問題解決とアークテクチャ
(アーキテクチャは、複雑な問題解決に必須の思考法です)
1)日野自動車
2022/08/23の日経新聞の第1面に、「日野自、全量の出荷停止」という記事が載っています。「エンジンの性能試験で不正があった」ことが理由で、社長は「過去と現在の経営陣にどのような責任があるか調べて厳正に対処する」といっています。
しかし、この記事を読んで、今後、日野自動車の不正がなくなると感じる人はいないと思います。
なぜなら、自動車会社の同様の不正は、過去20年繰り返されているからです。
つまり、エビデンスは、違法者を取りしまる方法では、再発を防げないことが明らかだからです。
2)予算の増額
2022/08/23の日経新聞の第2面に、厚生労働省が、学びなおし支援の予算を1100億円増額するという記事があります。
ちょっと前には、文部科学省が、理工系の学部定員増に補助を出すという話がありました。
この2つも、記事を読んで、確実に効果が期待できるとは思えません。上手くいけば効果があるかもしれないと感じる程度ではないでしょうか。
なぜなら、過去も似たような予算増がありましたが、記憶に残るほど劇的な効果があった事例が思い浮かばないからです。
3)対処療法と薬の量
病状があった場合に、原因を取り除かないで、病状を和らげる薬を処方する方法は、対処療法です。風邪をひいたら解熱剤を飲むような方法です。
風邪の場合には、薬を飲まなくても治りますが、薬を飲むと、痛みが和らいだり、治るまでの時間が短縮できたりします。しかし、風邪薬は、ウイルスに直接は作用しません。
法律違反があれば取りしまって罰する、不足している事項の予算を増やすのは対処療法に他なりません。
風邪薬も毎日飲み続けると1月も経たないうちに、中毒症状になり、風邪薬を飲まないと眠れなくなります。
日本経済を見ていると、効果の薄れた補助金を止められない中毒症状になっているように見えます。
問題を原因から変えるには、仕組みを変える必要があります。
複雑な問題の場合、問題の仕組みの変更は、アーキテクチャの変更になります。
4)アーキテクチャの変更例
具体的なイメージを実例で示します。
映画は、昔は、映画館で見るものでした。
その後、テレビ、特に、カラーテレビの普及によって、映画館から、茶の間に、観客が移動します。
現在は、ネットフリックスなどの動画配信が映画を見る最大のチャンネルです。
映画館、テレビ、動画配信は、異なるアーキテクチャです。
2022年時点では、上映本数は、動画配信が6割、テレビが3割、映画館が1割くらいではないでしょうか。
解決すべき課題は、「観客が映画をみる」ことですが、技術進歩によって、問題解決のアーキテクチャは、変化します。
書籍の例を考えます。
グーテンベルグ以前には書籍は、写本で、手で書き写していました。
グーテンベルクによって、印刷本が実現します。
初期の電子書籍は、文字と静止画だけでした。
現在の電子書籍には、動画や、音声へのリンクを張ることができます。
電子書籍に、動画や音声を含んだり、数学の計算をさせたりすることは、技術的には可能ですが、それを、電子書籍というフォーマットで、標準化すべきかについては、意見が分かれます。
2022年現在の主流は、クラウド上のWEBに展開するノートブック形式で、リンクを多用しています。この形式では、オフラインで読むことは困難です。
つまり、本は、写本、印刷本、電子書籍、WEBノートブックとアーキテクチャが変化しています。
DXを進めて問題を解決することは、新しいアーキテクチャに、次々と乗り換えていく過程に他なりません。
DXでは、新しいアーキテクチャを組み立て、活用できたグループだけが生き残ります。