MTF特性図とレンズの性能(4)

レンズの進化

MTF曲線について、ニコンは次の様に説明しています。

NIKON MTF曲線とは

軸外像高では非点収差の影響でS方向(サジタル方向:放射方向)とM方向(メリジオナル方向:同心円方向)で、コントラストの変化が異なってきます。一般に、10本/mm の曲線が1に近いほどコントラストがよくヌケの良いレンズになり、30本/mmの数値が高いほど高解像なレンズといえます。

なお、レンズ性能につきましては、ボケの評価や、色にじみ等 、MTFでは判断できない評価項目もあります。従いまして、MTFは性能を評価する尺度のひとつとしてご利用下さい。


つまり、レンズの性能は、MTF曲線では、測れないといいます。

しかし、MTF曲線は物理特性なので、粉飾することはできません。

MTF曲線を見れば、レンズが、改良によって、どのように変化したか追跡できるはずです。

フルサイズセンサーのカメラの場合の標準ズームは、28-70mmF2.8または、24-70㎜F2.8です。

Nikonまたは、Canonのこの規格のレンズが、代表的な標準ズームでした。

ですから、この規格の標準ズームのMFT曲線の変化を追跡することで、レンズ性能の変化を追跡できるはずです。

以下に見るように、デジタル一眼レフの展開は、Canonの方が早いのですが、CanonのHPでは、古いMTF曲線のデータが残っていませんでした。

一方、NikonのHPでは、古いMFT曲線のデータが残っていますので、ここでは、Nikonのデータを追跡します。

なお、ここでは、フルサイズセンサーのレンズを比較していますが、フルサイズセンサーのデジタル一眼レフが普及し始めたのは、2005年8月のCanonのEOS-5Dと、2007年11月のNikonのD3からです。

CaononのEOS-5Dはプロの屋外写真撮影では、独占的な位置をしめてた時期もあります。2010年頃に出た絶景写真集で、カメラとレンズが記載されているものがありましたが、カメラの95%は、EOS-5Dまたはその後継機種、レンズは、F2.8の標準ズームが7割、F2.8の望遠ズームは3割で、2本に集中していました。


デジタル一眼レフの変遷

Canonは、1998年3月にデジタル一眼レフD2000(APS-C、200万画素)を198万円で、本格的なデジタル一眼レフに参入します。

Nikonは、1999年9月に、D1(APS-C、270万画素)を、65万円で販売して、本格的なデジタル一眼レフに参入します。

Canonは、2002年11月に、デジタル一眼レフEOS-1Ds(1100万画素)で、フルサイズセンサーのデジタル一眼レフに参入します。

Canonは、2005年8月22日に、デジタル一眼レフEOS-5D(1280万画素)で、小型で屋外撮影が容易なフルサイズセンサーのデジタル一眼レフに参入します。

Nikonは、2007年11月に、D3でフルサイズ(FX、1200万画素、58万円)センサーにデジタル一眼レフに参入します。


MTF曲線を調べたレンズは5本です。

(1)と(5)が28-70mm、(2)(3)(4)は24-70mmです。

(1)は、デジタル一眼レフより、フイルムカメラでつかうことを想定しています。

標準ズームの広角側がア24㎜になったのは、デジタル一眼になってからで、(2)は、フルサイズのデジタル一眼レフで使うことを前提に設計された最初の標準ズームです、

(1)がは22万円でしたが、(3)は30万円と価格も上がっています。

(3)は、フルサイズのデジタル一眼レフの2代目の標準ズームになります。

(4)は、ミラーレスのZマウントになって、初代の標準ズームです。

昔は、NikonCanonの標準ズームは、性能はよいが高価で、SIGMAタムロンなどのサイドパーティのレンズは、価格は安いが、性能が悪いというすみわけになっていましたが、レンズの設計技術は向上して、サイドパーティのレンズの性能があがり、サイドパーティが、PentaXなどのカメラメーカーに、OEMで出荷したレンズが純正レンズとして、採用されるようになりました。

フルサイズセンサーのミラーレスカメラの価格が下がり、標準ズームは、安価なサイドパーティ製を選ぶ人も増えてきました。

こうした状況の中で、(5)は、Nikonが、サイドパーティと同じ価格帯の標準ズームレンズを初めて投入した例です。

今の所、CanonSonyはこの価格帯の製品は出していません。

ですから(5)は、例外として、(1)から(4)のMTF曲線を比べることになります。

Canonの基準では、コントラスト特性を表す「10本/mmのMTF特性が0.8以上あれば優秀なレンズ、0.6以上あれば満足できる画質」で、高解像力を示す30本/mmのカーブも1に近い方がよいそうです。

10本/mmのMTF特性が0.6以上でみると、(4)は完全にクリアしていますが、(3)は危なげ、(2)は、周辺はだめ、(1)は、これでちゃんと写るのというレベルです。

ミラーレス一眼が出てきてマウントアダプターで古いレンズを取り付けて撮影する人もいますが、レンズ性能からみれば、フイルム時代のレンズを取り出す価値はありません。

また、フイルム時代を基準にすれば、安価な(5)でも、問題はありません。

ただし、前回述べましたように、フルサイズの比較的高価なカメラに安価な(5)やサイドパーティの標準ズームをつけるよりも、APS-Cか、m4/3の安価なカメラに性能のよい標準ズームをつける方が良くうつる思います。

EOS-Mシリーズは、コストパフォーマンスの高いカメラですが、不満は、EF-Mマウントでは、性能のよい標準ズームが選べないことです。

SIGMAあたりが、APS-Cの高性能の標準ズームをだしてくれると嬉しいのですが、フルサイズセンサーのカメラの価格が下がっているので、ビジネスのうまみが少ないのだろうと感じています。

NIKON MTF曲線とは https://www.nikon-image.com/products/nikkor/mtf.html

CANON MTF特性図の見方 https://cweb.canon.jp/ef/knowledge/#anc-MTF%E7%89%B9%E6%80%A7%E5%9B%B3%E3%81%AE%E8%A6%8B%E6%96%B9

(1)AI AF-S Zoom Nikkor ED 28~70mm F2.8D(IF)2002年 8月 8日 登録 https://www.nikon-image.com/products/nikkor/fmount/ai_af-s_zoom_nikkor_ed_28-70mm_f28d_if/

(2)AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED 2007年11月30日 発売 https://www.nikon-image.com/products/nikkor/fmount/af-s_nikkor_24-70mm_f28g_ed/spec.html

(3)AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR 2015年10月22日 発売 https://www.nikon-image.com/products/nikkor/fmount/af-s_nikkor_24-70mm_f28e_ed_vr/spec.html

(4)NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S 2019年4月19日発売 ¥270,000 https://www.nikon-image.com/products/nikkor/zmount/nikkor_z_24-70mm_f28_s/

(5)NIKKOR Z 28-75mm f/2.8 2022年1月28日発売 ¥113,850 https://www.nikon-image.com/products/nikkor/zmount/nikkor_z_28-75mm_f28/spec.html

f:id:computer_philosopher:20220415134230j:plain
写真1 (1)のMTF曲線

f:id:computer_philosopher:20220415134241j:plain
写真2 (2)のMTF曲線

f:id:computer_philosopher:20220415134333j:plain
写真3 (3)のMTF曲線

f:id:computer_philosopher:20220415134343j:plain
写真4 (4)のMTF曲線

f:id:computer_philosopher:20220415134400j:plain
写真5 (5)のMTF曲線