デジタル社会化インデックス~経験科学の終わり

(企業の将来性を評価するデジタル社会化インデックスを考えます)

 

1)基本的なアイデア

 

ここでは、デジタル社会への移行度を表わすインデックスを考えてみます。

 

この本では、経験科学とデータサイエンスを対比しています。

対比は、バイナリーバイアスをうみますが、人間には分かり易いです。

 

また、スコアリングすることで、バイナリーバイアスを弱めることができます。

 

ここでは、企業組織を工業組織型とデジタル社会型に2分してみます。

 

そして、どの組織も、この2つの要素を持っているが、次のように組織によってこの2つの要素の強さが違うと考えます。

 

工業組織型の組織強度=Id

デジタル社会型の組織強度=Dd

 

この定義から、デジタル社会化インデックス(DSoI)を次に定義します。

 

DSoI= Id / (Id+Dd)  x 100

 

IdとDdは次のような要素を考えて、スコアをつけます。



表1 デジタル社会化インデックスのスコア

 





表1は、拡張や改訂の余地が多くあります。

 

表1は、具体例をあげれば、イメージできると思います。

 

証券会社を例にとります。

 

欧米の証券会社は、金融工学を使って、独自商品を開発しています。

データサイエンスを活用したデジタル社会型企業です。

 

日本の証券会社は、銀行のもとに系列化されています。銀行は、財務省天下りを受け入れることによって、シェアを担保しています。

 

日本の証券会社は、工業社会型の企業で、所得移転によって経営しています。

これは、横並びの商品を販売して、手数料で稼ぐモデルです。

オリジナリティのある金融商品はありません。

 

工業社会型の組織が、デジタル社会型の組織に変わることには、「認知の壁」の章で述べたレジームシフトモデルが当てはまります。

 

つまり、証券会社のデジタル社会化インデックスを試算すれば、その分布は、低スコアグループと高スコアグループに2分され、中間値の会社は少ないと思われます。

 

これは、バイナリーバイアスではなく、レジームシフトのために起こる現象です。

 

組織が、工業社会型であると、組織運営の主な関心は、利益誘導になります。

 

2)標準デジタル社会化インデックス

 

世界中の証券会社をランダムサンプリングして、デジタル社会化インデックスを求めます。

 

この平均値は、毎年、上がっていくはずです。

 

デジタル社会化インデックス(DSoI)を平均値でわった値を標準デジタル社会化インデックス(SDSoI=略SDI)と呼ぶことにします。

 

SDoIを使えば、企業のデジタル社会へのDXの割合を評価できます。



3)応用

 

以上のインデックスは、レジームシフトモデルによっています。

 

化学は、原子モデルによって、化学反応を統一的に説明できるようになり、錬金術から脱却しました。

 

同様に、標準デジタル社会化インデックス(SDI)を使うと、SDIが低いことから、現状が簡単に説明できます。

 

(1)DXが進まない理由

(2)労働生産性が上がらない理由

(3)DX人材が流出する理由

(4)少子化問題が解決しない理由

(5)産業構造に手を付けず、所得移転政策だけが突出して行われる理由

 

SDIは、企業の将来性を示す指標ですから、SDIが試算され、公開されることで、株価に反映されれば、企業経営が変化すると考えます。

 

その結果、デジタル社会型企業へのレジームシフトが促進される。これが、日本が、経済停滞から抜け出す方法であると考えます。

 

SDIを正確に計算するには、手間がかかりますが、表1のモデルが成立していると仮定すれば、表1のどれか1つか2つの項目でも、だいたいのSDIは推測できます。

 

例えば、「CEOの年齢が高い」、「DX投資が少ない」場合には、SDIは低いと予想されますので、企業の将来性は悪くなります。

 

東京証券取引所東証)は、市場区分見直しをしていますが、是非、SDIのような有効な指標を作成して、公開して欲しいです。

 

財政負担を増やす所得移転政策よりも、情報公開の方が、よほど、日本経済の活性化につながると思います。

産業政策をせずに、闇雲(やみくも)に金融政策のみを続けることは、錬金術に似ています。金(新産業)はできません。