIKAママ氏は、フランスのマスコミの情況を報告しているので、要約します。
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フランスでは、安倍晋三氏の殺害について、日本のマスコミと警察、政治の関係も酷評されています。
仏フィガロ紙は、「驚くことに、安倍晋三氏が殺害された翌日、日本の大手5大新聞は全て同じ見出しを一面トップで掲載し、書体の大きさも含めて一言一句違わず、操作当局によって目に見えてわかる置き換えられた『自白』(統一教会という名前を伏せ、あたかもそれが無名の宗教団体であったかのごとくの印象を与えている)を彼らが認定した同人記者たちに垂れ流し、彼らは真実性や臨場感さえ気にせずに、それをそのまま掲載する堕落ぶりである。この発信をした日本の警察のトップは政府に近い、ジャーナリストの強姦事件の起訴を不起訴処分にしたことで有名な中村格氏である。この事件に関して動員された日本のマスコミは、事件直後からの48時間に、ヘリコプターまで飛ばして全国紙5社で9,355人の記者を動員しての大掛かりな取材をし、事件現場を模型で再現したりして、きめ細かく検証されているかのごとく水増し作業を装いながら、警察と政府に都合の良い垂れ流し記事を掲載するという煙に巻くような報道をしている。日本のマスコミは、もはや報道機関の役割を果たしておらず、『卵の殻の上を歩いている』。この暗殺の原因には、断固とした政治的要素が含まれていることを追求すべきである」
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「卵の殻上を歩く(walk on eggshells)」は、「非常に慎重になる / 注意深くなる/ 気をつかう」といった意味です。この意味は、卵の殻を割らないように、細心の注意を払いながら歩くことからきていると思われます。
仏フィガロ紙は、マスコミは、裸の王様のためのマスコミであって、決して、王様が裸であるとは報道しないといっていることになります。
ロシアや中国では、マスコミ統制がなされていると言われていますが、「日本の大手5大新聞は全て同じ見出しを一面トップで掲載し、書体の大きさも含めて一言一句違わず」からみて、フィガロ紙は、日本のマスコミ統制はロシアや中国以上であると考えています。何しろ、「一言一句違わず」では、特定の新聞を取り締まることすら不可能ですから。(注1)
2)反セクト法
RIKAママ氏が取り上げているもう一つの話題は、宗教と政治の関係です。
フランスでは、1995年に起こった東京でのオウム真理教の地下鉄サリン事件やアメリカでのダビデ教団の集団自殺事件などが起こったことで、反セクト法の立法化が加速しました。フランスの「反セクト法」はこの2つの教団の経済・財務に関する国会の調査委員会の検討を経て制定されています。
フランスの「反セクト法」は、「宗教の自由を奪う」観点ではなく、逆に「国民の精神の自由を守る」観点に基づき、宗派の逸脱行為を取り締まる法律です。宗派の逸脱行為には、「精神の不安定化を導く行為」「法外な金銭要求」「本来の環境からの隔離」「物理的生合成に対する攻撃の存在」「児童の加入強要」「反社会的言説」「公権力への浸透の企て」「多数の訴訟問題」「経済流通経路からの逸脱」が含まれます。そして、これに該当する団体(宗教に関わらず)に対しては、裁判所が団体解散権を持っています。
フランスでは、統一教会(世界平和統一家庭連合)、サイエントロジー、エホバの証人、ファミリーインターナショナル、ラエリアンムーブメント、創価学会(現地法人)などが監視対象になっています。
1976年のOECD調査報告の「社会科学は役にたっているのか」という質問に戻れば、日本の社会科学者が、どうして「反セクト法」の提案を勧めてこなかったのかが問われます。
「反セクト法」の提案書は出されているのかもしれませんが、広く知られていません。
なので、疑問は残ります。
3)「嘘が通る社会」とODA
ある著名な作曲家は、安倍元首相が、「モリカケサクラ問題」にみられるような、「嘘が通る社会」をつくったことで、国葬に反対しています。「桜を見る会」問題では国会で118回もの虚偽答弁をしながら、捜査は終結しています。
「嘘が通る社会」とは、言い換えれば、裸の王様の論理が通じる世界です。
そこで、補足しておきます。
3-1)免訴訟権限の範囲
国会の118回の虚偽答弁で、よく理解できない点があります。
韓国の大領領は、辞任した後で、有罪になる例が非常に多いです。
