Dura lex, sed lex(デュラレックス、セドレックス)

1)Dura lex, sed lexの意味

 

ソクラテスが、「悪法も又法なり」といったのは間違いで、法の基本は、Dura lex, sed lexでした。

 

Dura lex, sed lexは、「すべての人にとって避けられない平等な法を通じて、あらゆる恣意的な可能性を払拭するための成文法」を守るべきであるという主張です。



「あらゆる恣意的な可能性を払拭する」ことがキーポイントです。

 

2)原発の安全性

 

青木美希氏は、「なぜ日本は原発を止められないのか?」で次のようにいっているそうです。(印南敦史氏の記事の引用、筆者要約)

1974年に電力業界が癒着の批判を受けて企業献金の廃止を宣言しました。

 

2014年7月、関電で政界工作を長年担った、内藤千百里(ちもり)元副社長(当時91)が、少なくとも1972年から18年間、在任中の歴代首相7人に「盆暮れに1000万円ずつ献金してきた」と、朝日新聞に証言しました。また、内藤氏は、自民党有力者らに毎年2回、盆暮れのあいさつと称して各200万〜1000万円の現金を運ぶ慣行があったと証言しました。内藤氏は、政界全体に配った資金は年間数億円に上ったと語りました。(注1:)

 

内藤は、献金の目的は、原発政策の推進や電力会社の発展であり、「原資はすべて電気料金だった」、「許認可権を握られている電力会社にとって権力に対する一つの立ち居振る舞いだった」といいました。

 

2011年7月には電力会社9社の役員の92.2%が自民党政治資金団体国民政治協会」本部に個人献金していた実態が判明し、会社ぐるみの「組織献金」であると指摘された(同年7月23日「共同通信」より)。

<< 以上文献

「歴代首相に盆暮れに1000万円ずつ献金」「地域振興で潤うのは一世代だけ」原発にまつわる話 2024/03/28 Newsweek 印南敦史

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2024/03/1000-42.php

>>

 

青木美希氏は、原子力村の村長は、総理大臣であると言っています。

 

注1:

株主は、献金によって株価を意図的に引き下げたとして、株主訴訟を起こすことは可能です。

 

3)問題の整理

 

1974年に電力業界は企業献金の廃止を宣言しました。

 

しかし、それは、守られていませんでした。



3-1)「あらゆる恣意的な可能性を払拭する」

 

2024年1月5日、アラスカ航空1282便、ボーイング737MAXの「737-9」がポートランド国際空港を離陸後、上昇中に機体後部の固定されていた緊急ドアが突然機外に吸い出される事故が発生し、離陸したばかりのポートランド国際空港へ緊急着陸しました。

 

事故を受け、FAA(アメリカ連邦航空局)は、全世界の航空会社に向けて該当する機体の緊急点検をする緊急航空改善命令を出しました。中立性の観点から運輸省・FAA(アメリカ航空局)から切り離された事故原因の究明をする「NTSB(アメリカ国家輸送安全委員会)」は、ボーイング社に対して90日以内の改善計画の提出を求めました。

 

つまり、ボーイング737MAXの事故に対しては、「あらゆる恣意的な可能性を払拭する」ために、運輸省・FAA(アメリカ航空局)から切り離された事故原因の究明をする「NTSB(アメリカ国家輸送安全委員会)」は、原因究明を行なっています。

 

献金の目的は、原発政策の推進でした。

 

献金は、「恣意的な可能性」が拡大できることを意味しています。

 

これは、Dura lex, sed lexに反します。

 

自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を調べているのは、利害関係者です。「恣意的な可能性」が拡大できる状態であり、これは、Dura lex, sed lexに反します。

 

アメリカが、NTSBを使って、「あらゆる恣意的な可能性を払拭する」努力をしている理由は、航空機の安全性を、科学的な基準にだけ基づいて判断するためです。

 

NTSBを使って、ボーイング737MAXの事故の原因を解明しなければ、ボーイング737MAXが、また、事故を起こす可能性があるからです。

 

NTSBは、パース流にいえば、ブリーフの固定化法に、科学の方法を用いるための必要条件になります。

 

青木美希氏の視点は、「なぜ日本は原発を止められないのか?」です。

 

しかし、日本の原発の安全性は、原子力村によって評価されてきました。

 

NTSBのように「あらゆる恣意的な可能性を払拭する」努力がなされてきたわけではありません。

 

日本の原発の安全性を、原子力村によるのではなく、NTSBのような、独立機関によって、「あらゆる恣意的な可能性を払拭する」努力がなされて来たなららば、原発の安全性はより高かったと予想できます。

 

アメリカの原発の安全性は、日本の原発の安全性より高かったと予測できます。

 

日本の原発は、アメリカの原発よりも、事故を起こす確率が高かったと予測できます。

 

これから、福島原発事故のような大規模なメルトダウン事故が、どうして、アメリカではなく、日本で起きたかが理解できます。

 

これは、確率の差の問題ですので、統計的因果律の世界のテーマです。

 

パーティ券の政治献金問題と、福島原発事故の間には、統計的な因果関係が考えられます。

 

3-2)ミームの問題



Dura lex, sed lexを、「悪法も又法なり」に読み替えるのは、法度制度のミームです。

 

法度制度には、人権はなく、三権分立ではありません。

 

政治主導とは、利権主導であり、三権分立の破壊でした。

 

青木美希氏は、帰納法によって、何が起こったかを調べています。

 

青木美希氏は、法度制度のミームの結果生じた、原子力村を調べています。

 

しかし、原子力村ができる原因が、法度制度のミームにあるのなら、ミームが変わらなければ、問題は解決しません。

 

