(情報の時間価値を考えると、データサイエンスの特徴が理解できます)
1)意思決定の2つの方法
これらの経営方針を考えるような意思決定の問題を考えます。
次の2つのアプローチが考えられます。
(1)帰納的方法
過去の経験または、データに基づいたヒストリアンの意思決定手法です。
(2)演繹的方法
今後の予測に基づいたビジョナリストの意思決定です。
今まで市場に内容な新しい製品やサービスを提供するベンチャー企業の場合には、「(2)演繹的方法」が主体になります。
過去の経験を微調整しながら、経営を進める場合は、「(1)帰納的方法」になります。
今まで、経営の正答率といっていた課題は、「(1)帰納的方法」に対応します。
「(2)演繹的方法」の経営問題の例をあげます。将来の問題解決に複数の方法があった場合、コストなどの評価指標を導入すれば、指標が最小になる方法が採用される可能性が高いと考えます。占いのように将来予測はできませんが、競合する企業が合理的な経営判断をすると考えれば、手筋は予測できます。
以下では、「(1)帰納的方法」を取り上げて考えます。
2)軌道の修正
過去の経験または、データに基づいた意思決定手法の例としてカーナナビを例に考えます。
カーナビの軌道修正は、カルマンフィルタ―に基づいていますが、カルマンフィルターは、ベイズ更新と解釈することもできます。
カーナビは一定時間間隔で、位置情報を衛星から取得しています。この位置情報の時系列データから、進むべき方向を導きだします。
基本ルールは次の2つです。
(1)最新のデータに重みをかける
(2)ズレの大きさに対応した軌道修正をかける
新しいデータが手に入った場合に、その情報と過去の情報をブレンドして、進むべき方向を導きだします。このブレンドの比率のとり方が数学で解くべき課題になります。
しかし、数学の理論が分らなくても、カーナビが何をしているか大まかに理解することはできます。
3)情報の時間価値のモデル
道を間違えた時に、重要な位置情報データは、最新のものです。
より古いデータは、重要ではありません。
図1に、経過時間と情報の価値のイメージを描いています。
カーナビでは、古いデータの価値は急速に下がりますので、紺色の線のように価値が変化します。
人文科学が専門の方は、古典は時代を経て生き残ってきたので、永遠の価値があると主張します。
その場合の価値モデルは、図1では緑色の線です。
一般に、情報科学の知識の半減期は、7年とも言われます。これは、図1で言えば、紺色の線で、横軸が7年たったところの高さが0.5になることに対応します。
AIの場合には、1年で半分になるとも言われています。
データサイエンスのように情報科学を扱っている人は、「時代を経て生き残ってきた知識には、永遠の価値がある」という知識モデルを採用していません。
年功型雇用は、言うまでもなく、緑色の知識モデルによっています。
つまり、年功型雇用の知識モデルとDXを進める紺色の線も知識モデルは相いれません。
紺色の線の知識モデルを採用すると、問題を解く答えは、最新のデータを中心に考えねばならないことになります。