地域振興のための写真撮影と処理(10)(darktable3.0第96回)

望遠レンズの画角

画角の最後に、望遠レンズを取り上げます。これは、鳥や動物など近寄れない対象を撮影するのに必須です。レンズの画角による写り方はセンサーの大きさで異なるため、一般に、35mmフィルムカメラ換算で、画角を表示します。ここでも、それに、準じます。

望遠レンズの撮影の場合、画角200mmを前後して撮影条件が大きく変わります。

  • 200mm以下の場合。これは、普通のスマホコンデジで撮影できる最大の画角になります。もちろん、スマホコンデジでは、200mmをサポートしていない機種も多いですが、画像をトリミングすることで、ほぼ、同じ効果を得ることができます。レンズ交換式カメラのキットレンズ(標準と望遠ズーム付き)でサポートできる画角もここまでです。これは、ちょっと拡大するレベルで、大きな動物を近く的近くで撮影するには、十分な画角です。このレベルですと、標準画角の撮影に準じたフレーミング、画質が利用できます。

  • 200mmを超える場合。小鳥を撮影するには、200mmを超える画角をサポートした機材が必要になります。現在、このレベルの撮影が可能な機材は、特殊な機材になります。レンズ交換式カメラでは、レンズが非常に高価になり、アマチュアの予算を超えます。スマホコンデジでは、望遠に対応した特殊な機種に限定されます。スマホコンデジは、センサーが小さいので、画質には、期待できませんが、ともかく、大きく写っているということが重要です。しかし、小鳥の撮影では、シャッターチャンスがいつあるかわかりませんので、常に持ち歩けるスマホコンデジによる撮影のメリットは大きいと思います。一方、出現時間が決まっている月の撮影は、大型機材向けになります。

ここでは、200mmを超える望遠能力のあるコンデジ(4.5-135mm:35mm判換算25-750mm相当の撮影画角)による撮影例を紹介します。これは、30倍望遠というキャッチフレーズのコンデジです。

動体撮影の課題

鳥の撮影を例にあげます。200mmを超える場合には、目で見える全景に比べ、カメラのフレームの範囲が非常に小さくなります。例えば、鳥が飛んでいる場合、飛んでいる鳥に、フレームを合わせることは困難です。このような動体撮影を行う場合には、次のような難しさがあります。

  • フレームを合わせにくい。

  • 手振れしやすい。

  • 被写体ブレしやすい。

手振れや、被写体振れを防ぐには、シャッター速度を早くする必要があります。モード付のコンデジであれば、シャッター速度優先で、シャッター速度を少なくとも1/1000から1/2000秒にする必要があります。しかし、こうすると、センサーに入る光量が減るため、画質が劣化してしいまいます。

動体撮影は、フレーミングが難しい上、仮に、撮影できても、撮影できた写真が、満足できる可能性は低いです。

鳥によっては、羽ばたかないで滑空する種もいます。この場合には、上手くいけは、撮影できますが、こうした修正のない種の撮影は困難です。

サンプル1は飛んでいる鳥を撮影したものです。今回、飛んでいる鳥を撮影したものの中では、一番大きく、写っていた写真です。残念ながら、右の羽の先端がかけています。その点では、失敗写真ですが、飛ぶ鳥を撮影することは難しい例として取り上げました。換算画角は160mmです。

サンプル1:162mm(29mmx5.6) F6.0 1/640 一部トリミングしています。

 

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サンプル1

サンプル2は、被写体の全体が撮影できた例です。しかし、この場合には、画角が換算380mmで狭く、おまけに、1/5にトリミングしてありますので、サンプル1より画質が悪くなります。サンプル2の鳥は滑空状態にあるので、動体でも、撮影できました。

サンプル2:380mm(68mmx5.6) F6.3 1/400sec  面積1/5にトリミング。

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サンプル2

 

サンプル3は、止まり木に着地する直前を撮影したものです。止まり木から離陸した直後、止まり木に着地する直前は、飛行速度が遅くなりますので、撮影しやすくなります。特に、離陸する場合は、近づけば鳥が危険を察して離陸するので、その瞬間をある程度は予測することが可能です。ここでは、説明上、止まり木を写していますが、トリミングで外してしまえば、飛んでいる鳥の写真になります。