グレン・カール氏は、トクヴィルの民主主義を次のように解説しています。

トクヴィルは民主主義を、特定の統治の構造やプロセスの結果としてではなく、社会の慣行や信念から生まれる社会現象として捉えている。つまり、アメリカの民主主義は、弱い中央国家の下で自治を主張する活力ある市民社会から、強く多様でそれゆえ寛容な宗教観に由来する道徳的な市民文化から、規制された競争を通じて個人の利益を追求することが社会に利益をもたらすというアメリカ独自の「見識ある自己利益」の文化から、生まれたのだ。

<< 引用文献

トランプ大統領」の出現を19世紀に予見した男 2024/03/28 Newsweek グレン・カール

https://www.newsweekjapan.jp/glenn/2024/03/19.php

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アメリカ独自の「見識ある自己利益」の文化、あるいは、「社会の慣行や信念」は、ミームです。トクヴィルは、民主主義をミームが生み出すものであると考えていました。

 

カール氏の解説は続きます。

トクヴィルは、自己利益が利己主義に堕落し、理性ではなく感情的な訴えが有権者に響き、権力が中央集権化して、民主主義が多数派の専制、ひいては専制君主支配下に置かれることを危惧した。

 

トクヴィルは、全ての市民が同じ権利と機会を共有し、一つの文化的共同体に融合しない限り、奴隷制という分断の遺産が民主主義を破壊するだろうと警告した。

これから、カール氏は、トクヴィルは、トランプ氏の出現を予測していたと説明しています。

 

トクヴィルは、「全ての市民が同じ権利と機会を共有し、一つの文化的共同体に融合」することが、ミームを維持するために必要な条件であるといいます。

 

「全ての市民が同じ権利と機会を共有」は、人権の確保であり、Dura lex, sed lexになります。

森永卓郎氏は、「学校一年生のときはアメリカの公立小学校に通っていました。四年生時にはオーストリアのウィーン、五年生のときはスイスのジュネーヴで過ごしました」といいます。

 

そして、受けた教育について、次のように述べています。

欧米の学校って、黙って聞いているだけの人間には存在価値を認めてくれないんです。先生が言ったことに反論しないとダメ。だから授業が常にディベートみたいになるんですよ。

 

一方、日本人は言われたことに口答えすると叱られる。なんでもはいはい聞く子どもがいい子とされやすい。

<< 引用文献

自民党政権を倒すための番組を作るぞ!」森永卓郎さんが聞いた「テレビ朝日」プロデューサーのまさかの「衝撃発言」2024/03/18 現代ビジネス 鈴木 宣弘 森永 卓郎

https://gendai.media/articles/-/126543

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「日本人は言われたことに口答えすると叱られる。なんでもはいはい聞く子どもがいい子とされやすい」というのは、法度制度のミームです。

 

4)まとめ

 

中立的な第3者機関がなく、利害関係者が業界を制御していれば、科学の方法は、つかわれません。

 

これは、すべての問題は、科学的に解決されないことを意味します。

 

「あらゆる恣意的な可能性を払拭する」を基準にすれば、行政指導は、法の精神に反します。

 

小林製薬が製造する紅麴(こうじ)原料を含むサプリメントが原因とみられる健康被害が相次いでいる問題が起こっています。

 

これは、機能性表示食品です。

 

しかし、機能性表示食品制度は科学的には、破綻しています。

 

機能性表示食品を国が関与する必要性はありません。

 

必要であれば、業界団体が、第3者機関を含めてつくればよいだけです。

 

機能性表示食品は届け出だけですから、国は関与している必要はありません。

 

「◆消費者庁が中心となり、販売後の監視を行います」が、制度の矛盾を示しています。

 

ここには、行政指導を残したいという利権の意図が見えます。

 

ヒ素ミルクのように、食品事故は過去にも起こっています。

 

今回の問題が、機能性表示食品の問題なのか、一般の食品の問題なのかすら、整理されていません。

 

機能性表示食品のデータは、そのまま、ビッグデータに変換できる形式ではないので、自動分析は不可能です。

 

消費者庁の説明の一部を引用します。

機能性表示食品とは?

 

制度の特徴

 

1.疾病に罹患していない方(未成年者、妊産婦(妊娠を計画している方を含む。)及び

授乳婦を除く。)を対象にした食品です。

2.生鮮食品を含め、すべての食品(一部除く。)が対象となっています。

3.安全性及び機能性の根拠に関する情報、健康被害の情報収集体制など必要な事項

が、商品の販売前に、事業者より消費者庁長官に届け出られます。

4.特定保健用食品とは異なり、国が安全性と機能性の審査を行っていません。

5.届け出られた情報は消費者庁のウェブサイトで公開されます。



特定保健用食品(トクホ)

 

健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められ、「コレステロール

吸収を抑える」などの表示が許可されている食品です。表示されている効果や安全性

については国が審査を行い、食品ごとに消費者庁長官が許可しています。

 

機能性表示食品

 

事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品です。販売前

に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたもの

です。ただし、特定保健用食品とは異なり、消費者庁長官の個別の許可を受けたもの

ではありません。

 

機能性表示食品の安全性や機能性はどのように確保されているの?

消費者の皆さんは、商品の安全性や機能性がどのように確保されているのかなどについて、商品の情報を販売前に確認できます。

消費者庁が中心となり、販売後の監視を行います。

 

4.健康被害の情報収集体制は?

消費者、医療従事者などからの連絡を受けるための体制が整えられています。

パッケージに事業者の連絡先(電話番号)が必ず表示されています。

<< 引用文献

「機能性表示食品」って何?

https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/about_foods_with_function_claims/pdf/150810_1.pdf

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