日本は如何にして発展途上国になったか(17)

(2)発展途上国とは何か

 

(一人当たりGDPだけではわからない発展途上国について説明します)

 

1)頭脳流出(brain drain)

 

日本から、日本人の頭脳流出が続いています。

 

日本のODA金額が伸びたのは1985年からです。

 

これは、プラザ合意以降、円高が進んだのが大きな要因と思われます。

 

1980年代のタイのバンコクインドネシアジャカルタでは、現在のように、外国の民間企業は進出していませんでした。

 

タイとインドネシアの日本政府やJICAのODA事業では、バンコクや、ジャカルタの大学の成績トップの卒業生を雇うことができました。

 

国内企業では、それだけの給与を払えるところはありませんでした。

 

ODA事業は期間が完了すると事務所が閉鎖され、労働者は解雇されます。

 

そのとき、日本関連のオフィスで働いていたことは、その後の転職にも有利になるとかんがえられました。

 

日本のITベンダーは、GAFA予備校と呼ばれ、ブレイン・ドレインが止まりません。

 

この場合の原因は、高給で能力を発揮できる就職口がないことです。

 

高度人材の移動をみれば、日本は、開発途上国になっています。

 

2)副業

 

日本では、1970年頃まで、公務員の副業がありました。

 

学校の教師が、副業で、予備校の教師をしていることもありました。

 

これは、本給だけでは、食べていけなかったからです。

 

2005年頃のラオスインドネシアでは、公務員の仕事は午前中で終わりで、午後は副業をしていました。

 

最近、日本では副業を勧めています。

 

つまり、本給では食べて行けないので、自分で、他の仕事を見つけて稼げという訳です。

 

岸田政権になって、本業で食べられなければ、株式運用で稼げといっています。

 

一般には、本業だけでは、十分な貯蓄ができない人が副業をします。

 

こんなことが言える、発展途上国はないので、これは、悪い冗談だと思いますが、ブラックジョークが本気になってしまう世界には、違和感があります。

 

家計が副業をしないと食べられない発展途上国になったのですから、国家財政も、赤字国債の発行を止める必要があります。

 

その方法は、増税ではありません。予算の削減で、投資効率の悪い予算は、削減するしか方法がありません。

 

小泉改革の時には、民営化して、財政負担を減らすといっていました。

 

それが、どこまで、成功したかは、不明ですが、少なくとも方針はそうでした。

 

現在は、民営化とは、逆に、民間企業に補助金を垂れ流し続けています。

 

海外では、ODAなどの補助金の利益が本業を上回ると、企業は、本業がどこかにいって、補助金獲得に専念するようになって、企業がつぶれてしまいます。

 

日本も、いよいよアフリカのODAだけで、経済が回っている国レベルになっています。

 

3)病気と治療

 

2005年ころのラオスの話です。最近の状況ははわかりません。

 

そのころ、ラオスでは、まだ、伝統的な世界観が生きていました。

 

人々は、病気になるのは、悪い魂がのり移ったからだと考えていました。

 

3月のひな祭りの原型は、悪い魂を人形に乗り移らせて、川にながす流し雛ですから、同じ世界観です。

 

誰かが、エルトール小川型コレラにかかったとします。治療の中心は、脱水症状の回復です。日本なら点滴でなおります。

 

ラオスでは、コレラの原因が、悪い魂がのり移ったと考える人がいました。お見舞いや、治療のために、患者に誰かが近づくと、悪い魂が、患者からその人に乗り移る可能性があります。このため、患者に近づく人はいなくなり、患者は脱水症状で死亡してしまいます。

 

なお、経験科学でいえば、「患者に誰かが近づくと、悪い魂が、患者からその人に乗り移る」という仮説は間違っていません。近寄らなければ移りませんので、このルールには価値があります。



現在の医学では、乗り移るのは、「悪い魂」ではなく、「ウイルス」ですが、近寄らない方がよいというルールはコロナウイルス対策でも実施されています。

 

とはいえ、原因が、「ウイルス」ではなく、「悪い魂」であれば、消毒の効果は期待できません。

 

日本経済は、経済成長がとまって、明らかに病人です。直すには、原因を科学的に究明して排除しなければなりません。

 

筆者には、政府は、「新しい資本主義」という名前の「良い魂」を呼び込めば、病気は治ると言っているように見えます。

 

やはり、日本は、発展途上国になってしまったのだと思います。

 

4)ピンハネ

 

インドネシアで、1990頃ODAの公共事業をしていた人の話です。

 

(日本を含めて)どこの国でも、工事代金のピンハネがゼロの国はありません。

 

合法的なものも含めて、入札で決まった価格のある程度はピンハネされます。

 

それは、予想していたらしいですが、その頃のインドネシアでは、ピンハネが横行して、その額は、入札価格の50%を超えていました。

 

1990年頃のインドネシアでは、空港の税関が、スーツケースを明けてチェックするときに、お土産らしいパックがあると一部をよこせと要求していました。その対策に、税関用のお土産を準備している人もいました。

 

2023年の日本も余り状況は代りません。

 

大手企業の社員が、資格と不正に取得したとマスコミででていました。

 

経験年数が不足していたのを胡麻化したという話です。

 

科学では、経験に価値はありません。要は、技能が習得できたか、否かです。

 

実務体験がなければ不安であれば、インターンを採用すればよいだけです。

 

医師は、インターンが義務づけらえています。弁護士は、資格試験に合格後、研修を受けます。自動車学校では、路上教習が義務づけられています。

 

事故が起こると困る場合には、経験年数は採用していません。

 

経験年数と条件にして、資格をつくるのは、合法的なピンハネです。

 

これから、労働人口が減りますので、能力のある人は、経験年数を問わないで、どんどん仕事をさせないと経済が停滞します。

 

資格審査は、ピンハネで経済を停滞させる効果しかありません。

 

事故を防ぐには、卒業資格を厳格化すればできます。

 

自動車学校では、卒業資格で、実施試験を免除していますが、サンプルのため少数の実地試験を行ってその結果が悪ければ、自動車学校にペナルティを課しています。

 

現在では、運転免許はデータベース化されているので、どこの自動車学校の卒業生の事故率が高いか簡単にわかります。おそらく、サンプルのため少数の実地試験より、こちらのデータの方が信頼性が高いはずです。

 

知床遊覧船沈没事故のあとの対策も、科学的ではありませんので、同様の事故は起こり得ます。

 

許認可に事故防止効果があったというエビデンスはありません。事故が起こるのは経験不足ではなく、スキル不足です。事故が起こるたびに、許認可を強化しても、それは、スキルの改善とは因果関係がないので、再発は防げません。

 

ピンハネの面で見れは、日本は、発展途上国です。