観測系と経済活動評価(第4版)

1)観測系の特徴

 

ある企業で、ある労働者が1日働いて経済活動をした場合を考えます。

 

この経済活動は、どのように観測されるでしょうか。

 

空間統計:

 

GISのグリッドデータであれば、あるグリッドである日に生産活動があったことになります。グリッドの中に含まれる労働者の数はわかりませんが、販売価格で、いくらの価値を生み出し、コストはいくらかかり、純利益はいくらになったかが観測されます。

 

このグリッドを行政区単位で集計すれば、市町村、都道府県、あるいは、日本国の経済活動の総計データが得られます。

 

企業統計:

 

ある労働者が、働いていた企業単位で、観測データを集計することもできます。

これは、企業の経済統計になり、毎日の生産とコストのデータ、仕入れと売り上げのデータなどの一部に労働者の活動が反映されます。

 

一般に、株式市場や、景気判断に使われているデータは、企業統計です。

 

エネルギー統計:

 

CO2の発生量が問題になる場合には、ある労働者が1日働いて経済活動を行った場合のエネルギーやCO2の発生量が問題になります。

 

労働統計:

 

労働者単位で、経済活動を観測して、集計します。

 

企業統計が、企業の利益を計測するのと同じように、労働統計は、家族単位に変換すれば、労働者の家計がわかります。

 

これらは、同じ経済活動を観測していますが、観測系で、見え方に違いがあります。

 

2)計算しやすい次元

 

政府の経済政策は、企業統計によっています。

 

しかし、企業統計には不備が多くあります。

 

たとえば、消費税では、いままで、インボイスが不要であった小さな企業の経済データの精度は低いです。

 

企業が赤字と認められれば、課税対象になりませんので、税収は、企業活動の一部しか反映していないことになります。

 

全てのデータの中で、もっとも信頼性の高いデータは、人口データです。

 

幽霊企業は多くありますが、日本人であれば、出生届をしていない幽霊人口は少ないです。

 

つまり、労働統計が、一番精度の高いデータになります。

 

労働者単位の労働統計でみれば、日本のGDPは、各人の生産した便益の合計になります。

 

これは平均値でいえば、「労働人口X労働者の平均生産性」になります。

 

ここで言っている「労働者の平均生産性」とは、生産性を労働者一人当たりを単位に計算した値の意味で、経済統計によっては、少しずれています。

 

そのずれを、誤差の範囲であると考えれば、日本のGDPをあげて経済を活性化するには、労働者の平均生産性をあげる以外の方法はありません。

 

金融緩和、円安、インフレで、円換算のみかけのGDPは変化しますが、ネットのGDPが増えることはありません。

 

2023年1月1日の日本の人口は1年前に比べ0.65%減っています。

 

2023年5月の15~64歳人口は、 7395万3千人で、前年同月に比べ0.33%減っています。



日本のGDPが減少しないためには、生産年齢人口(15~64歳)の減少率以上に、生産性をあげる必要があります。

 

2023年の社人研の将来予測は2020年を基準で、2021年からは推定値になります。

 

図1が、生産年齢人口の増減率(2021年以降は予測)です。

 

ネットで検索したところ、生産年齢人口の増減率を問題にしている人は誰もいませんでした。



これは、社人研のデータから、筆者が作成したものです。

 

今後、2030年頃までは、毎年0.7%くらい、2030年以降は、毎年1.2%くらい生産性をあげる必要があります。

 

生産性が上がれば、給与が上がります。

 

つまり、2020年代は、インフレを除いたネットで、毎年0.7%給与をあげる必要があります。

 

これは、生産性の悪い、給与の安いゾンビ企業を撤退させて、DXを進めないと達成できません。0.7%は、 2023年より、生産性が減らない条件です。

 

遅れを取り戻すには、1%以上のアップが必須になります。



2023年の実質賃金は、減少し続けていますので、円換算の企業の見かけの利益は、過去最大ですが、経済政策は破綻しています。

 

生産性をあげる一番簡単な方法は、DXの進んでいない生産性の低い企業の法人税率を利益に関係なく、外形で一律にあげることです。

 

現在のように、DX促進のために補助金をつけることは、DXが遅れているほど、補助が増えますので、逆効果です。そのそも、財源不足であれば、税金を投入しない政策の方が優先度が高くなるはずです。



  

 図1 生産年齢人口の増減率(2021年以降は予測)

 

 

 

引用文献

 

