カーネマンとコロナ対策~コロナウィルスのデータサイエンス(160)

感染者数が増えているので、緊急事態宣言を出すべきか否かが議論になっています。

しかし、カーネマンの「ファスト&スロー」を読んだことのある人であれば、とてもまともに話を聞いていられないと思いますので、ちょっと、補足しておきます。

カーネマンの主張は、簡単に言えば、次になります。


人間に思考判断には2種類ある。

ファストな判断は、ヒューリスティックに基づく。簡単に言えば、昨日までの判断を継続することで成り立っている。状況が大きく変わらなければ、この方法は有効である。人間の判断の9割近くは、この方法をつかっている。

スローな判断は、思考に基づく。この方法は時間がかかる上に、エネルギー効率も悪い。スローな判断だけをしていると、生存ができない。したがって、例外的な思考法である。しかし、状況が変化するとき(ヒューリスティックが使えない)には、この方法が必要になる。


簡単に言えば人間は、パスカルの言うような考える葦ではなく、ファストな判断にのりかかった葦なのです。スローな判断は、生存に必ずしも有利に働くとは言えません。また、普通の人は、習慣的に、ファストな判断をすることが多いのです。

これは、囲碁で言えば、まず、定石(ファスト)を使い、時々、手を深く考える(スロー)を使うわけです。

また、社内ルールで、今までしてきた方法だから、続けるというのはファストそのものです。今年は、忘年会をやらないという判断は、ファストではできない訳です。

ですから、当面はGo To事業はやめない、当面は緊急事態宣言はださないというのは、ヒューリスティックですからファストな回路を使っていますということと等価な発言になります。問題は、スローな回路を使うには、時間がかかりますから、事態が緊急になる前に、しっかり考えておかないと、この回路は使えないわけです。緊急事態になってから、緊急事態宣言を出しますというのは、何にも考えられませんと告白していることと等価です。考えているとしても、頭を使わないマスコミの評判とか、表面的なものにとどまっているはずです。

反応がファストであれば、理由は今まで行っていたことにしかありません。すくなくともカーネマン流にみれば、この場合には、まともに取り合っても仕方がないことになります。

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