COCOA問題の根の深さ

COCOAの開発費は、1億円という話が最初に出ましたが、最終的には、3億円以上が使われたようです。

COCOA問題のとらえ方には2つの視点があります。

第1は、システム開発の発注の問題の視点です。新聞は、ほどんどこの視点で書かれています。

第2は、事業の有効性の視点です。民間企業では、販売している製品が、性能が悪かったり、使い勝手が悪いと、売れなくなり、製造中止に追い込まれます。これは、ユーザーがお金をはらって、製品を購入しているからです。経済学で言えば、市場メカニズムが、供給量を調整していることになります。

公共事業や、補助金の場合には、この市場メカニズムが働かないことが知られています。使いにくい製品でも、ただであれば文句は言えない。文句をいうなら使うなということになります。旧ソ連の場合には、市場経済を排除した結果、電気製品や食糧品の品質が落ちたことが知られています。中国の経済も軌道にのったのは、市場経済を導入してからです。

COCOAでも市場メカニズムを使うことは可能です。それは、個人のプライバシーにかかわる基礎モジュールの階層だけ、公共セクターが作成して、その上にのるGUIは民間に任せる方法です。これは、例えて言えば、道路は公共セクターが作り、走る自動車は民間セクターが準備する方法です。利用者は使用料金に対して、申請すれば、キャッシュバックを受けられるようにすればよいわけです。この方法では、複数のCOCOAが出現して、一番使いやすいものが多くつかわれることになります。現在のように、国がただでCOCOAを提供するといえば、民間は、ビジネスチャンスがないので、参入しません。つまり、COCOAでは、きわめて社会主義的が手法が採用されています。

COCOAは一部の機種で、効果がなかったわけですが、これについて、だれも責任を問われません。これは、COCOAだけではありません。過去に、全く使われないリゾート施設に、補助金を投入したこともありますが、誰かが、責任を取ったという話は聞いたことがありません。つまり、事業の有効性が問われることはないのです。COCOAを発注した組織の人が、少しでも有効性に関心があれば、恐らく、自分でも、アプリを使ってみているはずです。こうした報告がでないということは、有効性という視点が欠けていたためと思われます。

有効性のない事業に予算を投入しても、問題は解決しません。地域振興もほとんど効果を上げていません。補助金を過剰に投入すると、民間がCOCOAを開発できなかったように、民活の芽を摘んでしまいます。

このように考えると、COCOA問題の本質は、第1のシステム開発ではなく、第2の事業の有効性のチェック機能が働かない点にあると思われます。