日本のIT企業の倒産確率

(日本のIT企業の平均倒産確率は、かなり高いと思われます)



「日本と海外の政治家評価の差の疑問」で、「日本経済が落ち込んで、外交が崩壊して、1990年以前のレガシーな製造業に命運をかけて、ロシアみたいになる、あまり、想像したくない姿ですが、こうなる可能性もかなりあります」と書きました。

 

しかし、悪夢は現実に近づきつつあります。

 

1)日曜討論NHK

 

筆者は、TVをみませんので、日曜討論も見ていませんが、2022/06/19のFLASHの要約をみると、次のような討論がなされたようです。

 

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6月19日、参院選選挙の公示を3日後に控え、「日曜討論」(NHK)では各党の政策責任者が議論を交わし合った。なかでも、“終身雇用をやめるべきか” というテーマが、話題を呼んでいる。

 

番組では、企業にとってビジネスをしやすい環境が整っているかどうかを基準にした、2022年の「世界競争力ランキング」を紹介。63の国・地域のなかで、日本は34位と過去最低の位置にあった。

 

 そのうえで、日本の競争力を高める課題の一つが雇用だとし、終身雇用の見直しについて、各党党首に挙手制で賛否を求めた。「終身雇用を見直すべき」を選んだのは、自民党日本維新の会・国民民主党NHK党、「終身雇用を続けるべき」を選んだのは、公明党立憲民主党共産党・れいわ新選組社民党だ。



れいわ新選組山本太郎党首は「国際競争力を引き上げるために、雇用を流動化させるということ自体がおかしい。国が衰退し続けてきたのは、竹中平蔵さん的な考え方のもとに雇用の流動化が進められて、一人ひとりの購買力が奪われていったことが原因じゃないですか。やらなきゃいけないことは、生産基盤の回帰。国が徹底的に、政府調達で日本国内で作られた商品やサービスを買う。そうやって基盤を強化し、国内の雇用がさらに高い賃金で安定したものへ変わっていくという順番を踏んでいかなくては」と語っている。

 

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いまだに、公明党立憲民主党共産党・れいわ新選組社民党が、「終身雇用を続けるべき」というのは、驚くべきことです。人口が逆ピラミッドで、「終身雇用を続け」れば、若年層から高齢者への所得移転が強化され、若年貧困が強化され、出生率がさらに減少します。高齢者の投票率が高く、有権者数も高齢者が多いので、「終身雇用を続けるべき」が選挙に有利なのかもしれませんが、倫理上の問題があります。

 

「1990年以前のレガシーな製造業に命運をかけて」るのは、DXから逃げ出すので、自滅に他ならないのですが、れいわ新選組山本太郎党首が言っていることは、「1990年以前のレガシーな製造業に命運をかける」そのものです。



山本太郎党首の「国が衰退し続けてきたのは、竹中平蔵さん的な考え方のもとに雇用の流動化が進められて、一人ひとりの購買力が奪われていったことが原因」という視点は、経済学を敵視していまが、「竹中平蔵さん的な考え方」が経済学ではありません。アダム・スミス、ジェレミーベンサムは、貧困問題や道徳を問題にして経済学を作っています。日本の雇用の流動化は、労働市場を形成できませんでした。これは、経済学では市場の失敗の一つです。フランスのように同一労働同一賃金でない企業を摘発する検察のような組織を作り、年功型雇用をつぶしていれば、現在のような低所得にはなりません。

 

2)マルクス経済学

 

2019年5月に、経団連会長が記者会見で「終身雇用を前提に企業運営、事業活動を考えることに限界がきている。外部環境の変化にともない、就職した時点と同じ事業がずっと継続するとは考えにくい」と発言しています。しかし、これは、日本の雇用の流動化の時に、いうべき発言です。今頃になって言い出したので、経団連は、既得利権を守るだけで、経済学がわかっている人材がいなかったのではないかと思ってしまいます。



2022/96/15のNewsweekの河東哲夫氏の発言も、経済学に否定的な点で、似たような視点です。河東哲夫氏の発言には、そのうち改革すれば何とかなるという視点があります。つまり、今までの方法に問題があったことが、貧困問題や、出生率の低下の原因であるという視点が欠けています。

