写真の露光の表現は、大まかに3つに分かれます。
darktableの開発チームの主流は「中間トーン重視のフュージョン」ですから、HDR(HDRもどき)は御法度です。HDR関係のモジュールは廃止予定に入っています。darktableの開発チームの頭に中にあるHDRは、Kritaのように、高いダイナミックレンジのディスプレイに対応した本当のHDRであって、7EVの狭いダイナミックレンジの紙に印刷したHDRもどきは、けしからんと考えていると思います。
しかし、「heyyou photo」をみるとHDRもどきには、魅力があります。これは、「中間トーン重視のフュージョン」が、目のフュージョンの再現に近い色合いであるのに対して、「明暗強調のフュージョン、HDRもどき」は、目のフュージョンでは、ありそうで、ない画像のためと思われます。認知バイアスで、ボケの解釈(フュージョンと良い写真をめぐる考察(14) 2021/02/18)で申し上げたことと同じです。ありそうで、ありえない画像を見ると、画像を見間違えたと解釈して、脳の補正回路が働くため、注意が引き付けられる現象です。その効果は絶大ですから、表現としてのHDRもどきは捨ててしまうには、惜しい手法です。
HDRもどきが出てきたのは、2010年頃です。露光の異なるJpeg画像を合成する場合には、ベースカーブを使っているはずなので、実際のダイナミックレンジは、センサーのダイナミックレンジよりは狭くなります。最近のセンサーのダイナミックレンジは広がっていますから、現在、darktableで、フィルミックRGBを使う場合には、2010年以前の画像合成と比べれば、1枚の画像に2枚分くらいの情報量が入っている可能性が高いです。つまり、HDRもどきで、3枚以上の画像合成と比べたら、勝負になりません。しかし、2枚合成であれば、darktableのRawの1枚画像編集でも、HDRもどきに、勝負できるのではないかと考えました。
写真1は、太陽のある風景です。太陽以外は、HDR風にできますが、太陽は白飛びしているので、この部分は調整できません。写真1のように、太陽をまともに拾っている画像では、露光を変えたブランケット撮影をして、太陽の周辺の部分のトーンを取り出さないと、この部分は白く飛んでしまいます。
写真2は、夕日です。太陽は白飛びしていません。この場合には、暗所のデータが十分であれば、HDR風にするのに、大きな障害はないと思われます。
写真3は、フイルミックRGBで、写真2の暗い所の露光を下げています。理由は、よくわからないのですが、HDR風の画像では、写真1のように、暗い所を明るく持ち上げる場合が多いのですが、一方では、写真3のように、暗い所を下げている場合もあります。
写真4は、HDRもどきは、御法度ですから、同じ御法度ついでのトーンカーブで、HDR風を試しています。トーンカーブは、微調整が、難しいです。
写真5と写真6は、写真2と写真4の操作を、別の画像で試して見たものです。
まとめ
フィルミックRGBを使うと、写真1のように、暗い所が持ち上がって、HDR風の画像ができることがあります。しかし、それ以上に、トーンカーブをいじって、HDR風にするのは、調整が難しいです。
darktableのスタイルファイルには、HDR風のパラメータも配布されています。現在配布されているdarktableのスタイルファイルは9割以上が、ベースカーブ時代のものです。つまり、フィルミックRGBを使ったスタイルファイルは例外で、ほとんどありません。スタイルファイルはベースカーブだけでなく、トーンカーブも使っている場合が多いです。つまり、シーン参照ワークフローでは、スタイルファイルは、当面は、封印されています。次回は、表示参照ワークフローに戻って、HDR風のスタイルファイルをチェックしてみます。ただし、この場合には、フィルミックRGBの広いダイナミックレンジではなくなります。
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