日本の将来推計人口(令和5年推計)社人研

https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2023/pp_zenkoku2023.asp



4)補足1:市場原理

 

労働人口X労働者の平均生産性」は、経済の供給側を説明しています。

 

需要や市場との関係が問題になります。

 

市場において、需要と供給がつり合って価格と生産量(=消費量)が決まるというのは、市場原理と呼ばれる経済学のセントラルドグマです。

 

市場原理には、時間変数が入っていません。

 

現実には、需要と供給はバランスがとれず、市場は、均衡点に向けて変動します。

 

ですから、ある瞬間をとってみれば、均衡が成立していることはほとんどありません。

 

この均衡点に向けた変動を人工的に発生させれば、経済が制御できるというアイデアが、ケインズ有効需要であったり、サプライサイドの経済学になります。

 

とはいえ、市場原理を無視して、無制限に需要や供給を制御できると考えている経済学者は少数です。

 

ケインズの考えていた景気変動は、2、3年でした。

 

ケインズは、10年程度の中期変動は、市場均衡にしたがっていると考えていたと思われます。

10年程度の中期変動は、フィルタ―をかければ、抽出できます。

 

より単純にいえば、10年平均でみれば、需要と供給はバランスがとれます。

 

サプライサイドで、供給量を変えることによって、景気に働きかける効果も、2、3年以下の変動成分になると思われます。

 

「ものを作るー>ものが売れるー>収入が増えるー>ものが売れるー>ものを作る」という、より長周波の拡大再生産のループは考えられますが、これが成立するためには、次の2条件が必要です。

 

(D1)生産性が継続的に改善する

(D2)労働配分率が十分に大きい

 

これは、内需型の経済と言われる条件になります。

 

筆者は、「経済成長=労働人口X労働者の平均生産性」は、10年より長期の周波数成分については、成立すると考えています。

 

これは、サプライサイドの経済学とは、別の論理です。

 

5)補足2:人間の推論の限界

 

因果関係が複雑、あるいは、情報が不完全な(複雑不完全)場合には、人間は、推論ができません。

 

コンピュータのモデルは、そのような条件を考慮した推論ができます。

 

複雑不完全なモデルは、帰納法では作れません。アブダプションの推論が必要です。

 

とはいえ、状態空間法や統計的因果モデルが簡単に使えるようになったのは、ここ10年から20年のことです。

 

これは、データサイエンスの実用化や、AIの実用化に対応しています。

 

これから、生成AIの性能を帰納法で論ずることはナンセンスなことがわかります。

 

10年前に、帰納法の時代は終わってしまいました。生成AIが出てきたことは、帰納法の終わりを意味しています。

 

これは、生成AIが万能であるという意味ではありません。

 

因果モデルは、結果(目的)を達成するための原因を探索します。この手順がアブダプションです。

 

何が、目的にふさわしいかは、人間が決めます。

 

その後の推論は、人間がアブダプションをしたり、生成AIのようなコンピュータのモデルを使いながら進めるべきです。

 

科学は基本的には、価値を取り扱いません。

 

例外は経済学です。経済学は、価値を扱います。

 

経済学の第1の目的は、貧困問題の解消です。

 

経済学は、そのために、経済成長を最大化する条件を探索します。

 

「経済成長=労働人口X労働者の平均生産性」からすれば、労働者の生産性をあげることが良い行ないになります。

 

高学歴ワーキングプア」が、量産されています。

 

そこでは、博士号を取得した人の年収が少ないことがおかしいという論調です。

 

しかし、「経済成長=労働人口X労働者の平均生産性」の公式からすれば、労働者の生産性をあげることの出来ない学問は、貧国を作り出す学問になります。

 

貧困を作り出す学問には、経済価値がありませんので、年収が少ないことは合理的です。

 

問題は、経済価値がない貧困を作り出す学問を教えている大学の教授が高給取りである点にあります。

 

経済価値がない貧困を作り出す学問は、デスキリングの学問です。学習すればするほど、収入が減る学問です。

 

もちろん、学問の自由があるので、学者が何を研究するかは自由です。ただし、それは、税金を投入しない範囲です。

 

納税者は、税金をつかって、貧困の原因を作っていることには納得できないと思います。

 

大学(University)には、各学部は不可侵の前提があります。

 

各学部の価値は、独立していて、なくならないという前提があります。

 

なので、大学では、不要になったデスキリングの学問の話はタブーです。

 

