アサリの産地偽装と博士課程~2030年のヒストリアンとビジョナリスト(5)

熊本産とラベルされたアサリが、中国産や、韓国産であって、産地偽装だというので問題になっています。この記事で、留意すべき点は、次の2点です。

 

1)発表記事が任意に選べるリーク記事は、他の記事を目立たなくする目的で使われることがある。

 

2)食品の中身ではなく、ラベルで選別している問題が回避されている。ここでは、食品が、どこを通って生産されているかというヒストリーが問題にされています。

 

1)は、不明なので、省略します。

 

中国産や、韓国産のアサリは、熊本県の海岸で、蓄養(成育)されてきました。中国や、韓国では、アサリが沢山とれるのに、熊本県では、アサリがとれないので、蓄養するわけです。生育環境は、中国や、韓国が、熊本より良いはずです。それを、あえて、熊本で、蓄養するのは、ラベルの張替えをしたいからにきまっています。だから、熊本アサリの多くは、輸入アサリのラベルの張替であることは、関係者は、誰も知っています。

 

ところが、今回問題になっているのは、蓄養することではなく、熊本産のラベルを張る条件である熊本県内の生育期間が、海外での生育期間より長いという条件を満たさなかったからだそうです。海外での生育期間は追跡調査が難しいので、実際より短く申告した偽装がいけないのだそうです。

 

更に、熊本産と表示された輸入アサリの約8割が、1日も、熊本県内で畜養されていなかったそうです。

 

これは、畜養で、ラベルを張り替えて良いというルールに無理があったためです。

 

更に、意味が不明な点は、産地偽装は、DNAの分析でわかったといっていますが、これは、眉唾です。DNAの解析では、アサリが、どこで生まれたかは、特定できますが、畜養期間がわかるはずがありません。

 

したがって、今回のニュースは、1)のもっと大きな問題が、発生したので、目くらましを起こしている可能性が高いことになります。

 

こうした、偽装問題をリークできるのは、誰も、アサリの味や安全性を、調べていないからです。中身のわからない素人がラベルだけで判断しているので、こうした問題が起こります。

 

これは、アサリだけの問題ではありません。

 

大学の新卒、一括採用で、雇用する場合には、大学卒というラベルがあれば、専門にかかわらず、同じような初任給が支払われます。大学時代に、勉強したかは問われません。そもそも、日本の大学では、出席すれば、落第することはありません。つまり、大学を卒業できたことが、特定の能力を身に着けたことを保障していません。大学卒業は、中身ではなく、ラベルであり、4年間大学に通ったというヒストリーでしかありません。

 

大学は、このようなヒストリアンの世界のまま、1990年代に、博士過程を、乱発します。それまでは、博士課程の定員は少なかったので、学習能力の高い人だけが博士課程に行くことが出来ましたが、定員を増やしてしまい、なおかつ、定員割れを避けるために、学部には、入学できないレベルの学習能力の人が、大学院に入学できるようになり、学歴ロンダリングを呼ばれるようになります。つまり、大学院の博士課程では、中身の伴わない偽装が多発しています。

 

このあたりは、アサリの産地偽装によく似ています。

 

その結果、2022/01/25に発表された科学技術・学術政策研究所の「博士人材追跡調査」によると、博士課程を修了した人の初任給は、次になっています。

 

 医師、歯科医師らが1200万~1500万円、工学が400万~500万円、社会科学と理学が300万~400万円、人文科学は100万~200万円です。

 

「令和2年賃金構造基本統計調査の概況」(厚生労働省)によると、大学院生の初任給は男女計で年306万円なので、医学部を除けば、年200万円台になります。

 

日本の大学の教育の多くは、未だに、ヒストリアンが、過去に何が起こったかを説明しています。しかし、過去に何が起こったかは、大学の教員に聞くよりも、Googleで検索すれば、より多くの内容を、より早く、より正確に集めることができます。また、日本の人文科学の場合、外国語ができることが専門家の証でしたが、現在は、自動翻訳でも、なんとかなります。もちろん、文学作品のニュアンスを伝えるようなことはできませんが、例えば、料理のレシピの翻訳であれば、9割方は、自動翻訳で事足ります。数十か国語に対応していますので、これは、大変便利です。

 

つまり、日本の大学院の博士課程では、中身を伴ないラベル張り(偽装)が、多く、行われています。その結果、博士課程修了者の初任給は、悲惨な状態になっています。

 

アメリカでは、ハーバードやスタンフォードなどのトップクラスのビジネススクールを出れば、給与は、15万ドル、1700万円くらいだそうです。この金額は、社会科学の300万~400万円と比べても、大きな差があります。もちろん、アメリカの大学は、それなりの成績が、取れなければ、落第と退学が待っています。博士課程の初任給の安さは、医師、歯科医師以外への優秀な学生の進学を拒んでいて、日本が科学技術立国から転落した大きな原因の1つになっています。

 

日本の大学の世界ランキングが落ち続けていますが、能力があれば、日本の大学院をけって、アメリカの大学院に行って、米国企業に就職することが、まともな選択肢であることは間違いありません。

 

歴史のラベリングによって判断する、ヒストリアンを追放しなければ、アサリの偽装も、大学院の博士課程の偽装もなくなりません。



【図解】熊本産アサリ、中国産混入=相次ぐ産地偽装、揺らぐ信頼 2022/02/06 JIJI.COM

https://www.jiji.com/jc/article?k=2022020500431&g=eco 

 

「熊本産」偽装疑いの輸入アサリ、8割「熊本経由せず」 蒲島知事  2022/02/04 熊本日日

https://kumanichi.com/articles/549507

 

日本の大学院卒初任給は306万円、米国の5分の1以下にした教育の機能不全 2022/02/03 ダイヤモンドオンライン 野口悠紀雄

https://diamond.jp/articles/-/295055

 

博士人材追跡調査

https://www.nistep.go.jp/jdpro/