アメリカの大統領も現職中は、訴訟の対象にはなりませんが、退職すれば、その特例が外れます。
トランプ前大統領も、退職後、訴訟の対象になっています。
日本の総理大臣の場合には、総理大臣を辞任後も、国会議員を続けていることが多いので、大統領とは異なり、総理大臣を辞任後もそれなりの免訴訟権限が残っていると思われます。しかし、総理大臣は1人しかいないポストですが、国会議員には、代わりがいますので、免訴訟権限のレベルは、違うはずです。
一方、日本では、総理大臣辞任後に、訴訟になったという話はききません。
この点では、韓国の方が、まだ、日本よりまともだと考えている海外のマスコミがあっても、不思議ではありません。
大統領や総理大臣は1人しかいませんので、在任中には、職務に専念するために、免訴訟権限があるのは、当然です。しかし、辞任後は、説明責任を果たすべきであり、それが、在任中の権力の暴走を抑える安全弁になっているはずです。
3-2)科学の問題
ある著名な作曲家は、安倍元首相が「嘘が通る社会」をつくったと批判していますが、科学では嘘は通りません。
問題は、権力者が、このことをどれだけ自覚しているかという点になります。
恐らく、「嘘が通る社会」をつくっても、物理学に嘘は通らないと考えていると思います。
しかし、数学と経済学には、嘘が通ると考えている可能性があります。
これは、円安で、賃金が減っても、春闘で賃金があがったのは、政治の成果であるというような論理です。
春闘は、円安を全くカバーできていないにもかかわらずです。
各学問分野は、嘘が発生した場合には、間違いを指摘すべきです。
そうしないと、その学問分野は、裸の王様のための科学を研究していることになってしまいます。
裸の王様のための科学が横行すれば、ある著名な作曲家がいったように、科学でも「嘘が通る社会」であるのかもしれません。
その場合には、科学技術立国はできません。
次年度予算は、また、増額する計画ですが、政治が、利権代表になって、予算が、投票した利権関係者に、補助金をふるまう構造であれば、経済は疲弊するだけです。その理由は簡単で、これから10年以内に、産業構造が大きく変わりますので、今までと違って、利権関係者に、補助金をふるまっても、そのお金は循環せず、関連企業の多くが廃業するからです。循環しないお金の使い方は、北朝鮮のミサイル開発費と同じですから、経済は疲弊して、どんどん貧しくなります。ユニコーン企業は、利権関係者には、まだ、なれないのです。
3-3)海外の視点
今回は、フランスのフィガロ紙の視点が、日本の新聞は裸の王様に奉仕していると批判している例を述べました。
「嘘が通る社会」は日本国内だけです。
これは、実は、ODAに致命的な影響を与えています。
日本の科学の一部は、大分前から、裸の王様のための科学になっていて、ODAの受け入れ先からは、低い評価しか得られませんでした。それでも、ODAが出来たのは、日本のODAの金額が大きかったからです。
現在は、日本のODAは金額では、中国に完全に競り負けています。円安が、更に、金額を減らしています。
その結果、ODAは、座礁寸前になっています。つまり外交力の根源のひとつは失われつつあります。
イギリスのジョンソン首相は、嘘が度を過ぎて、辞任に追い込まれたと言われています。
嘘はいまでもつき続けられません。つけは、既に、色々な所に出ています。
注1:
文部科学省は2022年7月28日、小学6年と中学3年を対象とした2022年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を公表しました。そこで、4年ぶりに実施された理科では、新要領が求める科学的探究の力を測る問題で正答率が低く、科学的探究の力が育っていないと言われています。しかし、フィガロ紙の指摘が正しいとすれば、日本の社会(特に政府)は、科学的探究の力を求めてはいないと言えます。
引用文献
フランスの反セクト法は日本のオウム真理教事件を参考にして作られた 2022/07/30 Newsweek World Voice RIKAママ
https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/rikamama/2022/07/post-31.php
ジョンソン辞任、あるいはウソがもたらす予期せぬ奇跡 2022/07/30 Newsweek パックン(パトリック・ハーラン)
https://www.newsweekjapan.jp/pakkun/2022/07/post-76.php