エビデンスベースのデータサイエンスが実用化したのは、10年程前です。

 

2009年に、「The Fourth Paradigm: Data-intensive Scientific Discovery」が出たころに、帰納法は、データサイエンスに取って替わられました。

 

帰納法を中心にした人間の推論は、コンピュータと協働するデータサイエンスには、勝てないこと、エビデンスに基づいた検証がなされていない仮説は、半分以上が間違いであることが判りました。

 

この時点で、帰納法を根拠としている学問は、経済価値がない貧国を作り出すデスキリングの学問になってしまいました。

 

文部科学省は、経済価値がない貧国を作り出すデスキリングの学問を放置しています。

 

しかし、先進国が、STEAM教育に力をいれていることは、デスキリングの学問を、スキリングの学問に入れ替えていることを意味してます。

 

STEAMのAは、Artです。これは、目的(結果)を設定することに相当します。

 

因果モデルは、目的(結果)を実現する原因を探して、操作しますが、目的は人間が決める必要があります。

 

STEAM教育は、日本では、海外の成功事例をコピーすればよいという前例主義(帰納法)になっています。この推論自体が、科学的に間違っています。

 

欧米では、1959年のスノーの「2つの文化と科学革命」以降、教育の目的は、エンジニア教育によって、生産性をあげて、国を豊かにすることです。これは、科学技術立国と言われることもあります。

 

今世紀に入って、エンジアリングの中心はデータサイエンスになったので、エンジニア教育の中身が、STEAM教育にバージョンアップしています。

 

芸術は、経済価値がない貧国を作り出すデスキリングの学問です。芸術作品には、経済的な価値がありますが、芸術によって、生産性が向上することはありません。

 

もちろん、芸術には、人生を豊かにする価値があります。しかし、それは、貧困問題が無視できる場合です。優先しなければならない貧困問題がある場合には、芸術の優先順位が低くなります。

 

特に、母子家庭への救済の不十分さは、日本が、もはや芸術に税金を投入できる先進国ではなくなったことを示しています。

 

6)補足3:Artの問題

 

Artは、世の中にない人工物を作ることです。したがって、Artのスタートには、何を作るかというビジョン(目標)があります。

 

ビジョンは主題になる場合もあります。

 

目標があれば、それを達成するための設計図やロードマップができます。

 

ところが、日本の組織には、ビジョン(目標)も、ロードマップもありません。

 

Artが欠如しています。

 

野口悠紀雄氏は、2023年11月16日のNewsweekで、次のように言っています。(筆者要約)

政策目標を変える必要

「実質賃⾦上昇」を目標に経済政策の誤りをもたらす最⼤の要因は政策目標が混迷していることだ。

原点に戻れば、重要なのは⽇本⼈の暮らしを豊かにすることだ。だから、政策目標は、物価でなく賃⾦とすべきだ。「賃上げを伴う持続的な物価上昇」というような曖昧な表現でなく、「実質賃⾦の持続的な上昇」を目標にすべきだ。

 

「実質賃⾦の持続的な上昇」は、「生産性の持続的な上昇」によってしか、もたらされません。

 

「生産性の持続的な上昇」は、エンジニアリングによってしかもたらされません。

 

1959年に、スノーは、「2つの文化と科学革命」で、エンジニア教育で、国は豊かになると主張して、エンジニア教育を拡張しました。

 

エンジニアは生産性の上昇によって、賃金の上昇を生み出します。

 

つまり、1959年から、英国では、実質賃金の持続的な上昇が政策目標になっています。

 

生産性の向上に寄与するエンジニア教育の充実が教育の政策目標になっています。

 

日本では、英国に50年以上遅れて、政策目標の議論をしていることは、驚くべきことです。

 

これは、Artを無視してきたことに原因があります。

 

2023年3月8日に、中央教育審議会は「今後の教育政策に関する基本的な方針」を出しています。

目標に関する目次は、以下です。

 今後の教育政策に関する基本的な方針 

(総括的な基本方針・コンセプト) 

(1)2040 年以降の社会を見据えた持続可能な社会の創り手の育成 

(2)日本社会に根差したウェルビーイングの向上 

(5つの基本的な方針) 

グローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成 

②誰一人取り残さず、全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向けた教育の推進 

③地域や家庭で共に学び支え合う社会の実現に向けた教育の推進

④教育デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進 

⑤計画の実効性確保のための基盤整備・対話 

これは、Artの条件を満たしていません。

 

