ESG投資とトヨタと水平分業

日本製鉄が、特許侵害で、トヨタ自動車を訴えました。米国のような訴訟社会では、裁判に訴えられることはよくあることです。日本でも、裁判に訴えられることは、問題ではないと思います。問題は、トヨタ自動車の対応です。

特許侵害で問題になっている部品は、中国の宝山製鉄の製造です。日本製鉄は、宝山製鉄の部品を使った自動車の販売差し止めを求めています。トヨタは、宝山製鉄の製品を採用するときに、特許侵害については、調査済みであること、特許の係争は、日本製鉄と宝山製鉄の間の問題であって、トヨタ自動車の問題ではないと主張しています。

しかし、これは、ESG投資で言えば、ウイグル生産の綿の生産者に人権問題があった場合に、問題は、中国政府と、ウイグル人生産者の間の問題であって、原材料を調達した中国企業に対して、人権問題がないことを確認しているので、材料を購入した日本企業の問題ではないと言っていることと同じです。

ウイグル綿については、世界的に不買運動が起こりました。

特許侵害で、不買運動は起こらないと思われますが、問題の構造は同じに見えます。

日本製鉄の特許侵害の申し立てが、正当か否かは、わかりませんが、この問題は、日本国内の垂直分業で、自動車を作る時代が終わったことを示しています。

E Vの場合には、すでに、スマホと同じような、ファブレスの企業も出てきています。

中国産の安価なEVのシェアは、今のところ小さいですが、急速に、伸びています。

インド市場は、今のところガソリン自動車ですが、シェアのスズキと現代自動車で、GMもフォードも撤退しています。今後、EVになっても安価な自動車が主流の市場になると思われます。

ホンダが、バイクを製造し始めた頃、日本には、バイクメーカーは100社以上あったようです。

現在の中国のE Vメーカーも同じように、多数の中小企業が凌ぎを削っています。

中国製のEVは、1日の走行距離が短い商用車や、軽自動車の市場で、シェアをねらっています。スズキ、ダイハツの軽自動車メーカーが、EVの製造で、競争力がなければ、軽自動車の市場で、安泰ではありません。

ホンダは、中国で、EVを売っていく戦略を明確にしています。

トヨタは、EVも、売るというスタンスです。EV専用の設計は2025年に出るレクサスが最初になるようです。

ここで、問題は、ハイブリッドか、E Vかではありません。

マスコミは、ハイブリッド、EVの短所と長所を比較していますが、その視点は、ポイントを外しています。

EVは、水平分業が可能です。安価に作るためには、水平分業が欠かせません。つまり、ハイブリッドとEVを並行して製造することは価格競争にとって不利になります。長続きはしません。

EVを作ることは、垂直分業、ケイレツを辞めることです。

日産が経営不振に陥った時にゴーン社長は、ケイレツを入れ替えて、コストカットをしています。

おそらく、EVにおけるコストカットは、水平分業なしにはできません。つまり、ケイレツがなくなります。この時には、DXが大きく進みますので、雇用される人の数は大幅に減少します。解雇が多数出るということは、終身雇用が崩壊することを意味します。

トヨタ労組が、今回の衆議院選挙に、候補者の擁立を中止したことは、終身雇用が崩壊が課題になっていることを示唆しています。

トヨタは、ハイブリッドには、強みがあります。しかし、

エンジン自動車 ーー 垂直分業 EV ーー 水平分業

という図式で整理すれば、ハイブリッドは、電池付きエンジン自動車になります。

この場合には、ハイブリッドを抱えることは、水平分業への移行を遅らせるのでリスクになります。

なお、水平分業でも、コアの部分は、内製化します。電池、SoC、OS等が課題になります。

 

まとめます。

ESG投資の課題は、水平分業が進めば、管理を必要とするポイントになります。

トヨタが、今後の水平分業をどのようにとらえているかに注目したいと思います。

ESG投資に限りませんが、攻めの経営と守りの経営では、前者が圧倒的有利です。これは、戦略の基本で、資源を集中化できないと効率が下がるためです。

この点では、ESG投資に対して、攻めの経営を行うことが合理的です。

 

  • 日鉄、トヨタなど提訴 モーター鋼板特許めぐり 2021/10/14 産経

https://news.yahoo.co.jp/articles/c251c46228e7fdf93e2912b5316fa61f9492251b

https://www.tokai-tv.com/tokainews/feature/article_20211015_12628

 

 

前の記事

衆議院選挙前に与野党の公約の目くらましを取り除く 2021/10/20

 

次の記事

ITベンダーの生き残りの可能性 2021/10/22