 

1990年以前に大学を卒業した人は、マルクス経済学の影響を受けています。河東哲夫氏ももちろん、その世代です。1990年以前、国立大学の経済学の教員の半分くらいは、マルクス経済学でした。そこでは、労働者は、資本家に搾取されているというドグマをエビデンスなしに繰り返します。一種の洗脳です。近代経済学は、資本主義の手先で、搾取の片棒を担いでいるといったイメージを繰り返します。労働組合の幹部は、ソ連が、労働者の天国で、搾取も貧困問題もないと宣伝していました。

ソ連が崩壊して、人権抑圧や環境問題があることがわかります。マルクス経済学は、支配者の都合のよいプロパガンダに過ぎなかったのです。

 

例えば、ウクライナウィキペディアによれば、次のような人権弾圧がありました。

 

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ソビエト連邦下のウクライナは拙速な農業の集団化政策などにより2度の大飢饉(1921年 - 1922年、1932年 - 1933年、後者はホロドモールと呼ばれ2006年にウクライナ政府によってウクライナ人に対するジェノサイドと認定された。アメリカ、カナダ、イタリアなどの欧米諸国では正式にジェノサイドであると認定されているが、国際連合欧州議会では人道に対する罪として認定している)に見舞われ、推定で400万から1000万人が命を落とした。この「拙速な集団化政策」は意図してなされたものであるという説も有力である。 

 

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中国の社会主義の場合には、大躍進で、2000万人、文化大革命で、700万人が、命を落としたと推定されています。

 

1990年以降、コンピュータが普及して、近代経済学は、微分方程式の数値解になっています。モデルとエビデンスを突き合わせて、合わないところを修正することが基本です。マルクス経済学のような各段のイデオロギーがあるわけではありません。



3)NTT

 

2022/06/19の日経新聞は1面で、NTTは3万人をテレワークにすると伝えています。

7面には、その理由が書かれていて、NTTから、Googleなどの米国のIT企業への人材流出がとまらないことが背景にあるようです。テレワークに、効果があるかは疑問です。ジョブ型雇用で、給与を上げないと、人材流出は止まらないと思われます。

 

1面では、政府は、外資が日本でクラウドサービスをする場合には、日本企業と組まないと、認可しない方針を出したと書かれています。これでは、中国企業と同じです。もはや、日本のIT企業には、国際競争力がないことを政府が公式に認めたことになります。

 

2019年5月に、経団連会長が、終身雇用が難しいといいだした原因には、人材の流出があった可能性も考えられます。



星野リゾートは、倒産確率をだしていますが、船が沈みだして人材が流出し始めたら、倒産する(船が沈没する)までの時間は、あまり残されていないと思われます。

 

日本のIT企業は、DXシフトが完了する次の10年を乗り切れなければ、倒産します。

 

少し前から、10年後には、DXで、現在行われている仕事の50%以上がなくなると言われてきました。

 

これは、個人のベースですが、組織ベースでは、半分以上の企業が倒産するか、大幅な組み換えを余儀なくされることを意味します。

 

星野リゾートにならって、10年後までの日本のIT企業の倒産確率を考えてみることもできます。

 

この確率を高く予測する人は、日本のIT企業に残ることはリスクになりますので、流出するはずです。

 

こう考えると、日本のIT企業は、10年後には、半分残っていれば良いほうだと思います。

 

これは、白物家電や、スマホで起こったことを考えれば、十分考えられるリスクであると思います。

 

引用文献



欧米の「奴隷経済」とは違う。日本の会社は(そんなに)悪くない!2022/96/15 Newsweek 河東哲夫

https://www.newsweekjapan.jp/kawato/2022/06/post-100.php

 

終身雇用やめるべきか…『日曜討論』各党の主張に議論百出「切られない安心は必要」「無能が切られるだけ」2022/06/19 FLASH

https://news.yahoo.co.jp/articles/68e11830dc9cfbf4f18bbc8c4fdd9471c9204dd0