「誰一人取り残さず、全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向けた教育の推進 」は、形而上学です。

 

この方針では、分数のできない大学生を減らす計画はありません。

 

分数が出来なければ、人数や症状に合わせた薬の配合ができません。

 

食品添加物の安全な濃度の範囲、農薬の安全な濃度の範囲が計算できません。

 

その結果、事故が起こり、最悪の場合には、人が死亡します。

 

それでは、まずいので、分数が出来なければよい雇用機会がありません。

 

つまり、分数ができなければ、取り残されます。

 

筆者は、分数の出来ない大学生の割合は、30%以上に達していると推定しています。

 

「誰一人取り残さず」は、計画を実施する前から、不可能なことは確かです。

 

中央教育審議会の委員には、エビデンスに基づく、科学的な思考のできる人はいないことがわかります。

 

中央教育審議会は、科学技術立国に関心がありません。

 

「今後の教育政策に関する基本的な方針」は、形而上学で、リアルワールドとは関係がありません。

 

審議会は、ポリシーに従って教育をすれば、自己実現ができると主張します。

 

しかし、この自己実現は、観測不可能な形而上学です。

 

形而上学をデスキリングで学べば、給与はどんどん下がります。

 

つまり、審議会は、給与が下がることが自己実現であると言っています。

 

審議会は、貧困な博士を量産することが、自己実現であると言っていますので、目標は達成されています。

 

その目標が妥当であるかという一点を除いては、問題は、発生していません。

 

これは、Artの問題です。

 

「持続可能な社会の創り手」は、「持続可能な建築」と同じようにオブジェクトです。

 

オブジェクトが理解できていれば、インスタンスが示せます。

 

「持続可能な建築」では、設計図ができません。建築を立てるには、構造、材料、サイズなどのインスタンスが必要です。建築を立てるには、予算の制約があります。

 

「持続可能な建築」とは、予算、建築する場所、竣工までの期間の制約のなかで、もっとも、持続可能な建築になります。

 

そう考えると、「持続可能な建築」では、目標になっていません。

 

CO2排出量の最も小さな建築のように、計算可能は「持続可能」性を定義しなければ、「持続可能な建築」は無意味な形而上学になってしまいます。

 

学校Aが、A方式で教育をして、学校BがB方式で、教育している場合、「持続可能な社会の創り手」という基準で、どちらが望ましいか判断できるとは思えません。

 

つまり、「5つの基本的な方針」は、最初から、実施したか、実施していないかが、判断できない形而上学になっています。

 

リアルワールドとはまったく関係のない教育方針が検討されていますので、これは、壮大な税金の無駄使いになっています。

 

 中央教育審議会の委員は、「5つの基本的な方針」のインスタンスを示せないと思います。

 

インスタンスがなければ、検証できませんので、科学の基準では、インスタンスを示せない人は、内容(仮説)を理解できていないと判断されます。

 

 中央教育審議会の委員は、「5つの基本的な方針」が理解できていないことになります。



引用文献

 

次期教育振興基本計画について 2023/03/08 中央教育審議会

https://www.mext.go.jp/content/20230308-mxt_soseisk02-000028073_1.pdf



“亡国円安”を止められない政府・日銀の迷走、政策目標は「実質賃金上昇」に正せ 2023/11/16 Newsweek 野口悠紀雄

https://diamond.jp/articles/-/332351



7)Bingと 「誰一人取り残さず、全ての人の可能性を引き出す共生社会」

 

中央教育審議会の「次期教育振興基本計画について」の「誰一人取り残さず、全ての人の可能性を引き出す共生社会」について、Bingに聞いてみました。

 

Bingは、何かを推論するというよりも、問題のテーマについては、世の中で、どのような検討がなされているかを調べてくれます。

 

7-1)誰一人取り残さず、全ての人の可能性を引き出す共生社会

 

 

Q:「誰一人取り残さず、全ての人の可能性を引き出す共生社会」とは、何ですか。

 

A:「誰一人取り残さず、全ての人の可能性を引き出す共生社会」とは、社会的に弱い立場にある人々も含め、すべての人が地域社会に参加し、共に生きていくという理念です。この理念は、教育進化のための改革ビジョン1や、持続可能な開発目標(SDGs)のための2030アジェンダに掲げられており、貧困を根絶し、差別や排除を終わらせ、人々を取り残す不平等や脆弱性を減らし、個人や人類全体の可能性を損なうものを減らすことに、すべての国連加盟国が明確にコミットしています。

