darktableとHDRについて(3)

#### カラーフィルターのチューニング疑惑

HDRの記事は、前回で、打ち止めにするつもりだったのですが、

- 「フィルミックRGBのshadows/highlights balance」と「ベースカーブのfusion」のどちらが、HDR風の画像を作るのに向いているか


という疑問がわいたので、試して見ました。

写真1が、フィルミックRGBのshadows/highlights balanceです。

写真2が、ベースカーブのfusionです。

この2枚の写真を見れば、あまりの色の違いに、同じRAWファイルなのかという疑問がわきます。

特に、写真2では、空の青色がきれいに出ていますが、写真1では、空はどんより曇って、別の日のようです。

写真3は、カラーキャリブレーションの使用をあきらめて、カメラのホワイトバランスに戻したものです。やはり、空の色は青くはありません。カラーゾーンを使った空の色の補正も行っています。しかし、効果はほとんどありません。

#### まとめ

最初のお題「『フィルミックRGBのshadows/highlights balance』と『ベースカーブのfusion』のどちらが、HDR風の画像を作るのに向いているか」です。今回の3枚の画像の中では、写真3がベストと思われます。**シーン参照ワークフローで、フィルミックRGBを使っているのであれば、HDR風の画像を作るために、あえて、ベースカーブに戻すメリットはない**でしょう。

問題は、ベースカーブの方が、はるかに色乗りが良い点にあります。Lab色空間を使うと、明暗と色が独立して調整できる長所があります。しかし、ダイナミックレンジが7EVを超えると、ベースカーブでは、Lab色空間が破綻します。明暗を調整すると色も変わってしまうのです。darktableの開発チームが、Lab色空間を避けるフィルミックRGB(シーン参照ワークフロー)を推奨している理由は、ここにあります。しかし、写真2を見ると、カメラが、7EVを超えた場合の、Jpegまたは、Lab空間に合わせて最適化されている疑いがあります。RAW画像には、RGB信号しか入っていないので、表向きは、Lab空間とRAWは独立です。ただし、センサーの前につけるカラーフィルターには、設計の自由度があります。**Jpegまたは、ベースカーブをつかったLab空間編集で、色再現が良くなるように、カラーフィルターをローカルチューニングしている可能性**は残ります。今回の画像は、キャノンのkiss Mで撮影しています。写真2の空の青は、キャノンブルーと俗に言われる色に近いです。キャノンは、カメラの色のチューニングを第1に肌色、第2に、空色にあわせているともいわれています。7EVを超えた場合に合わせて、チューニングされている場合には、フィルミックRGB(シーン参照ワークフロー)では、カーブをRGB独立に扱うか、LUT3Dを使わないと、色再現が難しくなります。しかし、こうしたローカルチューニングは、センサー性能が上がって、ダイナミックレンジが広がると、破綻してしまいますので、行うべきではありません。ローカルチューニングをやりすぎると、現在進行している色表現の標準化が進むと、過去に撮影したRAWファイルは、変換しないと使用できなくなる可能が高くなります。

 

 

f:id:computer_philosopher:20210315102358j:plain

写真1 フィルミックRGBのshadows/highlights balance

 

f:id:computer_philosopher:20210315102417j:plain

写真2 ベースカーブのfusion

 

 

f:id:computer_philosopher:20210315102439j:plain

写真3 フィルミックRGBのshadows/highlights balance(カメラのホワイトバランス)