サンプル3:162mm(29mmx5.6) F6.0 1/640sec. 面積1/5にトリミング。

 

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サンブル3

 動体の撮影は、画角が狭くなると、フレーム内に対象をとらえることが難しくなります。また、フレーム一杯に、対象が写っていれば、画質は良くなりますが、一つ失敗すると、サンプル1のように、被写体の一部がかけてしまいます。マニュアルでフレーミングすることは難しいですが、対象が移動しているので、三脚を使うことは、サンプル3のような例外を除いては困難と思われます。

静体の撮影

静体の場合には、三脚を使えば、安定したフレーミングが可能になります。以下の例は、手持ちで撮影した場合です。

サンプル4は画質が悪く失敗例です。

EXIFではこの画像の焦点距離が270mmになっています。このカメラの焦点距離は換算する前の値で、4.5-135mmです。焦点距離の最大値は135mmで、270mmはありません。サンプル4では、2倍のデジタルズームが作用しているのです。これが、画質が悪くなっている要因の1つです。メカニカルで、最大のズーム倍率になっていること、トリミングの比率が大きいことも画質が悪くなる原因です。

サンプル4:1500mm(270mmx5.6) F6.4 1/640 面積1/4くらいにトリミングしています。

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サンプル4


  

サンプル4の白飛び(赤)と黒飛び(青)を示します。表示するには、ダークルームのメインウィンドウの右下の左から2番目の正方形が三角形に分かれているアイコンをクリックします。これは、Jpegで片側99%を超える部分を示しています。鳥の白いからだの一番明るい部分は白飛びしています。

デジタルズームを使わないこと、白飛びを避けることが大切です。

 

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サンプル4 白飛びと黒飛び


 

サンプル5は、白鳥で、撮影対象が大きいため、今回の被写体の中では、一倍撮影しやすい事例です。

 

サンプル5:268mm(48mmx5.6) F6.3 1/640 一部トリミングしています。

 

 

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サンプル5

サンプル6は鶏くらいの大きさの鳥です。これも撮影は特に難しくありませんでした。頭の部分が黒で、目が埋没すると印象が合くなるので、頭部を画像編集しています。鳥を撮影する場合でも、目がきれいに写っていることが、良い印象を与えます。

 

サンプル6:320mm(57mmx5.6) F6.3 1/80 一部トリミングしています。

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サンプル6


 サンプル7は、鳩と燕の中間くらいの大きさの鳥です。木にとまっているところを撮影しました。手前の枝が鳥の胴体を遮っていて、若干残念な画像になっています。撮影時点で、障害物が写っていないか確認することも重要です。

 

サンプル7:627mm(112mmx5.6) F6.4 1/80 面積半分くらいにトリミングしています。

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サンプル7

サンプル8は、サンプル7と同じ鳥と思われます。デジタルズームになる手前で撮影するつもりでしたが、ここでは、1.2倍のデジタルズームがかかかってしまいました。サンプル7より画像が鮮明なのは、光線の違いです。サンプル7では、木の上から光が入って、逆光になっています。

 

サンプル8:907mm (162mmx5.6)F6.4 1/250sec。トリミングしてあります。

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サンプル8



 

サンプル9は、キャベツを食べている鳥です。背景の寒冷紗が雰囲気を壊しています。

鳥の大きさは、サンプル8と同じくらいです。

 

 

サンプル9:750mm (135mmx5.6) F6.4 1/125sec。 トリミングしてあります。

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サンプル9



 


  

まとめ

能力的には、換算750mmまでの拡大が可能なコンデジでの事例でした。200mmを超える距離は、鳥の撮影では効果があります。ただし、これは静体に対してであって、動体の場合には、200mmを超える焦点距離を使いこなすことは容易でありません。失敗の原因には、カメラの自動焦点がおくれることもありますが、第1には、フレーミングが困難なことだと思われます。

望遠レンズの撮影、特に動体は難しいですが、不可能というわけではないので、チャレンジのし甲斐のあるテーマと思われますし、良い写真がとれれば、観光案内の魅力も倍増すると思われます。