 

この理念は、SDGsの中心的かつ変革的な約束であり、すべての人々が含まれることを約束するものです。この理念は、2030アジェンダ自体で少なくとも7回言及されており、国連加盟国、国連、市民社会によって、文書、約束、呼びかけ、介入、声明などで何度も言及されています。2030アジェンダのテキストでは、加盟国が「誰一人取り残さない」ということを「誓約」し、同時に、人間の尊厳が基本的であることを認識し、すべての目標とターゲットがすべての国、人々、社会に達成されるようにし、最も遠くにいる人々にも到達することを誓約しています。しかし、この原則に関する言及や使用頻度が高いにもかかわらず、取り残された人々を救うための集中的な取り組みは、政策設計、実施、レビューの観点から不十分であることが示されています。

 

この理念を実現するためには、政策立案、実施、レビューにおいて、取り残された人々に焦点を当てた取り組みが必要です。また、人々をエンパワーメントし、包摂と平等を確保することは、継続的で困難な課題であり、誰一人取り残さないという約束を実現するための具体的で集中的な行動を取る機会でもあります。

 

これから、「誰一人取り残さず、全ての人の可能性を引き出す共生社会」は、持続可能な開発目標(SDGs)のための2030アジェンダの引用であることがわかります。

 

「この原則に関する言及や使用頻度が高いにもかかわらず、取り残された人々を救うための集中的な取り組みは、政策設計、実施、レビューの観点から不十分であることが示されています」と、Bingは、実現可能性に問題があることを指摘しています。

 

また、Bingは、「実現するための具体的で集中的な行動」が課題であると言います。



Q:「誰一人取り残さず、全ての人の可能性を引き出す共生社会」はどうしたら実現できますか。

 

A:「誰一人取り残さず、全ての人の可能性を引き出す共生社会」を実現するためには、教育の改革が必要です。文部科学省は、「教育進化のための改革ビジョン」を公表しており、その中で、以下の4つの柱を掲げています。:

 

・「リアル」×「デジタル」の最適な組合せによる価値創造的な学びの推進

・これまでの学校では十分な教育や支援が行き届かない子供への教育機会の保障

・地域の絆を深め共生社会を実現するための学校・家庭・地域の連携強化

・教職員が安心して本務に集中できる環境整備

 

これらの柱を実現するためには、教育現場におけるデジタル技術の活用や、教育の多様化、地域との連携強化、教職員の労働環境の改善などが必要です。また、教育の改革だけでなく、社会全体の意識改革も必要です。社会全体が「誰一人取り残さず、全ての人の可能性を引き出す共生社会」を目指すことが大切です。

 

この問題については、文部科学省の公式見解以外は、ヒットしませんでした。

 

文部科学省の公式見解以外は、因果モデルではないので、科学的な推論ではありません。

 

「4つの柱」は、達成度が評価できない形而上学になっています。

 

「実現するための具体的で集中的な行動」は、具体的で、短期に達成度評価ができることを意味します。

 

つまり、持続可能な開発目標(SDGs)のための2030アジェンダは、形而上学なので、SDGsを「具体的で集中的な行動」に、落としこむことが必要です。

 

この段階で、SDGsは、形而上学ではなく、科学の方法に転換されます。

 

一方、「教育進化のための改革ビジョン」は、どこまでいっても、エビデンスで評価可能な「具体的で集中的な行動」にならずに、形而上学に終始しています。

 

これでは、埒(らち)があかないので、「具体的で集中的な行動」の例として、次に、教育目標の達成度評価を、Bingに聞いてみました。



7-2)教育目標の達成度評価

 

Q:アメリカの公教育の目標はなんですか。

 

アメリカの公教育の目標は、「民主主義を守る国民を作ること」です1。アメリカ建国直後から、「国民が無知なら民主主義は滅びる」と考え、国民を教育することが提案されました。最初の提案には成人も含まれていましたが、税金を使う公教育では、子供の教育が大きなテーマとなりました。教育の目的は、「為政者にだまされるな」「自分の意見を表明する」という2つのより具体的な目標となります。それらの目標は、活動を通してスキルとして身に付くようにトレーンニングされているのです1。

 

1: 現地情報誌ライトハウス

 

これは、出典の信頼度が気になりますが、驚くべき返答です。

 

Q:アメリカの教育目標の達成度評価について、教えてください。

 

