未来を予測する唯一の方法

1)科学の方法

 

科学は、エビデンスに基づいて、仮説を検証します。

 

これは仮説は、結果が出た(実装された)あとで、始めて評価できることを意味します。

 

一方、人間は、占いを信じるように、未来のことを知りたがります。

 

株式投資をする場合、1年後の株価がわかれば、確実に利益をあげることが出来ます。

 

しかし、そのような魔法の方法はありません。

 

地球温暖化予測は、物理方程式を使ったコンピュータモデルで行われます。

 

これは、演繹法です。

 

論理学の教科書には、演繹法は間違えないと書かれています。

 

温暖化予測は、科学的に確かだという人もいます。

 

しかし、どこかおかしいです。

 

演繹法が間違えないのであれば、どのGCM(予測モデル)を使っても、同じ結果が得られるはずです。

 

しかし、実際には、モデルによって予測値に差があります。

 

株価は予測できないのに、地球の温暖化が予測できるという話は変です。

 

株価は、経済活動に連動しています。

 

経済活動によって、排出するCO2の量は異なります。

 

この部分は、GCMでは、シナリオと呼ばれています。

 

シナリオを科学と呼ぶのは納得できません。

 

アポロ宇宙船で、月に行った時には、宇宙船の軌道は正確に予測できました。

 

予測が大きくずれていたら、月を回ったあとの宇宙船は、地球に帰還できなかったでしょう。

 

しかし、アポロ宇宙船の軌道は、物理学の力学で、計算できる問題でした。

 

物理学が、圧倒的な成功をおさめた結果、物理学をモデルにして、学問を構築する試みが行われましたが、その結果は惨憺たるものでした。

 

結局、科学は将来については何もいえないのでしょうか。

 

2)科学的予測

 

日本経済の成長は止まっています。

 

加谷 珪一氏は、企業について言えば、原因はほぼ経営者の質であるといっています。

 

政府は、20年間、経済成長のための政策を行ってきましたが、成果はあがっていません。

 

政策の効果が100%出るのは、政策が実施されてからです。

 

そうして、実施されたあとで、効果がでなかったことがわかっても、タイムマシンがありませんので、過去に戻って、やり直すことはできません。

 

つまり、政策を実施する前に、政策の評価が出来なければ、経済成長という問題解決は出来ないことになります。

 

日銀は、金融緩和を10年つづけましたが、金融緩和の効果では、インフレにはなりませんでした。

 

日本の1人当たりGDPは伸びず、他の先進国の一人当たりGDPは伸びましたので、日本人の所得は、相対的に沈下しました。



退任した黒田氏は、自画自賛で、効果があったと言います。

 

タイムマシンがあって、10年前に戻ることが出来たら、もう一度、大規模金融緩和をするのでしょうか。その時、どのくらいの人が、その政策に賛成するのでしょうか。

 

タイムマシンはありませんので、代りに、政策を実施する前に、10年後の政策効果を予測する方法が必要になります。

 

この問題に対する第1の解決は、時間かせぎの弱形式の問題解決を拒否して、強形式の問題解決を希望することです。

 

第2の解決方法は、タイムマシンの代りになる将来予測法を使うことです。

 

占いのような確定的な将来予測は、例外を除いて、科学的にはできません。

 

宇宙船の軌道は、数少ない例外です。

 

しかし、確率計算は出来ます。

 

より正確に言えば、過去20年で、将来の確率計算が出来るようになりました。

 

確率計算計算をする理論、ソフトウェアツール、ビッグデータの3点セットが、過去20年で整備されました。

 

これは、世界を変える劇的な変化ですが、何故か、日本では、話題になりません。

 

高等教育のカリキュラムにも反映されていません。

 

これは確率計算ですから、絶対に正しい政策はありません。

 

政策Aと政策Bの確率を比較して、どちらが成功確率が高い(歩留まりが良いか)を判断します。

 

これは、科学で、複数の仮説(ブリーフ)を比較して、より良い仮説を残す手順とおなじです。



パースが、The fixation of belief で述べた問題そのものです。

 

政府の説明責任は、常に2つ以上の政策を比較して、より成功確率の高い政策を選択したと説明することです。



企業経営で言えば、新規事業案の比較をする手順になります。

 

護送船団方式は、新規事業案の比較選択をしませんので、必ず欧米よりパフォーマンスが劣ります。

 

つまり、日本経済の停滞の原因になります。

 

最後に、予言をしておきます。

 

現在の生成AIは、パターンマッチングが中心です。

 

計算ができません。

 

筆者は、生成AIに、「市町村別の一人当たり公園面積のデータに、市町村別の人口をかけて、市町村別の公園面積の計算を計算させよう」としましたが、上手くいきませんでした。

 

しかし、生成AIが計算機能を充実させてくることは、時間の問題だと考えまます。

 

確率計算は、若干高度ですが、計算機能の一部です。

 

近い将来、経営方針に対する企業幹部(官僚、政治家)のパフォーマンスが、生成AIを下回る可能性が高いと考えます。

 

現在でも、生成AIのアドバイスで、ビジネスをしたら成功したという人もいますが、そこには理論的な根拠はありません。

 

生成AIが、確率計算を人間より正確に迅速すれば、新規事業の選択については、人間に勝ち目はありません。

 

これは理論的に自明ですが、生成AIのパフォーマンスは、科学的に評価されていません。

 

引用文献

 

日本経済が低迷しているのは「経営者がぬるま湯につかっているから」という“身も蓋もない現実” 2023/03/01 現代ビジネス 加谷 珪一

https://gendai.media/articles/-/106829?imp=0




日本だけ給料が上がらない謎...「内部留保」でも「デフレ」でもない本当の元凶 2022/04/01 Newsweek 加谷 珪一

https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2022/04/post-180_3.php



日本「賃金停滞」の根深い原因をはっきり示す4つのグラフ 2022/03/25 Newsweek 加谷 珪一

https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2022/03/4-166_2.php