地域振興のための写真撮影と処理(9)(darktable3.0第95回)

室内マクロ写真

前回はフィールド(野外)マクロ写真の説明でした。

今回は室内マクロ写真になります。野外ですと失敗しても撮り直しが効かないので、どこかで妥協することになりますが、室内では撮り直しができること、機材が選べることから、良い写真の判定基準がより厳しくなることはやむをえません。

しかし、ここでの、連載記事の目的は、地域振興に役立つような観光に効果のある写真を撮ることにあります。また、想定している読者は、スマホまたはコンデジで写真を撮るレベルの人、地域振興には関心が深いが、プロのカメラマンのようには機材にお金をかけられない人です。この課題は、実際に、地方の観光パンフレットを見て、その写真のレベルのあまりの低さに驚いたとことに発端があります。実際に、地方では、予算が潤沢にあるわけでもないので、低予算でできるだけ高いパフォーマンスを上げることが目的になります。

撮影機材と条件

機材と条件は対象物との距離により異なります。

どこまで、マクロで拡大できるかは、カメラとレンズの性能によります。

カメラと対象物の間の距離が数cmより、小さくなると、カメラに付属のストロボの光はあたらなくなります。また、窓から入ってくる自然光も届かなくなるので、補助光源が必須になります。

これより距離がある場合は、自然光やストロボが使えます。ただし、ストロボは瞬間光なので、調整は難しいです。自然光は天気次第なので、補助光源を1つは準備した方がよいと思います。

ぼぼ、どのカメラでも可能なマクロは、ワンショットに切手が数枚写るくらいの倍率です。ワンショットに切手1枚の一部を撮影できるカメラは限定されています。なので、以下では、一般的な拡大比率を例にあげます。

物体との距離

サンプル1は、コンデジのマクロモードで撮影したものです。

多くのコンデジでは、だいたい、切手数枚が入るくらいが、拡大の限界になります。

表示によっては、実際の大きさより大きくなりますので、マクロのイメージが分かると思います。

マクロモードでは、一般に、ズームを広角側に振り切ったうえで、ピントがあう最短距離を選択します。

より望遠側では、サイズが小さくなると思います。これは、別に、決まり事ではないので、望遠側の方が、サイズが大きくなるのであれば、望遠側を使ってもかまいません。試してみてください。

なお、スマホでは、マクロ用のクリップレンズをつかうと、良い場合があります。スマホコンデジともに、同じサイズのセンサーを使っていれば、画質に大きな差はありません。

切手は、マクロ撮影の練習をするには、差が分かりやすい素材です。封筒に貼ってある使用済みの切手で、十分ですので、試してみてください。

 

 

 

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サンプル1


 

サンプル2は別のコンデジのマクロモードで撮影したものです。サンプル1とほぼ、同じ拡大比率です。

 

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サンプル2

 

サンプル3は、サンプル2と同じコンデジで、最短距離までさらに、近寄った場合です。この距離でも、ピントが合った表示がなされます。

しかし、画質がおかしいです。切手の表面にザラザラの粒子がみえます。これは、最初、拡大倍率が大きくなって、切手の表面のザラザラが見えるようになったと解釈していましたが、サンプル2では、まったく見えないので、ノイズと思われます。また、この距離では、レンズの先端と切手の間の隙間が小さくなり、切手の上からの光は届かなくなります。補助光源がないと、撮影できません。補助光源からの郷里によって、切手の上の明るさにむらができます。サンプル3では、上が下より光源に近くあかるくなります。

焦点は、合うのですが、このカメラでは、サンプル2までの距離に留めるべきでしょう。

一方、サンプル1を撮影したコンデジでは、ここまで、近寄ることはできませんが、ピントの合う最短距離で撮影しても、このような問題は発生しません。

 

マクロ撮影は、カメラ、レンズ、対象物の形状、撮影距離、絞り、ライティングで条件がことなり、一概に、こうすれば、良い写真が撮れるという公式は存在しません。いくつか、試してみましたが、あまりに複雑なので、ここで紹介することは割愛します。

サンプル1からサンプル3に見るように、自分のスマホコンデジの実際の撮影結果をパソコンのディスプレイで見ながら、最適な撮影条件を探してみてください。

 なお、最大倍率にして、最も近づいたときに、ノイズがのる現象は、他のメーカーのコンデジでも、起こりました。光の当て方を変えた(レンズと対象の隙間が狭いので、隙間の横から光を入れた)ためかもしれませんが、切手についている傷ではないので、避けた方がよいとおもわれます。

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サンプル3


 

事例研究

サンプル4は、サンプル2と3で使ったカメラによる撮影結果です。

実際のサイズは、横が約10cmです。

このように、撮影対象が立体的であれば、サンプル3の距離まで、近づくことはありません。

ですから、より過ぎて、ノイズがでるのは、平面的な対象物のときに限られます。

 

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サンプル4


 サンプル5も、サンプル4と同じカメラによる撮影です。

 

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サンプル5


 サンプル4とサンプル5を比較すると、サンプル5では、対象物が明瞭に映っているのに対して、サンプル4では後方の蕾は、ボケてしまって、よくわかりません。

では、どちらが良い写真でしょうか。

良い写真とは使う条件に依存します。実験レポートや観察レポートのような科学技術写真では、サンプル5のように、隅々までくっきり写っていることが必要です。一方、観光ガイドブックに使うようなアート写真(見る人に強い印象をあたえる)では、サンプル4のような一部がボケたり、影になっている写真がよい写真になるでしょう。観光パンフレットで、サンプル5のような、生き物図鑑に用いるような写真を並べることは、全体の印象を薄くします。また、アート写真では、他の写真との組み合わせでベストショットが変わります。これに対応するには、印象の異なる写真を複数残しておく、必要があります。とくに、カラーの配色は大事です。サンプル5は、背景にいつもの緑色のシートを使いましたが、貝を撮影するのであれば、海を連想する青色のシートをつかった方がより効果的であったと思われます。この場合には、貝は白ですから、背景に白いシートは使えないわけですが、白を避けるだけでなく、より工夫すべきでした。

おまけ

darktableのカラールックアップモジュールをつかって、サンプル5の背景の色を変更してみました。

ここでは、紹介してせんが、darktableには、色々と面白い機能があります。

 

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おまけ