A:アメリカの教育目標の達成度評価については、米国高等教育における学習成果の診断(Assessment)が行われています1。この診断では、学生の学習成果を測定し、その結果を継続的な改善に役立てることが目的とされています1。米国の高等教育機関は、学生の学習成果を測定するために、ルーブリック、ポートフォリオ、試験、アンケート調査などの手法を用いています1。

 

また、SDGs目標4番において、アメリカは165カ国中18位と高い順位になっています2。ただし、2023年7月現在、アメリカはまだ一度も国連に取り組み状況を報告していないため、SDGs全体の達成度ランキングにおいては最下位となっています2。

 

詳細情報:

 

  1. kobe-u.ac.jp
  2. sdgsmagazine.jp
  3. sdgs-connect.com
  4. repository.kulib.kyoto-u.ac.jp

+1 その他

 

 

Bingの結果からは、アメリカでは、学習成果の診断、学習成果を測定がなされていることがわかります。

 

SDGs目標のBingの回答(出典は、SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT 2023)には、問題があります。なぜならば、レポートは次のようにいっています。

 

今回のランキングで日本は、目標4「質の高い教育をみんなに」と目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の2項目が、最高ランクの「達成済み」とされており、それ以外の15項目は「課題が残る」「重要な課題がある」と評価されました。

 

目標4「質の高い教育をみんなに」と目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の2項目が、最高ランクの「達成済み」という評価はありえません。

 

SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT 2023は、どのエビデンスに基づいて、この結論を出しているかわかりませんが、日本では、学習成果の診断、学習成果を測定がなされていないことが無視されていると思われます。

 

引用文献

 

SDGs達成度ランキング】日本がトップ20から転落。アメリカが「本気度」最下位になった理由とは(SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT 2023)

https://sdgsmagazine.jp/2023/07/14/10405/

 

次に英国についても、聞いてみました。

 

 

Q:英国の教育目標と、その達成度評価について、教えてください。

 

A:イギリスの教育目標は、個人の能力伸張を目指しており、試験に比重を置いている点が特徴的です12。GCSE、SCE、Aレベルなどの試験の成績は、大学での学位と同様に、生涯有効な資格とされ、一般には履歴書にも記載することとなっています2。

 

教育目標の達成度評価については、学習・教育目標に対しての達成度を評価しています3。学生自身が授業アンケート結果と成績を点検シートに入力することで、学習・教育目標の達成度がレーダーチャートと散布図にグラフ化され、各学習・教育目標の達成度を定量化することができます4。

 

1: イギリスの教育 - Wikipedia 2: How Tall Is Mount Everest? For Nepal, It’s a Touchy Question. - The New York Times 3: 「学習・教育目標©」,「学習・教育目標 」,「達成度評価表」の見方 4: 学習・教育目標の自己点検と教育改善 - J-STAG

 

 

英国も、学習成果の診断、学習成果を測定を行なっています。

 

それでは、比較のために、日本について聞いてみます。

 

 

Q:日本の教育目標と、その達成度評価について、教えてください。

 

こんにちは。Bingです。日本の教育目標については、文部科学省が策定しています。2021年に改訂された「令和の日本型学校教育」によると、日本の教育目標は、子供たちが「知・徳・体の調和のとれた発達」を遂げることを目指しています1。この目標を達成するために、文部科学省は、個別最適な学びと協働的な学びの実現、急激に変化する時代の中で育むべき資質・能力、日本型学校教育の成り立ちと成果、直面する課題と新たな動き、令和の日本型学校教育の構築を目指して、様々な取り組みを行っています1。

 

教育目標の達成度評価については、学習・教育到達目標における達成度総合評価法が用いられています2。この方法では、学生の点検と教員の評価による達成度点検法を用いて、学習の成果を的確に捉え、教員が指導の改善を図るとともに、子供たち自身が自らの学びを振り返って次の学びに向かうことができるようにしています345。

 

1: 文部科学省 3: J-STAGE 4: 文部科学省 2: J-STAGE 5: 文部科学省

 

 

これから、日本では、学習成果の診断、学習成果を測定を行なわれていないことがわかります。

 

「教育進化のための改革ビジョン」では、「これらの柱を実現するためには、教育現場におけるデジタル技術の活用や、教育の多様化、地域との連携強化、教職員の労働環境の改善などが必要です」といいます。

 

しかし、これは、専門家会議の意見であって、エビデンスではありません。

 

