昭和96年型企業と経団連企業のリスク~2030年のヒストリアンとビジョナリスト

(昭和96年型企業は、デジタルシフトに失敗するリスクが高く、令和型企業へのシフトが起こっています)

 

1)昭和96年型企業と令和型企業

 

2022/05/19のNewsweekに、藤野英人氏が、昭和96年型の企業と令和型企業の違いを述べています。

 

要約すれば、次になります。

 

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1ー1)昭和96年型企業

昭和96年型企業とは、令和の時代にありながら昭和の特色を引きずる企業のことです。

組織の意思決定が(転職経験のない)男性中心に行われています。

例えば日本経済団体連合会経団連)では、昨年ディー・エヌ・エーDeNA)創業者の南場智子氏が副会長に就任するまで、トップは全て転職経験のない男性でした。

 

1-2)令和型企業

令和型企業の特徴は以下です。

(1)お客様第一主義です。

(2)長期的な目線を持っています。

(3)科学やデータに基づいた考え方をしています。

 

2000年以降のおよそ10年間、インターネットの急速な普及により、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、起業したときの平均年齢は24歳)は、時代の変化を的確に見抜き、瞬く間に世界的企業となりました。これに影響され、アメリカではベンチャー企業を立ち上げたりベンチャー企業に就職したりする若者が増えました

 

ひと昔前なら、日本の未来を担う一流大学の学生は一流企業に就職するか官僚になるのがいわゆる「勝ち組」とされていました。だが、最近はベンチャー企業を立ち上げたり、外資系企業に就職したりする優秀な学生が増えています。

 

今は、日本の優秀な学生、とりわけ東大生が昭和96年企業に入ることをよしとしません。2000年代のアメリカと同じです。20年前に比べて、『どんなことがあっても挑戦し続ける人』の割合が高くなりました。実力があり人格も優れた若い起業家が増えています。2040年になったら社会はきっと激変します。

 

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言うまでもありませんが、株主に外資系の機関投資家が入れば、(転職経験のない)男性は、企業のトップにはなれません。つまり、「一流企業に就職するか官僚になる」のは、リスクに他なりません。官僚は、株主の指示を受ける訳ではありませんが、企業の株主に外資系の機関投資家が入れば、天下り先がなくなるので、やはり、リスクになります。

 

SGG’sもあり、これから、女性の管理職が増えていきます。その時に、「科学やデータに基づいた考え方」をしないヒストリアンの世界である「一流企業か官僚」にいることはリスクになります。ディストレーニングした人を相手にする企業にいてはいけません。

 

2)経団連企業のリスク

 

経団連の高等教育に関するアンケート結果をもう一度振り返ります。

 

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今回の調査で注目すべきは、前回調査2と比較して文系・理系ともに「課題設定・解決能力」がより高い順位となり、さらに理系では「創造力」も高い順位となったことである。IoTやビッグデータ人工知能などをはじめとする技術革新が急速に発展する中、指示待ちではなく、自らの問題意識に基づき課題を設定し、主体的に解を作り出す能力が求められていることが示された。

 

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この要求は、かなり身勝手にも見えます。

 

少し前まで、日本経済団体連合会経団連)のトップは全て転職経験のない男性だったということは、経団連参加の企業も、基本的に、トップは全て転職経験のない男性だと思われます。

 

トップが、技術革新が急速に発展する中、指示待ちではなく、自らの問題意識に基づき課題を設定し、主体的に解を作り出していれば、日本企業の業績が、米国や中国の企業にここまで、負け続けてこなかったと思われます。年功型の組織では、自らの問題意識に基づき課題を設定し、主体的に解を作り出すと周囲から浮き上がって、出世できなくなります。現在のトップは、企業内の親和を優先して、天下りを受け入れてきたのではないでしょうか。

 

外資のように、示待ちではなく、自らの問題意識に基づき課題を設定し、主体的に解を作り出す能力のある人に、高い給与を払い、年齢に関係なく高いポストを与えていれば、企業の中に、「課題設定・解決能力」のある人が大勢いる状態になっていたはずです。

 

昭和96年型の企業のトップは年寄りばかりで、トップに、若くて「課題設定・解決能力」のある人はいません。

 

新規採用の職員の給与を、新卒一括採用で、横並びにしておいて、「課題設定・解決能力」のある人がいないというのは、自業自得に見えます。

 

新卒一括採用をするということは、ジョブに対して、能力評価ができないことを意味しています。

 

昭和96年型の企業は、20年間デジタルシフトに失敗し続けています。ジョブ型雇用にも、業績評価にも失敗しています。注目すべきは、企業が、ジョブ型雇用や、業績評価を導入したか、否かではなく、ジョブ型雇用や、業績評価に成功したかどうかです。

 

そして、本書で、繰り返していますように、ヒストリアンの企業、つまり、昭和96年型の企業は、ジョブ型雇用や、業績評価に成功する可能性は低いです。つまり、今後も、デジタルシフトに失敗し続けると予想できます。

 

昭和96年型の企業は、デジタルシフトに失敗するリスクが高すぎますので、若い有能な人は、逃げ出します。若い有能な人が逃げ出せば、伸びない業績が悪化して、企業は傾きだします。こうなると、企業年金は絵にかいた餅です。ジョブ型雇用で、努力して、業績を上げて、企業に利益をもたらしたら、直ぐに、給与で、リターンを払ってもらい、老後に向けて、自分で、資産管理ができない年功型雇用の企業は、ハイリスクです。

 

デジタルシフトができなった企業は、企業の規模に関係なく、なくなります。

 

藤野英人氏は、GAFAが成功するまでに、20年かかったので、令和型企業が成果を上げる時期を2040年と想定しています。

 

筆者は、2030年過ぎには、結果がでると考えています。

 

その理由を以下にあげます。

 

(1)デジタルシフトの速度はGAFAがスタートした2000年頃より、加速しています。

 

(2)藤野英人氏が指摘するように、昭和96年型の企業から、有能な人材は逃げ出し始めています。この変化は、加速度的に進むはずです。

 

(3)藤野英人氏は、GAFAと同じように、令和型企業が20年かかって成果をあげると考えていますが、筆者はより、悲観的です。GAFAがスタートした時のように、白地のマーケットが多くある訳ではありません。後発組が成功をおさめるには、AIのように、今までなかった技術が生まれ、新しい白地のマーケットが生じた場合です。後発組が、既存のマーケットに勝負を挑んでも、勝算はあまり高くはありません。新しいマーケットを先にとるとすれば、スピードが勝負になると考えます。IT企業は、技術が実用化する前から、先行投資するのが普通です。

 

引用文献

 

日本の未来が「おいしい」理由は2000年代のアメリカを見れば分かる 2022/05/19 Newsweek 藤野英人

https://www.newsweekjapan.jp/fujino/2022/05/2000.php

 

高等教育に関するアンケート結果 2018年4月17日 一般社団法人 日本経済団体連合会

https://www.keidanren.or.jp/policy/2018/029.html