RGBワークフローは基本的に12EV以上を想定しています。一昔前の1.7インチや2.3インチのコンデジは、8EV以下なので、フィルミックRGBでは使用することを想定していません。10EVなど、8EVを超えるセンサーを持つ場合には、フィルミックRGBである程度効果が出るはずです。印画紙に、写真を印刷する場合のダイナミックレンジは7EVなので、これを超えるダイナミックレンジは、印刷された写真では、確認できません。一方、パソコンのディスプレイのダイナミックレンジは10EVあるので、画面で見る限り、10EVまでのダイナミックレンジは確認できます。ただし、Jpegのダイナミックレンジは8EVですので、これを超える部分は、実際には、画面で確認することは難しいと思われます。
以上を勘案すると、「センサーのダイナミックレンジが8EV以下のコンデジでは、Jpegで十分であり、RAWファイルを使ったり、RAW現像するメリットはない。まして、フィルミックRGBを使うメリットはない。」と思われます。
ちょっと前まで、筆者は、このように思っていました。センサーのダイナミックレンジ8EVには、RAWのメリットがない壁があると思っていました。しかし、スマホのJpeg画像を分析した結果、Jpegには4EVにも達しないダイナミックレンジの狭い画像が多々あることに気づき、8EVのコンデジでもRAW画像を使うメリットがあるのではないかと思うようになりました。その場合に、元のセンサーのダイナミックレンジが8EV以下なので、ベースカーブを使う従来のワークフローを使うことも可能ですが、そもそもJpegのダイナミックレンジが極端に狭くなる原因が、カメラ内臓のベースカーブに起因しているのであれば、フィルミックRGBを使う方がよい可能性も考えられます。
今回はこの点を見てみます。撮影画像は、いつも使っている公園で、太陽を入れた逆光画像になっています。使ったカメラはニコンのコンデジP330です。このカメラのセンサーは1.7インチで、RAWをサポートしています。逆光で、太陽を入れていますので、ダイナミックレンジは8EVをオーバーしているはずです。
作例
サンプル1はカメラのJpeg画像で、左が取ってだし、右は、トーンイコライザーで補正をかけています。ダイナミックレンジは、左が+0.5EVからー3.1EVで3.6EVです。右も同じです。スマホの一番ダイナミックレンジの狭い画像の2EVよりはましですが、Jpegのダイナミックレンジ8EVを使い切っていないことがわかります。
サンプル2はRAW画像を編集したもので、左がベースカーブによるワークフロー、右がフィルミックRGBを使ったワークフローです。ダイナミックレンジは左が+0.5EVから-5.4EVの5.9EVです。右が+0.2EVから-6.0EVの6.2EVです。2つのワークフローでダイナミックレンジの差はフィルミックRGBの方が多いいのは当然ですが、差はあまりおおきくなりません。しかしながら、中間トーンの表現力では、フィルミックRGBの方がよいと思います。特に、右の木や、水面に映った木の影は、右の方がトーンが豊かです。
まとめ
ダイナミックレンジが8EV相当と思われるコンデジについて、darktableをどのように使うべきであるかという問いに対する答えです。
-
カメラのJpegのダイナミックレンジはRAWに比べて著しく劣ることがあります。コンデジでも、RAWがサポートされているのであれば、積極的にRAWを使いうべきです。
-
draktableの2つのワークフロー(ベースカーブを使うワークフローとRGBワークフロー)の差は、もとのダイナミックレンジが狭いため、小さい。それでも、RGBワークフローの方が中間トーンの再現に優れているので、あえて、ベースカーブによる従来のワークフローを使うメリットはありません。
-
ここでは、当然のこととして、比較はしていませんが、Jpegやベースカーブによるワークフローでも、画僧劣化を起こす「シャドウとハイライト」をつかうメリットは少ないとおもいます。まず第1に、画像劣化の少ないトーンイコライザーを使うべきです。トーンイコライザーはローカルにゾーンごとに露光調整をかけているだけなので、画像劣化がほとんどありません。