エビデンスは、学習成果の診断、学習成果を測定を行なわないとわかりません。

 

現場で問題があるという声は、トラブルメーカーの発言にすぎない可能性があります。サンプリングバイアスの大きなデータから、結論をだすことは、科学的な誤りです。

 

また、更に、情報の発信源が、文部科学省に、集中しています。これは、日本では、サンプリングバイアスの大きなデータから得られた、文部科学省の間違った結論が、跋扈していることを意味します。

 

サンプリングのバイアスの例は、性被害に対する「#metoo」です。アメリカでは、「#metoo」が拡散した結果、過去何十年も表に出なかった、性被害の報告が相次ぎました。

 

集まってくるデータを受け身で処理すれば、サンプリングバイアスの塊になってしまいます。

 

7-3)公教育の問題点

 

次に公教育の問題点を聞いてみました。

 

Q:アメリカの公教育の問題点は何ですか。

 

A:アメリカの公教育には、いくつかの問題があります。その中でも最も深刻な問題は、教育格差です。アメリカは、地域によって教育の質が大きく異なります。富裕層が住む地域の学校は、質が高く、教育にかける予算も多いですが、貧困層が住む地域の学校は、質が低く、教育にかける予算も少ないです。また、アメリカの公立学校は、教員の質が低いという問題もあります。教員の給与が低く、教員の労働環境が悪いため、優秀な人材が教員になることが少なくなっています。さらに、アメリカの公立学校は、暴力事件が多発しているという問題もあります。123

 

1: なぜ?アメリカの教育格差の現状とその原因を解説 | SDGs特化メディア-持続可能な未来のために 2: Why America’s Schools Have A Money Problem 3: Violence in U.S. Public Schools: A Summary of Findings

 

比較のために、日本も聞いてみます。

 

 

Q:日本の公教育の問題点は何ですか。

 

A:日本の公教育には、いくつかの問題点があります。文部科学省のウェブサイト1によると、教育課程の検討に当たっては、グローバル化や社会の多様化等の状況の中で各学校段階の教育を通じて適切に具現化していくことが求められるとのことです。また、義務教育については、国民が質の高い教育を等しく受けることができるよう、憲法に定められた機会均等、水準確保、無償制という義務教育の根幹を堅持することが求められています。しかし、公教育に関しては、いじめ、引きこもり、詰込み教育、学力低下、家庭の貧困による教育格差など、多くの問題があるとされています234.

 

詳細情報:

 

  1. mext.go.jp
  2. eleminist.com
  3. sportsreport.seesaa.net
  4. cocoiro.me

 

日本の公教育の問題点は、形而上学に止まっています。

 

「具体的で集中的な行動」の例として、問題点が整理されていません。

 

つまり、この分野には、科学の方法が全く、導入されていないことがわかります。

 

7-4)教育の目標

 

繰り返しますが、1959年の「2つの文化と科学革命」以降の英国の教育の中心は、エンジア教育で、生産性をあげて、給与をあげることです。

 

教育に税金を投入しても、高いリターンが見込まれるのであれば、教育投資は、国を豊かにします。

 

株式会社に投資するよりも、教育投資の方が高いリターンが見込めるとう判断です。

 

高学歴ワーキングプア」は、教育投資に対するリターンがマイナスになっていることを意味します。

 

日本の就職は、ジョブ型雇用ではないので、給与が能力を反映していないバイアスがあります。この点を無視できると仮定すれば、「高学歴ワーキングプア」になる専門分野では、教育投資のリターンが異常に低いことになります。

 

各大学の学科毎の教育投資に対するリターンを計算して公開し、リターンの低い学科の定員は削減し、削減した定員をリターンの高い学科に回すべきです。

 

こうすれば、「高学歴ワーキングプア」は、なくなります。

 

リターンが見込まれない、あるいは、マイナスのリターンが見込まれる教育をすれば、国には、貧困問題が蔓延します。

 

Bingの回答の「イギリスの教育目標は、個人の能力伸張を目指しており、試験に比重を置いている点が特徴的です。GCSE、SCE、Aレベルなどの試験の成績は、大学での学位と同様に、生涯有効な資格とされ、一般には履歴書にも記載することとなっています」は、個人レベルでも、教育によって高いリターンが見込めることを意味しています。

試験による能力の計測方法には、問題があり、今後も改善を進める必要がありますが、試験結果というエビデンスに基づく教育が行なわれています。