設計思想の理解
パナソニックが、MFTのカメラとレンズに参入した時には、「レンズは電動(マニュアル操作でもモーターがレンズを駆動する)、非球面レンズとEDレンズの投入、デジタル補正」を前提としたレンズ設計(パナソニック・ガイドライン)でした。
2023年現在、ミラーレスが主流になって、現在のレンズ設計の大半は、このパナソニック・ガイドラインに従っています。
MFTの初期のパナソニックのパンケーキレンズは、20mmF1.7か、15mmF2.5でした。
これだけ、スペックの差があると、17㎜F2.8は、売れないと思われます。
実際に、17㎜F2.8は、製造中止になっています。
この差の原因は、オリンパスのレンズは、パナソニック・ガイドラインに従っておらず、色収差を自動補正しなかったためです。
つまり、高い、暗い、大きいレンズになったからです。
2014年頃から、オリンパスも、パナソニック・ガイドラインに沿ったカメラとレンズの設計をするようになります。PROレンズは、収差を補正しやすい設計になっていますが、補正前の物理特性はあまりよくないようです。
問題は、古いレンズのレビューが、パナソニック・ガイドラインに従っていないことです。
LUMIX G 14-140mm F4-5.8 O.I.Sの2011年のphotozoneレビュー記事には、次のように書かれています。
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周辺光量落ちは14mm開放では1.1EVと非常に顕著で実写でも目立つが、F5.6に絞れば状況は改善し、F8以上では問題はなくなる。しかし、未補正のRAWではかなり悪い結果で、特に140mmでは1.9EVの極めて大きな周辺光量落ちがあり、これは4/3用のテストチャートの標準スケールをさえ超えてしまうものだ。
倍率色収差は自動補正後が0.7ピクセル前後、未補正のRAWで1.4ピクセル前後で、ズーム全域で目に付く。倍率色収差はこのレンズの弱点で、自動補正されないオリンパスのカメラでは気になるかもしれない。しかし、最も良好な14mmでは色収差は少ない。
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ここでは、評価は、未補正のRAWで行われています。
実は、未補正のRAWの実態はよくわかりません。
NIKONの場合には、全てのRAWに平均化フィルターがかかっているという話もあります。
MFTの場合でも、画像センサーのデータと未補正のRAWの間に、処理が行われている可能性があります。
2011年には、パナソニック・ガイドラインが、通用していませんでした。
デジカメInfoの評価は次のようなもので、パナソニック・ガイドラインに近づいています。
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光学性能はあまり肯定的な評価ではないようですが、解像力は望遠端の開放以外は無難な値で、高倍率ズームとしては決して悪くはないという印象です。色収差や歪曲、周辺光量落ちも補正後の値で見れば問題はなさそうです。
このレンズは、リニアモーターによる静かなAFや連続的に動作する絞りなど、動画用の機能が充実しているレンズなので、スチルだけでなく動画の面からも評価してあげたいところですね。
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次のフィードバックのコメントが、当時の状況をよく説明しています。
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高い金額が出せるならLUMIXなんぞ使わずもっと色々選択肢が有るように思うのですが…
GX1のコメントの時にも思ったことですが、LUMIXに高望みをするのは違うのではないかと思います
あくまで手軽に、かつ本格的っぽい写真や動画が撮れるのがLUMIXの良さなわけで、値段がはってもいいからもっと高性能を みたいなのは他のメーカーに任せておけばいいと思います
個人的には今のLUMIX Gシリーズの出来には概ね満足しているので、変にカメラファンに媚びず、商売として永くやっていけるようバランスを大切にして続けていって欲しいですね
ちなみに14-140は従来のカメラのレンズの基準に当てはめて評価してしまってはかわいそうなレンズだと思います
動画で真価を発揮するレンズなので、その観点からであれば十分よく出来たレンズではないかと
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シグマはアートシリーズを初めたころには、パナソニック・ガイドラインを無視して、大きく、重く、高い、物理特性の良いレンズを作っていました。
しかし、最近のシグマは、パナソニック・ガイドラインに沿っています。
パナソニックは、F1.7通しのズームレンズを作っています。
手軽に、本格っぽい写真や動画が撮れるというコンセプトは希薄になったように思われます。
パナソニック以外のメーカーは、次第に、パナソニック・ガイドラインを取り入れていきました。その結果、新しいレンズは、小型で、安価で、性能が良くなっています。
パナソニックは、もともとパナソニック・ガイドラインでレンズを設計してきました。
その結果、改訂された新しいレンズは、サイズが小さくなりますが、性能が下がり、価格が上がっています。