成長と分配の経済学(4)~2030年のヒストリアンとビジョナリスト

(反事実的思考をつかって、日本が経済成長できなかった原因を考えます)

 

11)反事実的思考

前回の最後は、次の疑問でした。

疑問:日本企業は、どうして、経済成長を放棄したのか

疑問:金融企業は、どうして、金融工学に基づく金融商品を開発しないのか

疑問:金融企業は、どうして、金融工学に基づく、リスク評価に基づく融資をしないのか

これは、常識ではあり得ない仮定です。

 

そこで、この検討のために、反事実的思考を導入します。

この手法には、心理学の手法と、統計学の手法がありますが、ここでは、心理学の手法を使います。

ここで使う反事実的思考は、アダム・グラント氏の「THINK AGAIN」によっています。

 

現実では、日本企業では、DXが進まず、労働生産性が上がりませんでした。

しかし、ここで、日本企業でも、米国企業と同じように、DXが進んで、労働生産性が上がったと仮定します。この仮定が、反事実になります。

反事実が実現した場合に、日本の企業はどのような状況になっているでしょうか。

それを想定するには、DXが進んでいる米国企業を見ればよいことになります。

箇条書きで、想定される事態を書いてみます。

 

(1)金融工学やITの技術者を雇用する。

(2)金融工学を使った商品が開発され、利益に貢献する。

 

このあたりまでは、多くの人が想定していると思います。

現在、DXを進めるべきだという主張も同じタイプの論理です。

 

<1>DXのできるITの技術者を雇用する。

<2>DXを使って、労働生産性があがり、利益に貢献する。

 

問題は、これだけでは終わらないことです。

金融工学もDXも、データサイエンスの一部です。

システムの実装には、データが必須です。

サイエンスですから、手法を習得した人であれば、誰が解析しても同じ結果が得られます。

一方、手法を習得した人でなければ、結果を得られません。

 

つまり、DXの導入過程では、データ(エビデンス)に基づく、意思決定がなされることになります。

これは、ジョブ型雇用による業績評価に直結して、次のような効果が生じます。



(3)エビデンスを計測してリアルタイムに更新されるデータベースが構築される。

(4)プロジェクトのリルタイムの到達度と達成度評価がなされる。

(5)労働生産性があがる。

(6)労働者の労働生産性の計測結果が出るので、業績に対応した給与、つまりジョブ型雇用になる。

(7)業績の高い人が、CEOなど、企業幹部になる。

(8)労働者は、より高い給与を求めて、企業間を移動する。

(9)企業は、労働者を確保するために、同一のジョブに対して、できるだけ高い給与を支払うように努力する。

 

以上のように、金融工学、IT、DXの導入は、年功型雇用を破壊し、ジョブ型雇用への移行を促進します。

そうなると、当然、利害関係者が出てきます。

そして、簡単に言えば、損をしそうな人は、IT革命やDXに反対するはずです。

 

これを考える前に、データサイエンス革命が、経営や社会科学に与えた影響を振り返ってみます。