デジタル庁と因果モデル

9月1日に、デジタル庁が、スタートしました。

しかし、理解できないのは、DXが進まないことは、原因ではなく、結果としか思われないということです。

デジタル庁の考え方には、

DXが進まない(原因)=>労働生産性が上がらない(結果)

という、前提があると思いますが、これは、間違いだと思います。

労働生産性を問題にしない(原因)=>DXが進まない(結果)

という因果関係の方が、本当だと思います。

労働生産性については、ニューズウィークに、加谷珪一氏が書いています。

ざっと拾ったところ、後述のような指摘があります。

このなかで、DXを取り上げているのは、2020/07/22の記事だけです。しかし、ここでは、DXは、需要変化をビジネスにする手法として取り上げられています。つまり、新産業を興す原因としてのDXです。現在ある、仕事の労働生産性をあげるという意味ではなく、「競争力の低い企業を市場から退出させた(2019/ 04/22)」後で、産業を生み出すツールという位置づけです。この場合には、米国でも、大企業ではだめで、ベンチャーが有利になります。

労働生産性改善の大きな課題は、「中抜き・丸投げ(2020/07/29)」にみられる、賃金配分です。つまり、仕事をする人よりも、ピンハネする人の方が、利益が多くなります。これは、身分制度ですが、鉄のトライアングルを形成しています。簡単に言えば、努力してDXができる人より、ピンハネする人の方の賃金が高くなっています。これは、社会人が大学等で、再学習しない原因でもあります。

加谷珪一氏は、「中抜きを排除するなど産業構造をシンプルにするだけで賃金は大幅に上昇し、余剰となった労働力が他の生産に従事すれば、GDPの絶対値も増える。(2020/07/29)」と書いていますが、自由競争を進めて、業務評価で、賃金が大きく変われば、DXは、自ずと進むと思われます。

つまり、DXは、労働生産性が低い結果であって、原因ではないと思われます。

コロナ対策でも、そうでしたが、エビデンスに基づかない政策には問題があります。

加谷珪一氏は、「日本企業はチーム全員が一斉に出社し、お互いの様子を見ながら「あうん」の呼吸で業務を進めるという組織文化だった。責任の所在を事前に明確化する必要がなく、突発的な事態にも対応できるというメリットがあるが、こうした曖昧な業務プロセスはITシステムに移管しにくい。(2020/07/22)」と書いていますが、明確な業務プロセス(自由競争を進めて、業務評価で、賃金が大きく変わる)ができないと、DXの効果はないと思われます。デジタル庁が、他の省庁の業務プロセスを変えることは、ほぼ、不可能と思われます。

言い換えれば、そこに手を入れるより、労働生産性にメスを入れる方が、正攻法です。国会待機すらなくならない現状を考えると、労働生産性が本丸だと思います。国会待機も労働生産性を生き下げる原因ですが、国会答弁は更にひどいです。

「質問に対してかみ合っていない答弁は、国会答弁としては100点」ということが常識のように、通っているようですが、これは、労働生産性はゼロ(答弁してもしなくとも同じ)ですから、異常です。国会待機して準備して作った原稿が、国会答弁で使われても労働生産性がゼロなら、国会待機の労働生産性はゼロです。実際には、作成した原稿が使われる確率は、半分以下だと思います。国家公務員で、辞める人が多いのは、当たり前です。

 

 

  • 2019/04/02

日本生産性本部がまとめた2017年における日本の労働生産性(時間あたり)は47.5ドルで、主要先進国では最下位だった。1位の米国は72ドル、2位のドイツは69.8ドルなので、日本の生産性は米国やドイツの3分の2程度しかない。日本の労働生産性が先進国中最下位なのは1970年代からずっと変わっておらず、日本の生産性がよくなったことは一度もないというのが現実だ。(中略)

競争力の低い企業を市場から退出させるため、失業した労働者の保護を徹底するとともに、経営者に対しても債務超過の放置を許さないといった厳しいルールを定めている。(中略)

認めたくはないが、日本は消費大国にも、製造業大国にもなれなかったということであり、これが生産性が伸び悩む最大の原因となっている。

  • 2019/09/10

日本の労働生産性が著しく低い理由は、儲かるビジネスができていないか、労働時間が長すぎるか、社員数が多すぎるのかのいずれかである。現実には上記3つのすべてが該当している。

  • 2020/07/22

デジタルシフト

需要変化の多くはデジタルシフトを伴う。外食産業は店舗網の縮小と同時にデリバリーシフトが進んでいるが、この動きはコロナ前から顕著であった。アメリカでは数年前から外食のデリバリー化が進み、レストランの廃業が相次いだが、背景となっているのは業務のIT化である

スマートフォンが普及したことで業務のIT化とパーソナル化が加速。皆で連れ立ってランチやディナーに行く回数が減ったことがデリバリーの利用を後押しした。つまり、デリバリーシフトは構造的なものであり、コロナ危機が終息すれば元に戻るという話ではないのだ。。(中略)

IT化が進んだ企業の業務プロセスと、ムラ社会的な組織運営は相性が悪い。日本企業はチーム全員が一斉に出社し、お互いの様子を見ながら「あうん」の呼吸で業務を進めるという組織文化だった。責任の所在を事前に明確化する必要がなく、突発的な事態にも対応できるというメリットがあるが、こうした曖昧な業務プロセスはITシステムに移管しにくい。日本企業がIT化を進められないことには、こうした組織文化が深く関係している。

  • 2020/07/23

設備投資を有効活用するためには、産業構造の転換が不可欠であり、企業自身の体質転換が進まなければ、投資を増やすことはできない。

  • 2020/07/29

持続化給付金の再委託問題で注目された「中抜き・丸投げ」が、日本経済の大きな足かせとなっている。(中略)

中抜きを排除するなど産業構造をシンプルにするだけで賃金は大幅に上昇し、余剰となった労働力が他の生産に従事すれば、GDPの絶対値も増える。

  • 2020/08/27

日本の労働生産性は先進各国で最下位であると述べたが、実はこの順位は50年間ほとんど変わっていない。日本経済がバブル化した1980年代には、各国との生産性の差が多少縮まったものの、基本的な状況に変化はなく、ずっと前から日本の生産性は低いままだ。1人あたりのGDP国内総生産)が世界2位になったこともあるが、それはほんの一瞬に過ぎない。

 

出典

https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2019/04/post-69.php

https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2019/09/post-79_1.php

  • コロナ危機を乗り切れる? 日本企業の成長を妨げる「7大問題」とは 2020/07/22 ニューズウィーク 加谷珪一

https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2020/07/post-94021.php

  • 日本的経営の「永遠の課題」を克服すれば、経済復活への道が開ける 2020/07/23 ニューズウィーク 加谷珪一

https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2020/07/post-94026.php

  • 日本経済の悪しき習慣「中抜き」が、国と国民を貧しくしている 2020/07/29 ニューズウィーク 加谷珪一

https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2020/07/post-111.php

https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2019/08/post-78.php

  • 岸博幸氏 菅首相に「ダメっすよ」とダメ出し 記者会見でかみ合わない答弁に 2021/08/09 デイリー

https://news.yahoo.co.jp/articles/06474b260744420843bf73b73c6ff970ceb0d8a4

 

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